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第365話 まぁ、予想通りです




ザワザワと生徒達が思い思いに言葉を交わしている廊下。

貼り出されているのは試験の結果。

私はラファエルに連れられ、現在結果表掲示板の真正面にいる。

………まぁ、ラファエルが来たらみんな前を空けるよね…

当然ラファエルは上から見ていく。

私は下から段々視線を上げていく。

すると、真ん中の方に自分の名前を見つけ…

ぁぁ、やっぱりね…と想像通りだった。

自分が優秀などとは思ってなかった。

ゲームの世界だからといって、モブの私にヒロイン補正など付くわけがない。

ココでヒロインなら、当然攻略対象の上になって、見直されるだろうけれどね。

ついっと一番上に視線を向けると、当然1位の所にラファエルの名前がある。


「流石ですわラファエル様」

「ありがとう」


ニコッと笑ってラファエルが私を見てくる。

私も笑い返す。


「………ソフィアの名前、ないね」

「ありますわよ」


ラファエルの気遣いなのか、ポツリと私にだけ聞こえるだろう小声で言われるけれど、私は堂々と普段通りの声で返した。

実力は実力だ。

出た結果は変わらない。


「こちらに」


私は躊躇なく指を差した。

順位表のど真ん中でそんな会話をすれば、当然囲んでいる生徒の目も自然と私の指先に。

視線が集まるのを感じるけれど、気にしない。


「………ごめん、私の教え方が…」

「ラファエル様がお気にされることではございませんわ。わたくしがまだまだランドルフ国の事に理解が足りないということですから。わたくしラファエル様に相応しくなるため、一層努力しますわ」

「ありがとうソフィア。けれど、無理はしないでね」

「はい」


互いに微笑み合うけれど、ラファエルの目が笑っていない。

雑音が耳に入っているようだ。

ラファエルの腕に触れ、その場を後にしようと促す。


「こちらにいつまでも留まっていれば、皆様のご迷惑になりますわ。行きましょう?」

「そうだね」


ラファエルが私の手を掬い、エスコートしながらその場を後にした。

曲がり角で曲がると、先程の場所から生徒達の声が広がり、大音量となって私達の所まで届く。

まぁ、うん…私に対してのご意見ですけれども。


「ソフィアは休んでたし、中途入学だし、まだこっちの授業に追いついてないし」

「はいはいラファエル落ち着いて」


怖い顔をして、でも他の人に聞こえないように声を抑えて、拳を握るラファエル。

私は近くの空き教室を見つけて、ソコにラファエルを押し込み、一応通路に誰もいないか確認して扉を閉めた。


「だって!」

「気にしてないから」

「気にしてないはずないでしょ!? 悔しい思いをしているのはソフィア自身でしょ!? なんで平気な顔をしてるの!」

「悔しいけど、私の実力はあんなものだよ。努力が足りなかったのは私も分かってるし、言われて当然でしょ」

「そ――」


ラファエルが何かを言いかけたとき、放送が流れた。


『ラファエル・ランドルフ様。恐れ入りますが、教員室までお越し下さいませ』

「――チッ。なんだよ!」


イラついているラファエルを何とか落ち着かせ、私は送り出した。


「………なんで平気な顔、か……」


慣れているから、なんて言ったらラファエルまた怒るかな…

サンチェス国でも上位に入ったことないし、ランドルフ国について私が学んでいたのは前の王の偽りの王政だったし…

色々変化している現在のランドルフ国を殆ど知らないし…

1から覚えるのは結構大変なのだ。

けれどそんなことは言い訳で、私が試験で実力以上のものを出せなかったのは事実。

仕方ないと、次頑張ろうと、思っているのに…

流れ落ちる涙は、次々と溢れて床に落ちていく。


『………サンチェス国の王女なのに…』

『私より勉強できないんだ』

『ラファエル様、お可哀想』

『やっぱり他にラファエル様に相応しい人が…』


言われて当然の言葉に、何も言い返せるわけない。

サンチェス国にいたときには、誹謗中傷に涙なんて出なかった。

けど今……私はラファエルの婚約者で、彼に相応しい自分になりたいと思っている。

だからこそ……ラファエルと開いている実力に、悔しく思う。

勉強が出来ない自分に、嫌気がさす。

せっかくラファエルが教えてくれたのに。

授業についていけるぐらいに、してくれたのに。


「……ふぇ……っ…」


その場に座りこみ手で唇を押さえ、私は声を押し殺して涙が出なくなるまでそのままでいた。

他の人の声に感情を揺さぶられてしまった自分が嫌いだ。

ラファエルに恥をかかせてしまった自分が嫌いだ。

なにより…こんな事になっても、ラファエルに嫌われなければいいだなんて思ってしまう自分が1番嫌い。

王女として、きちんとランドルフ国を知らなければならないのに。

私はゆっくりと目を閉じ、最後の涙が頬を伝った。


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