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第367話 引っかけはやめてください




「ごきげんようソフィア・サンチェス様」


ローズと教室に向かい、席に着こうとしたときだった。

かけられた言葉に、私は勿論ローズも一瞬唖然としてしまった。

一応、私王女ですけれども…

同格相手にするような声かけをされるとは思わなかった。

懐かしいなぁ…

サンチェス国学園でもされたっけ。

目の前には立派な縦ロール令嬢が。

………テイラー国王女思い出すなぁ…


「この度は58位という好成績を修められ、とても喜ばしいことですわね」


あ、何気に順位バラされたぞ。

貼り出される順位は100位までで、私の名前があったということは同学年の中では上位に当てはまるだろうけれど。

1位のラファエルとは離れすぎている。

というか私何も話してないんだけどな。

共通規約が出来ていなくて、一斉に生徒が粛正されたのは記憶が新しいと思うんだけどなぁ…


「ローズ、最初の授業は何でしたっけ?」

「機械学だったと思いますわ」

「そう。わたくし機械学好きですわ。ラファエル様がどんな物をお作りになられたか、一目で分かりますもの」

「まぁ。惚気ですの?」

「そ、そんなつもりはありませんわ…」


相手を無視してローズと話していると、バキッという何かが折れる音がした。

まぁ多分、扇子が2つに折れた音かな。


「わ、わたくしを無視なさるなんて――!」


ご令嬢が顔を真っ赤にして憤慨しているらしい。

最初から目を合わせてないし、今は顔も背けているからどんな顔をしているか分からない。

なおも食い下がってくるかと思ったタイミングで、本鈴がなった。

ナイスタイミングだ。

ほぼ本鈴と共に教師が入ってくるから、令嬢はそれ以上留まることが出来ず、去って行く気配を感じた。

教師と共にラファエルも滑り込んで来て、少し早足で席に着く。

呼び出された理由は何だろ…

教科書を用意しながら、私は授業を聞く態勢になった。


「皆様試験お疲れ様でした。順位はご確認されましたでしょうか? 今から答案用紙をお返ししますので、答えをご確認下さい。この時間は復習の時間にしますので、間違えたところ、また解答できなかったところを改めて知り、理解されるように」


授業がないことに心なしか残念に思う。

けれど答案を返してもらえるのは有り難い。

全て埋めたのは埋めたけれど、何処がどう間違っているのか知りたかったのだ。

手元に来た自分の答案を見る。

サンチェス国と同じで、○×で採点してくれているから有り難い。

正解も不正解も関係なく上から順に確認していく。

そんな時、手元が不意に暗くなり、私は顔を上げる。

すると後ちょっとで頬が触れてしまいそうなほど、ラファエルが近かった。

ビックリして椅子から滑り落ちそうになった。

………まぁ、驚きを表現すればだけれど。

この学園の椅子から落ちることは、まずあり得ないだろうね。


「ちょ……ラファエル様……」

「………」


小声で咎めるけれど、ラファエルは私の答案に集中しているようで、相づちもない。

私が持っているものを見終えたのか、次の答案を机から手に取り、それも見ていく。

………あの、今更ながらに間違いがある答案を見られるのは、恥ずかしいのですが…

やらかしてなければいいのだけれど…

特に、ラファエルに教えてもらった部分が間違っていれば、申し訳ないし…

そんな事を思っていたら、ラファエルが1つ頷き答案を机に戻してくる。


「ソフィア」

「は、はい…」

「そんな不安そうな顔をしないで。基礎は出来ているよ。解答もあながち間違ってない」

「………ぇ……?」


こんな間違いだらけの解答なのに…?

首を傾げると、微笑んでラファエルは私が持っている答案を抜き取り、同じく机に戻した。

………っていうか、みんな静かに自分の答案に向かっているのに、話してていいのだろうか。


「どの×が付いている解答も、省略されているから間違いになっているだけ」

「しょ、省略……?」


習ったとおり書いたと思ってたのだけれど…


「まず機械学だけどね。問題は『この機械は何』で、絵が描かれてあるでしょ」

「は、はい。ですから機械の名称を…」


正式名称で書いてるから、省略してないと思うんだけど…


「サンチェス国学園の試験なら、それで合っているのだろうけれど、ランドルフ国学園では機械の名称と用途を書かなければ、間違いになっちゃうんだよ」


………なんてこった…

いやだって、問題は『この機械は何』と聞いているのだから、機械名だけでいいと思うじゃないか……

それなら『機械の名称と用途を答えなさい』にしてよ!!

そんな引っかけ問題いらないよ!!


「教えておくべきだったね。ごめんね」

「い、いえ……」


そういう事なら、と私は赤のペンを取って、自分が機械名だけ書いている所に書き込んでいく。

全て書き終わりラファエルを見ると、合っているようで微笑んで頷いてくれた。

その事にホッとする。

少なくとも私の中で覚えた知識は間違っていなかった。

次の教科の間違いも教えてくれるらしく、ラファエルは違う答案用紙を機械学の答案用紙の上に置いた。

私は教えてもらいながら、修正していったのだった。


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