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第373話 お呼びじゃないそうですよ




翌日、ラファエルと共に学園へ向かった。

ローズは私達とは別便。

フィーアと共に登校するそうだ。

昨日もそうだったけどね。


「で、コレなんだけど」


ラファエルが私に書類を見せてくる。

温泉街の意見書だ。

経営責任者達の。

温泉街全ての店と宿の意見書だから相当枚数になる。

あれからラファエルが温泉街の人達と打ち合わせしたとき、預かったそうで。

ラファエルが帰ってきたのは夜も更けたときで、朝もバタバタしてるから結局学園に持ってくることになった。

別に王宮に帰ったときでも良かったのだけれど、早めに対処すればするほど、温泉街の成長が早くなる。

私はラファエルから意見書を受け取り、見ながら教室へと向かう。

いつもながら私達が一番乗りで、席に座って本腰入れて意見書を見ていく。


「………」


私が読んでいる間、ラファエルは静かに待っているのだけれど…

ジッと横で私を見られていると、気が散るのですが…


「あ、あの……ラファエル様……」

「誰もいないよ」

「う……あの、ラファエル……恥ずかしいから見ないで欲しいんだけど…」

「どうして? 俺のソフィアを見るのに不都合ないよね」


………通常通りのラファエルはなによりなのですが……集中させて欲しい!!

顔が赤くなるのを感じながら、出来るだけ書類に集中した。


「おはようございますラファエル様」


暫く経ってザワついてきた教室で、ふとラファエルに話しかける人がいた。

私は書類を見るフリをしつつ、チラリと見てみた。

………げっ!!

………こほん……失礼しました。

思わず嫌な顔をしてしまいそうになり、慌てて視線を戻した。

………昨日の今日でラファエルに接触してくるかカイヨウ国王女…


「おはよう。誰かな?」

「え……」


ニッコリと笑ってラファエルに聞かれたユーリア・カイヨウは、固まった。

喜んじゃいけないんだろうけれど、心の中でニンマリとしてしまう。


「あ、ごめんね? 私、直接自己紹介してきた人しか覚えられないから」


………いや、王太子としての答えではないよラファエル…

学園の生徒や教師は全員覚えているだろうし…

筆跡も覚えているほどなのだから…

昨日ルイスに聞いて、ユーリア・カイヨウの姿絵とか見たんじゃないの…?

それによくよく考えたら、ラファエルの立場で他国王女を知らないのは、まずいと思う…


「わたくしは、ユーリア・カイヨウと申しますわ。カイヨウ国の第5王女です。わたくし、ラファエル様とクラスが一緒になって嬉しいですわ。是非お近づきになりたいのですけれど」


固まっていたユーリア・カイヨウが自己紹介をする。

………ぁぁ、ダメね。


「私、君に自己紹介以外をしろとは言ってないんだけどね」

「ぁ……」


確かに私と彼女は王女で、対等に話が出来るが、ラファエルは王太子であり、王子とはまた違う1つ上の階級になる為、親しく話しかけることは不敬に当たる。

しかもユーリア・カイヨウの言葉は直球過ぎる。

さり気なく親密になるのではなく、親密になりたいと口に出してどうするのだ。


「カイヨウ国の王女ね。覚えておくよ」


それだけ言い、ラファエルは笑顔を作ったまま私の方を向いた気配がする。


「ソフィア、把握できた?」

「取りあえず一通り目を通しましたが、少し問題もありますね」

「どういうの?」


ラファエルが椅子ごと近づいてくる。


「こちらです」

「ああ、限定品の個数増量か…」

「はい。限定品は希少価値が高い故に制限されるのです。それを量産すれば価値がなくなりますから」

「利益が取れているからと言って、そっちに回すのは得策ではないよね」

「はい。新しく作りたいならば、別の味を開発するとか、新しい商品の開発費に回すべきです。ですがその商品が当たるかどうかの査定はこちらにいただけるといいのですが…」


ラファエルの方に顔を向けると、ポカンとしたユーリア・カイヨウが視界に入ってくる。

………王女としての顔ではないね…

っていうか、何を話しているんだ、って理解できない顔だから、ラファエルの――ランドルフ国の役には立てないよ…


「それは勿論。彼らの店の商品は全てソフィアのアイデアだからこそ売れているのだから」

「わたくしはアイデアを出しただけですわ。民はわたくしの作った物ではなく、純粋にいい物を気に入り買って下さっているのです」

「だから、ソフィアはもっと自信を持って。私の愛した女性は凄く綺麗で優秀なのだから」


ラファエルが彼女を無視して話していると、段々とユーリア・カイヨウの顔が赤くなっていく。

屈辱でだろう。

不機嫌な顔をして、ユーリア・カイヨウは立ち去っていく。

私は不意打ちのラファエルの言葉に、彼女とは違った意味で顔が赤くなってしまう。


「………香水くさ…」


ラファエルがボソッと呟き、私は苦笑するしかなかった。


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