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第382話 ある意味最良です⑨




すぅっと息を吸い込む。


「………ぁ~~…」


小声で声を出してみる。


「………ぁ、で、た…」


毒を飲んでしまってから7日目。

起き上がっていられる時間が増え、そろそろ声が出るかなと寝室で1人、声を出してみた。

だいぶ喋ってなかったから、声がガラガラでとても聞かせられないけれど、取りあえずホッとする。

医者が言っていたことは本当だった。

毒が抜けていくと同時に声が出るようになる、と。

逆に考えると、声が出れば毒が抜けきった1つの証明になるということ。

もう数日で声は戻るだろう。

良かったぁ……

これ以上寝て過ごすのも退屈だったし、私のせいで忙しくなってしまったラファエルの手伝いもしたいし。

とりあえずベッドから降りてみよう。

そっと足を出して立つ。


「………ぁ……」


そして、どべしゃ、と転んだ。

………よ、よかった……誰もいなくて…

カァッと真っ赤になりながら、ゆっくりと四つん這いになる。

暫く歩いてなかった人間が、急に歩けるわけないよね…

自分に苦笑していると、ガチャリと扉が開いた。


「………」

「………」


入ってこようとした人物と目が合った。

私の寝室にノックなしで入ってこられるのは1人しかいないのだが…

私を見た瞬間に時間が止まってしまったようだ。

ち、沈黙が痛い……


「………ソフィア…」


次の瞬間ニッコリと微笑まれた。

だから怖いですラファエルさん!!

最近こんな笑顔ばっかり向けられている気がする!!


「なんで大人しくしてないのかな?」


だ、だって、そろそろ動かないと、深窓の令嬢以上に体力が無くなるもの!

ちょっとでも回復させないと、日課もいつ出来るようになるかわからないよ!


「それは毒が完全に抜けきってから、声が出るようになってから、ね」


………それじゃあいつ復帰できるか分からないじゃない!!

学園内でも問題なく動けなきゃ行けないし!

ラファエルの政務の手伝いさえ出来ないし!

なにより、デートも出来ないよ!


「………それは嫌だな」


でしょ!?

ちょっとはリハビリしなきゃ!


「でも大人しくしておいて」


何故!?

だってこのままじゃラファエルと行動も出来ないし!!

一緒にいられる時間が減ってるのに!!


「ソフィアの気持ちは嬉しいよ。でも、今回の件で粛清した家の跡取り達が、ソフィアを逆恨みする可能性が充分にある。学園が落ち着くまでには時間がかかるから、焦らなくていいよ」


それはそうだけれど…

このまま私が倒れたせいで起こったことを、私が解決せずに傍観していていいのだろうか…


「俺に任せて。それにサンチェス国王とレオポルド殿に、これ以上ソフィアをランドルフ国の問題で傷つけるなと言われている」


え……

お父様とお兄様から…?


「………それを破ると、ソフィアがもう2度とここに――俺の傍にいられなくなる」


ビクッと身体が震える。

………つまり、私がこの問題でこれ以上なにかあれば、強制送還になるということ……?

そんな……

それじゃあ私はラファエルにも、ランドルフ国民のためにも、動けない…

私が勝手に動いたら…迷惑がかかってしまう…

でも、仕方がない…

私はお父様に対し、ラファエルの采配を待ってほしい、と我儘を言ったのだから…

王族を攻撃したのだから、本来ならお父様が処分に意見出来た。

共通規約では『他国の民が犯した罪があった場合、速やかにその者の母国に通報し、処分は母国の王族が下すこと。ただし、国の王族が他国の王族に対して罪を犯した場合は、被害王族の国の王族が処分を下すこと』なんだけれど、民が他国王族に対して犯した罪に関して、他国王族の王が処分に対して要求することは当然の権利として与えられる。

他国王が直接処分することは出来ないのだけれど。

それを止めたのだから、軽い処分など以ての外。

………逆にハードルを上げてしまったかもしれない…


「分かってくれて、嬉しいよ」


ラファエルが私を抱き上げ、ベッドに戻してくれる。

頭を撫でられ悔しさを押し殺して、ゆっくりと目を閉じた。


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