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第391話 信頼は皆無でした




フィーアに頼んで、ここランドルフ国王宮の筆頭侍女に来てもらえるように手配した。

予定を変更しなくていいから、時間が空いたときで大丈夫、と伝えたはずなのだが…

目の前で頭を下げ続ける女性。

フィーアに呼びに行ってもらってから、30分経っていない。

………何故こんなに早く…

持ち場の仕事もあっただろうに…

その人は、あの侍女を叱りつけた先輩侍女だった。

………彼女が筆頭侍女…?

見た目まだ20代なんですけれど…


「お呼びとお聞きしまして。何かご用がお有りでしたでしょうか?」


考え込んでいたら、非礼と分かっていても声をかけてくる彼女。


「あ、ごめんなさいね。今まで自分のことで精一杯で…そろそろ王宮の侍女とも交流をと思いまして」

「ソフィア様は専属侍女がおられますので、我々のような下々の侍女をお気になさらず、ご自由にお過ごし下さいませ」


………うん。

これ、私の信用がないな。

自業自得だけれど。

………カーラ、だっけ…彼女の行動は王族に対するものじゃないから、注意しただけってことね。

王宮内もちゃんと見回らなきゃ…


「今まで貴女が管理してくれていたのでしょう? わたくしも全て把握しておかないといけませんから、報告を頂きたいのですが」

「ご質問よろしいでしょうか?」

「どうぞ」

「報告をお求めでしたら、そちらのフィーア様とアマリリス様に頼めばよろしいのではないでしょうか? わたくし達より遙かに優秀だとお聞きしております」


………誰からだよ。


「フィーアとアマリリス、そしてここに居ないソフィーはわたくしの世話をしてくれていますから。こちらの侍女との交流が出来ておりません。それはわたくしのせいですけれども…この度、あのカーラに詰め寄られた時に、こちらの王宮の侍女の把握が出来ていないとようやく思い至りまして、それは申し訳なく思っています。今後はそのようなことがないようにしたいのです」

「………畏まりました。では、毎朝晩ご報告書をお持ち致します」

「ありがとう。至らないところがあれば、遠慮無く仰ってくれればいいわ」

「いえ…ソフィア様にそのような…」

「ありのままの言を頂きたいの。繕いは結構です」


………繕ってるの、自然と分かっちゃうしね…


「サンチェス国の侍女は遠慮無く進言してくれていましたわ。良いことは良い、悪いことは却下します」

「………」

「今王宮内で起こっていることを上げてもらえないと、わたくしではなくラファエル様がお困りになりますから」


ギロッと筆頭侍女の視線が向けられた気がした。

あ、殺気だこれ。

素人は分かりやすい。


「………今更何を言っているのか、といった顔ですね」

「!? そ、そのようなことは…」

「いいえ。今まで苦労させたのだろうということは分かりますから。これからは精進しますわ」

「………」


無表情に戻ったけれど、目は口より鮮明に伝えてくれるよ。

あれ、驚いているわね。

今まで無関心だった王女が何を言っている、って感じは分かるよ。

で、その王女がなんか殊勝な事言ってる、みたいな?


「貴女のお名前、教えてくれるかしら?」

「………わたくしは、ランと申します」

「家名は?」

「ランドルフ国王宮侍女は、貴族階級関係なく接するために、家名は伏せておりますのでご容赦下さい」

「まぁ、そうだったのね。勉強不足でごめんなさい」

「いえ…」


視線を彷徨わせ、どうしていいか分からないようだった。

………彼女はまだ若いし…経験が少ないのかも。

侍女も旧国派で粛清されて、ベテランがいなくなっているとも考えられる。


「今日の夜からさっそく報告を上げてもらえるかしら?」


戸惑っている彼女をこれ以上いさせても、逆効果だろう。


「畏まりました」


明らかにホッとした顔をして、出て行った。

………これは長くかかりそうだ………

私はそっと息を吐いたのだった。


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