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第371話 怒られました




アマリリスと寝室で騒いでいたら(主に私だけ)、いつの間にか寝室に入室していたラファエルに抱き上げられ、私は部屋のソファーへと移動させられた。

ちょこんと座らされ、笑顔のラファエルは向かい側に腰を下ろした。

………あれ?

笑顔なのに怖いのは何でだろう。


「ソフィア」

「え? あ、なに?」

「俺がモテ期に入るだとか、誰かに言い寄られるとか、敵わないとか、一体何の話?」


ニッコリ笑ったまま、ラファエルは両手を組んだ手の甲に顎を乗せ、私を見てくる。

………ぁ、格好いい……

………じゃなくて…

これ…尋問されてる…?

ラファエルは私が転生者だって知ってるけど、さっきのは言っちゃっていいものなの…?

そっとアマリリスを見る。

アマリリスも困った顔をして私を見返した。

だよね…

マズいかもと思って、私と寝室で2人きりで話してたんだものね…

私が大声を上げちゃったせいで、みんな入って来ちゃったけど…

………よし。

当たり障りのないことで誤魔化しちゃえ。


「ラファエルが悪いんだもん!」

「は? 俺?」

「なんでユーリア・カイヨウが編入してきたこと隠してたの!?」

「………ユーリア・カイヨウ?」


ラファエルがキョトンと首を傾げる。

ああもう可愛いなぁ!!

でも騙されませんからね!!


「彼女は試験2位だし! 王女だし! ラファエルとつり合う地位も頭もあるって証明させちゃって! 私知らなかったから態度が悪くなっちゃったし、ユーリア・カイヨウに言い寄られて、カイヨウ国王に強制的に婚約解消させられて、ユーリア・カイヨウにラファエル取られちゃうかもだし!!」


口に出したら余計悔しさが増した。

思わずその場で頭を抱え、ゴンッと目の前の机に額をぶつけてしまう。


「………落ち着こうかソフィア」

「そうなったら私はどうすればいいの!? 私は帰る場所はココって決めちゃってるのに! なのに出戻り……出戻り!? 私サンチェス国に返される!? 出戻り王女って言われるぐらいならまだお転婆王女で生涯通した方が断然マシよ!!」


ガンッと机に拳をぶつけ、ふるふると震える身体を何とか落ち着かせようとするけれど、落ち着かない。

グリグリと額を机に擦り付ける。


「………ちょっと黙ろうかソフィア」

「こうなったらラファエル取られないように次の試験で挽回するしかないけど、次の試験っていつよ!? ってかそもそもラファエルが1位取っちゃうから! 57位になってくれてたら上下で、お似合いカップルなんて言われてたかも知れないのに!」

「………口を塞がれたい?」

「ぁぁ、ダメよね! ラファエルはこの国トップだもの! 学園ぐらいの試験出来て当たり前だし! だったらやっぱり私が努力しなきゃだし! でも、頭の出来が悪い私が2位……どうすれば……」


ハッと私は気づき、ガバッと顔を上げた。


「そうだ!! 今から図書室行って寝る間も惜しんで勉強して、次の試験までは蔑み我慢するとしても、あのユーリア・カイヨウをぎゃふんと言わせ――むぐっ」


突如私は口を塞がれた。

大きなラファエルの手の平によって。


「………ちょっと黙ろうか、って言ったんだけど、聞いてるソフィア?」


………すみません、聞こえてませんでした。

ラファエルの無感情な顔を見て、私は本気でラファエルが怒っていることを知った。

第一、こんな言葉の遮り方、ラファエルっぽくない。


「なんで周りのつり合わないなんて言葉真に受けてるの。関係ないよね。俺がソフィア以外認めるはずないんだから。散々言ってると思うんだけど?」


………は、はい……すみませんでした……


「なんでソフィアが出戻りになる話になってるの。今度こそ首輪いるっていうこと? すぐに準備できるけど?」


すみませんごめんなさい繋がないで下さい。

無いことを想像した私が全面的に悪いです。


「俺が取られるって何。俺の愛をまだ疑ってるのソフィア?」


疑っていません!

相手がラファエルに触れるのが嫌なんです!

ラファエルに触れていいのは私だけ――って、私は何考えてるの!?


「ソフィアが徹夜で勉強? 許すはずないでしょ。ソフィアの夜の仕事はちゃんとここにいて、疲れた俺を癒すために共に寝ることでしょ」


………え…

すみません、それ初めて聞きましたが…

ってかそれは仕事なの!?

そっとラファエルの手が離れていく。


「………全部ひっくるめて俺に言うことは?」

「すみませんでした。暴走しました。ラファエルを少しも疑ってません」

「ホントに?」

「ホントです。悲劇王女の想像に振り回されました。全部私の妄想です。ごめんなさい」


素直に認めると、ラファエルが苦笑した。


「ソフィアは試験上手くいかなくても、学園内の事でしょ。ランドルフ国にとって必要不可欠な女の子なんだから、1度試験で失敗しただけでなんでそこまで考えちゃうかなぁ…」

「だって、ラファエルの隣にいても違和感ないぐらいになりたいんだもの」

「改国で民に評判いいじゃない。狭い学園の生徒達の蔑みに屈して欲しくないけど? 大半が僻みで俺に気に入られているソフィアの粗を探しているだけなんだから」


………ぁ、ラファエルが辛辣…


「私は学園でも認められたいの。改国のアイデア出してても、試験ではランドルフ国の事を理解していない、って目に見える結果だもの。悔しいよ」

「あまり考え込まなくていいよ。次はいい結果が出るよ。あの解答、説明しただけで分かってたんだから」


あの時の事を思い出し、頷く。

ラファエルに教えてもらったことは、もう大丈夫だ。

ラファエルが私の隣に座り直すと、私の腰を抱く。


「……ところで、さっきからずっと気になってたんだけど」

「何?」


「ユーリア・カイヨウって……誰…? 俺、会ったことある?」


「「「え………」」」


真剣な顔で聞いてきたラファエルに、私と成り行きを見ていたアマリリスとローズが唖然としてしまった。

少しの間、私の部屋の音が全て無くなったのだった。


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