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第399話 嬉しいこと




「ソフィア」

「ん?」


約束通りに夕食もラファエルと一緒に取れ、ホクホクしながら裁縫道具を手にしようとした時に呼ばれてラファエルを見た。

サラリと髪に触れられたと思ったら、ふわりといい匂いがした。


「………ぇ?」

「うん。よく似合う」


ラファエルが満足そうな顔をしている。

………何かを付けられた?

首を傾げると、何も言われてないのにフィーアがスッと鏡を持ってきた。

素直に覗き込むと、そこには色とりどりの花の形をした飾りが付いていて――


「こ、れ……アザレアと桜…」


パッとラファエルを見上げると、とろけそうな笑みを浮かべている彼が……

………ぁ、死んだ…

カァッと一気に体温が上がった気がする。


「耳まで真っ赤だねソフィア」


い、今触らないでぇ!!

頬に触れられ、ますます体温上がるから!!

あ、アザレアの髪飾りなんてっ!!

し、しかも私がみんなに作ったしるしみたいに宝石が花の中心に付けられている。

アザレアにはルビー、桜にはアメジスト。

これって……


「ちゃんと俺を想い出してくれなきゃ、泣くよ」

「な、泣くんだ…」

「うん」


綺麗な顔で微笑むラファエルに、ドキドキしすぎてどうしていいか分からなくなった。

取りあえずぎゅむっとラファエルに抱きつく。


「これでソフィアも“お揃い”だね」

「っ……う、うん…」

「なんでソフィアの従者だけ、ソフィアから貰ったお揃い持ってるのかって思ってたし」


………そ、そっちにも嫉妬してたんだ。

ビックリするけど、私も嬉しかったから自然と口角が上がった。


「サンチェス国で買った髪飾りが無駄にならなくて良かったよ」

「………え?」

「渡すの遅くなってごめんね。あの店で髪飾り買ってたんだけど、ソフィアが宝石を付けて俺にくれたから、俺も同じ物を持ちたいと思って加工してて」

「え!? ラファエルがコレ作ってくれたの!?」

「当然でしょ? ソフィアが付ける物は俺が作った物がいいと思ってたからね。あのままでも良かったけれど、どうせならアザレアもだけど、ソフィアの1番好きな花も付けたかったから。彼らのしるしを借りることは出来ないから、少しずつ観察して形作ってたから予想以上に時間がかかってね」


抱きついたまま見上げると、ラファエルは何故か嬉しそうに笑っていた。


「聞いてくれれば良かったのに…っていうか、みんなも言えば貸してくれたと思うし……」

「それはダメだよ。あれはソフィアの従者の証。貸し借りするものじゃない」

「………そうだけど……あ、じゃああの技術者の人に聞けば設計図が…」

「ソフィア」


急に表情をなくして私を見るラファエルに、思わず口を噤んでしまう。


「………俺はソフィアに贈る物を、他人から貰う事は出来ないよ」

「え……」

「そんな事すれば、俺はソフィアに2度と贈れなくなる」


どういう意味か分からなかった。

贈る物を他人から貰う…?

首を傾げそうになり、ハッとする。

つまりラファエルは1から10まで、自分だけで選んで、作らないといけない、って思ってるって事…?

そんな事にこだわらなくても、私はラファエルから贈られた物なら何でも嬉しいのに…


「意地っ張りって思ってる?」

「ラファエル?」

「俺のソフィアなんだから、俺が1番ソフィアの事を知っておきたいし、ソフィアが喜ぶことをしたいし、ソフィアに物を与えるのも俺だけがいい」


えっと……?


「………つまり…ラファエルが知らない事を、他の人が知ってるのが許せない……って意味……?」


私の従者にも技術者にも頼らなかった理由は、他人から私の事を聞かされるのが嫌だった。

………そういう解釈でいいのかな?


「………嫌?」

「へ?」

「独占欲強いし、嫉妬深いし、ソフィアの心の中をもっと俺でいっぱいにしたいって、どうしたらいいかってずっと考えてる」

「ラファエル…」


不安そうな顔をしているラファエル。

………どうして“そう”なるのだろうか。

私、ちゃんと言ってるはずなのに…

まだ足りないのかな…

私は顔をラファエルの胸元に埋める。

そしてグリグリと額を擦りつける。


「………この髪飾りからいい匂いがする」

「え、ぁぁ、温泉で花湯とかいい匂いじゃない? だから試しに匂いだけ抽出できないかって思って。せっかくの花の飾りだから」

「うん。すっごく気に入った」

「ホント?」

「ホントだよ。ラファエルはいつも私を喜ばせてくれる」


だから、不安になる必要ないんだよ。


「ねぇラファエル」

「何?」


私はそっと顔を上げて、ラファエルの背に回していた手をラファエルの頬に当てる。

不安に揺れる瞳が、私も不安にさせる。

だから私は半目になってラファエルを睨みつけた。

それにたじろぐラファエル。


「無駄な心配してないで、さっさといつものラファエルに戻ってくれない?」

「無駄!?」


ガンッとショックを受けた顔をするラファエルに、内心笑ってしまう。

というか、今から恥ずかしい言葉を言っちゃうから、思わず茶化して自分の心を落ち着かせるのに、ラファエルを利用してごめん。

1度深呼吸して、改めてラファエルを見る。


「そう、無駄なの! 私はこんなにラファエルが好きだって言ってるのに! ラファエルはその言葉だけ受け入れてたらいいの! 自惚れてたらいいの!」


私の言葉を聞いて、今度はポカンとするラファエルが可愛くて仕方がない。

ドキドキと早まった心臓が痛いけれど、ラファエルにちゃんと言うって決めてるもの。

これぐらい…!!

………って、かなり勇気がいるんだけどね!

恥ずかしいし!!

で、でも頑張る!!

顔は相変わらず真っ赤だろうけれど、私は余裕に見えるように微笑む。


「私は言ったよ? ラファエルの束縛が好きだって。ラファエルに愛されているって分かるから」

「ソフィア……」


言った!!

言えたよ!!

スムーズにラファエルに伝えられたよ!!

ちょっと成長したと誰かに褒めて欲しい!!

へへっと笑うとラファエルも微笑み、口づけられる。


「ソフィアは俺の理性を崩す気かな?」

「………へ?」


………なんか……ラファエルの瞳が……ギラギラと……?


「寝室行こうか」


ニッコリ笑って姫抱きされた……って……え……?


「ちょ、ラファエル!? まだ寝るには早――」

「だって絶対ソフィア腰砕けになるから」


何をなさる気ですか!?


「大丈夫だよ。口づけだけだから」


腰砕けになるまで口づけされるって事ですか!?

そんな宣言いらないんですけれども!?

助けを求めて従者を見るも、全員が視線を反らし目が合わない!!

薄情者!! っと叫ぶ前に私はラファエルに寝室に連れ込まれたのだった。

もう少しラファエルに言う言葉を工夫しないといけないと、私はこの時に学んだのだった。


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