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第401話 一掃します




ソフィー筆頭侍女から書類を受け取り、私はそれを読んでいく。

ソフィー着任2日目。

侍女1人1人に精霊を付けているおかげで、出るわ出るわ侍女不適格貴族令嬢。

ラファエルの命令での筆頭侍女任命。

提案は私だけれど、最終的に許可したのはラファエルであり、従ってラファエルが命じたということになる。

その筆頭侍女に反抗することは、ラファエルに反抗していることと同じ事だと気付かないのかな?

猶予は3日。

今日で2日目だけれど、明日まで待つ必要はないな、と書類を見る。


「定番のサボりに、わざと備品壊しに、装飾品の盗難に、ああ…王女わたしの悪口に、騎士口説き」


報告書類には名前に不適格理由がセットで書かれている。

バレたくないなら最初は従おうよ。

反抗してどうするんだか。

そして業務中に騎士を口説くんじゃない。

遊びに来てるんじゃないんだから。

婚約者いないのか?

………私に言われたくないか。


「因みに口説かれてたのって、ナルサス?」

「はい」


即答するソフィーに、壁際に立っていた騎士が思わずといった感じで噴き出していた。

前にジェラルドがアマリリスの仕事を邪魔した侍女が、ナルサスに言い寄っていたって聞いてたから、そうかなって思ったけれど…

まだナルサスを諦めてなかったのか…


「………顔?」

「顔でしょうね」


まぁ、綺麗な顔をしたイケメンだとは認めるけれど。

あの裏社会の男達のボスの息子とは思えないほど。

よっぽど母親が綺麗だったのかしら?


「………口説くならラファエル以上の魅力持ってなきゃダメでしょ」


私の言葉に全員が首を傾げた。

………あれ?

知らなかったっけ?


「いや、ナルサスってラファエル愛してるから私殺そうとしたのよ? 同性愛かと疑ったりもしたくらいだし。それ程ラファエル愛してるんだから、ラファエル以上の魅力的な女にならなきゃ、ナルサス落とせないでしょ」


私が酷く真面目に言ってるのに、全員が汚物を見るような目に…

って、なんで私がそんな目向けられなきゃならないの!?


「………ちょっと何気持ち悪いこと言ってるのソフィア…」

「あ、ラファエル。お帰り」


………っていうか、ラファエルもノックしようよ。

いつの間にかラファエルが部屋の中にいて、ゲッソリしながら私の隣に腰を下ろした。


「………ただいま」

「お疲れ?」

「………今疲れたんだよ」

「え?」

「本気で分からない様子で首を傾げない」


だって、部屋に入っただけで疲れるなんて可笑しいでしょ。


「………ぁ、本気で分かってないんだ…」

「何?」

「俺が男に好かれて喜ぶとでも思ってるの…? 俺はソフィアからの愛だけが欲しいのに」


不意打ち止めてくれる!?

顔が赤くなるから!!


「ら、ラファエルはそうかもだけど、ナルサスはラファエルが好きだから」

「だからやめて」


本気で嫌そうな顔をするラファエル。

そんなに嫌悪しなくても…


「なんで? 好かれることはいいことでしょ? 男の友情っていいじゃない。………ぁぁでも、同性しか愛せないっていう人もいるからね。例え男同士で口づけてても、私は嫌悪しないよ?」


日本むこうでオタクだったから、そういう方面に理解はある。

偏見とか持ってないし。


「いや、気持ち悪いから!!」


そんなに必死で言わなくても…

………ぁ……


「だ、だからってラファエルとナルサスが、そういう関係になるのは嫌よ!?」

「当たり前だよ!! っていうかありえないから!! 俺はソフィアだけと口づけしたいし!」

「う、うん…」


な、なんか恥ずかしい言葉を言ってしまった…


「………ぁれ? なんでこんな話になったんだっけ?」

「………ナルサス殿が口説かれていたという話です」

「ああ、そうだった」


ソフィーに言われて改めて書類を見る。

………ま、初日からやらかしたんだしね。


「ソフィー。この者達をすぐに切りなさい。明日の朝までに荷物を纏めて実家に帰るようにと」

「はい」


ソフィーは普通に書類を受け取って頷いた。

そして早々に部屋を後にする。

残っている者達はポカンとした顔をしていて、ヒューバート、フィーア、アマリリスだけが慌てだす。

ラファエルは目を見開いただけ。

元サンチェス国組は私のことをよく知っているから、いつも通りだ。


「ひ、姫様!? いくらなんでも早急では!?」

「何が」

「まだソフィーが筆頭侍女になってから2日ですよ!?」

「ソフィーを任命したのはラファエルよ。この国の王家が命じた筆頭侍女に従わない者は必要ないから」


ゆっくりとお茶に口を付ける。

うん、アマリリスが腕を上げたね。


「ですが……」

「じゃあ何? 民の税で食べている者が、それ相応の働きをしなくていいの? 民の税で購入した備品をわざと壊していいとでも? 盗んでいいとでも? 王家の悪口を言ってサボっていいの? それで給金渡すわけ?」

「………そ、れは……それでしたら減給でも……いっ!?」


突然フィーアが首筋を押さえてその場に蹲った。

………ぁぁ、これは私に従わない違反となるんだ?

フィーアの首に埋め込んだチップが反応しているのだろう。

首は痛いよね。


「フィーア!?」


アルバートが慌ててフィーアに駆け寄る。

………ぉぉ…アルバートが婚約者こいびとっぽい。


「………さぁフィーア。貴女は命を落としてまで仕事をしない侍女を庇うのかしら? その価値が、彼女たちにある? 他の真面目に働いている侍女を侮辱する行為をしている彼女たちを、庇い続けることを望むの?」


フィーアの異変にその場を動かず眺めるだけの私。

ハッと気付いたフィーアが私に怯えたような顔を向けてくる。

自分の命が危ないことに対してなのか、私の冷酷さに対してなのかは分からない。


「いいよ。自分で選んでくれて。私の言葉に従うか、あらがって死を選ぶか。私はこの件に関して、自分の考えが間違ってるとは思わないわよ。真面目に働く精霊じじょ達の方が良いからね。精霊かのじょ達は問題侍女達よりも明らかに何倍も働いてくれるからね」

「っ………申し訳、ございませんでした……」


フィーアが言った途端に痛みが消えたのか、ホッとしてアルバートに寄りかかった。

初めてチップの力を見たけれど、思っていたより凄かった。


「フィーア」


私が呼ぶと、ゆるゆると顔を上げる。

痛みは半端ではなかったのか、今にも意識を失いそうだ。


「慈悲をかけてなかったことにする、減刑するということは、その者の罪を自分も背負って生きていくと同義なのよ。今ソフィーに切りに行かせた侍女17名分。貴女は背負えるのかしら?」


フィーアは目を見開き、その後目を伏せふるふると弱々しく首を横に振った。


「アルバート」


私の呼ぶ声にアルバートは頷き、フィーアを抱き上げて出て行った。


「ソフィア。夕食まで休もうか」


ラファエルが優しく声をかけてくれ、頷く私をそっと抱き上げて寝室へと向かった。

………何も言わないって事は、ラファエルは私の意見に賛同してくれたと思おう。

………フィーアに嫌われてないかな…

偉そうに言って自分の侍女の評価に不安になるなんて、滑稽だ。

自分に失笑し、ラファエルに運ばれている途中で、私は意識を手放してしまった。


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