第366話 意外なところから
生徒達の視線を気にせず、堂々と教室へと足を進める。
ヒソヒソ話される言葉も気にしない。
さっき自分の不甲斐なさを実感して、泣いて、スッキリした。
自分の実力は分かっていたけれど、ラファエルにまで迷惑をかけたことが悔しかった。
でも、次挽回する。
それで充分だ。
「ソフィア」
「ソフィア様」
背後から声をかけられ、私は振り向いた。
「おはようございます。ローズ、フィーア」
後ろから2人が来ていたことにも気付いていなかったようだ。
考え事は後回しにするんだった。
「おはよう」
「おはようございますソフィア様! 結果見ました! 凄いです!」
フィーアに詰め寄られ、私は思わず後ずさる。
「な、何がでしょう…?」
「ソフィア様はまだランドルフ国に来られて日が浅いのに、試験であの成績は凄いです!!」
フィーアに手放しで喜ばれ、私はどうしていいか分からなかった。
「更にお仕事でお休みもたくさんお有りでしたのに、凄いです!」
「あ、ありがとうございます」
………喜んでいいのだろうか…
自分ではダメだと思っているのに…
それに、誤魔化してくれているのだろうけど、怪我とかで休んでたことは知られてるからね…?
どこ情報からかは知らないけれど…
「自信を持ってもいいと思いますわよ? わたくしは毎日来ていてもソフィアとそう変わらない順位でしたもの」
ローズにも言われた。
そして周りはシンとしてしまった…
「わたくし達は2年からですもの。1年分の基礎が出来ておりませんから、一緒に頑張りましょう?」
「ありがとうローズ。頑張りますわ」
2人のフォローのおかげか、周りがサッと視線を反らして離れていく。
ローズの言葉の裏の意味に気付いた者達は、気まずいだろう。
私とローズより下の順位の者は、1年の基礎が出来ていても、私達には敵わない、という事だから。
ローズも容赦ないなぁ…
助けてくれたことは感謝するけれど、ローズも蔑みの対象にならなきゃいいな…
「そうだソフィア。聞きたいことがあったのですけれど」
「なに?」
首を傾げたとき、予鈴が鳴った。
ハッとして3人とも足を動かす。
「フィーア、また後で」
「はい。失礼致します」
フィーアのクラスの前で別れ、ローズと共に教室へ。
「聞きたいこととは?」
「ルイス様の好みご存じ?」
ローズの言葉に一瞬固まってしまう。
「………いえ…」
「そう。ソフィアも知らないのね…」
はぁっとため息をつくローズに首を傾げる。
そもそも私はルイスとそんなに接点ないのだけれど…
っていうか、何故そんな話に…
「ほら、ソフィアはラファエル様と同じ物を身につけたりしてますでしょう? わたくしも揃いで持てたらと思うのですけれど、ルイス様のお好みでない物を贈ったとしても身につけたりしていただけないでしょう…?」
………というか、私はローズからまだルイスとの婚約の話聞いてないのだけれど…
当たり前のように話されてるよね…
まぁ、いいけれど…
「それはまずルイスと話をしないことにはどうしようもないよ…そもそもルイスが揃いを付けてくれるかどうか…」
私が知っているルイスは、付けるとは思わないけれど…
落ち込むローズを慰めながら、教室へと入った。




