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第362話 裏切り者が出ました!




ラファエルと共に温泉街から王宮へ戻り、私の部屋へラファエルが送ってくれた。

部屋の前で丁度技術班の制服を着た男の人が歩いてきた。

手に箱を持って。


「ソフィア様、ご注文の品をお持ちしました」

「ありがとう」


男からソッと箱を受け取る。

その箱も豪華だ。

見た目はシンプルなのだけれど、ランドルフ国の技術班が自信を持って作り上げた箱だと分かる。


「こんな入れ物まで作って下さったの?」

「所長の命で、僭越ながら作らせていただきました。中の物を取り出されても、ちょっとした小物入れになればと」

「わたくしには勿体ないわ。所長さんによくお礼を言っておいて下さる?」

「畏まりました」


男は礼をして、去って行った。

研究者特有の白衣を翻しながら。


「………それなに?」


………あ~……ラファエルが不機嫌になってしまった。


「ラファエル、時間ある?」

「あるよ。…あと――10分ぐらいなら」


ラファエルが腕時計を使いこなしていらっしゃる…

その腕時計を見るために肘を曲げて、袖を捲る仕草にドキドキしちゃうんですけど…

………そうだ!!

技術班にカメラ作ってもらおう!!

ビデオカメラも!!


「………ソフィア?」


ラファエルに首を傾げられて、ハッとする。

笑って誤魔化して私は部屋に入った。

机に箱をソッと置き、ゆっくりと開いた。

そこには注文以上の出来映えの物が所狭しと並んでいる。

ラファエルが後ろから覗き込んでくる。


「あ、これ例の物?」

「そう!」


サンチェス国でラファエルと内密で買いに行った宝石が付けられている装飾品。

私はその中にあるアメジストが付いた、アザレアの金細工の物を取り出した。


「はい、ラファエル」

「………え…?」


突然の事に、ラファエルが唖然として瞬きの回数が増える。

ふふ…ラファエルにサプライズ、成功したかな?


「………俺の?」

「うん。コレ作ってもらったときに、ラファエルのも頼んでいたの。驚かそうと思って昨日言えなかったの。ごめんね?」

「あ、いや…」


ラファエルは私の手の中の物をソッと手に取った。


「………綺麗だね」

「気に入ってくれたのなら良かった」

「コレって何の花?」

「アザレアっていう花だよ。こっちには……ないかな」

「………これ、花言葉って何?」


私はラファエルの言葉に微笑んだまま固まってしまった。

………それ聞く?

聞いちゃうの!?

男の人って花言葉にあんまり興味ないじゃん!?

途端にカァッと頬に熱が集まってくるのを感じた。

私は慌てて顔を伏せた。


「み、みんなにはこれね!!」


私は壁際に立っているみんなの方へ箱を持っていく。


「………ソフィア」

「ソフィーとヒューバートには、エメラルドとシトリンクォーツが付いたもので、ジェラルドとアマリリスには、シトリンクォーツとアクアマリンが付いたもの。アルバートとフィーアには、ルビーとローズクォーツが付いたもの、オーフェスはラピスラズリが付いたものね」

「ソフィア」


みんなに手渡しながら私は必死でラファエルからの追求を、どう逃れようか考えていた。


「姫様、この花は桜ですね」


みんなに配った宝石が付いたブローチ加工された装飾品は、桜の形をしていた。

パートナーがいるものにはそれぞれ髪か瞳の色の宝石を1つずつ付け、2つの違う宝石が隣り合うようにしている。

オーフェスのみパートナーがいないので、宝石は1つだけ。


「そう。私が1番好きな花」

「こちらにはありませんね…」

「だからこそ相応しいと思ったの。コレを私の専属従者のしるしにしようと思って」


そう言うと、みんなはハッとする。

お父様もお兄様も、自分の直属の部下に自分の証を付けさせている。

ソレを受け取り、身につけられるということは、名誉以外のなにものでもない。

私も王家規約執行権限証を受け取った以上、責任も重くなるし、みんな私専属なんだから証作っても良いと思うんだよね。

………っていうのは建前で、ただ単に格好良いから欲しかったっていうだけなのだけれど。


「成る程。他の方とデザインが重なるということはないですね」


ソフィーにすぐ分かってもらえて満足だ。


「………対の宝石はどうかと思いますが……せっかくの桜ですのに…」

「付けてたら、離れていても互いの色見られるでしょ? 瞳の色とか髪の色とか連想できて」


ボンッとソフィーとアマリリスとヒューバートの頬が一気に真っ赤になった。

うんうん。

君達も恥ずかしい思いをすると良いよ。

いっつも私ばっかりが真っ赤になっている気がするし。

我ながら意地が悪いと思うけれど。


「………ソフィー、この花の花言葉は?」

「『あなたに愛されて幸せ』です」

「ソフィー!!」


ラファエルに問われ、問答無用でソフィーにバラされてしまった。

また真っ赤になってしまうじゃないの!!

ソフィーはすました顔でブローチを付けている。


「………へぇ?」


ラファエルの声が真後ろに聞こえたと思ったら、背後から抱きしめられてしまった。


「ちょっ……!?」

「で? なんでアメジストなの? 紫色だなんて、俺とソフィアを示す共通の色じゃないでしょ?」

「そ、それは……」

「それは?」


は、恥ずかしくて言えないんですけど!!

口ごもっていると、また裏切り者が!!


「ソフィア様のサンチェス国での象徴は紫でございますよラファエル様」

「オーフェス!!」

「そうなの?」


私はオーフェスの口を塞ごうともがいてラファエルから離れようとするけれど、当然ラファエルの腕の力は緩まない。


「王が赤、王子が青、赤と青を混ぜたら紫になりますので、ソフィア様の色が紫になったのです。つまり、サンチェス国で紫といえば、王女であるソフィア様のお色ということです。サンチェス国ではこの3色の原色は衣類などで使用されるのを禁止されております」

「成る程。禁色なんだ」

「禁色である物を贈られるのは、ソフィア様の本当に大切な人に限ります。まぁアメジストは薄紫色になりますが、紫には変わりありませんね」


オーフェスに全部バラされ、私はぷしゅーっと茹で蛸状態になってしまったのだった。

ルイスがラファエルを確保しに来るまで、私はラファエルの視線から逃れることに必死に頭を悩ませたのだった。


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