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第359話 内緒なのです




薄暗い王宮内をコソコソと歩いて行く。

なんだか上から殺気みたいなのが来てるけど気にしない!


『姫は攫われた自覚はあるのでしょうかね』

『人はそう変わらないんだよ』


………内緒話で文句言うなら聞こえないように話なさいよ…

護衛騎士を付けず、夜分に表向き1人で歩いている私は、かなりの非常識。

そんな事は分かってるよ。

でも内緒なんだもの!!

影の貴方達が付いてきてるのだから大丈夫でしょ。

元凶ロード捕まったし。

目の前にある扉をソッと開ける。

ムッとした熱気が感じられた。


「おらソコ何寝てんだ!!」

「すいやせん!!」


いきなり怒鳴り声が聞こえ、ビクッと飛び跳ねてしまった。


「あー!! 間違えた!!」

「おまっ!? ドヤされるぞ!?」

「ぎゃぁぁあ!!」

「なんだ!?」

「手にぶっさした!!」

「おい医者ぁぁあああ!!」

「はっ!? ひぃぃぃいいいい!?」

「今度は何だ!!」

「む、むしぃぃぃいいいい!!」

「虫ぐらいで騒ぐな!!」


私は開いた扉をゆっくりと閉めた。

………今のはなんだ…

前に来たときはこんな事なかったのだけれど…

今のは寝ぼけていて見た夢かな…

考え込んでいれば、スッと扉が開いた。


「ソフィア様、いかがなさいましたか?」


………あれ?

この人さっき怒鳴ってた人じゃなかったっけ…

今はニッコリと微笑んでいる。

………何事もなかったように。

………気にしないでおこう…って、私の存在に気付いてたんだ…

目の前にいるのは如何にも研究者って感じのヒョロッとした男の人で、目の下に濃いクマが出来ている。

………何日寝てないのだろうか…

中の者達が可笑しなテンションや怒りっぽいのはそのせいかな…


「………ラファエル様はご一緒では…」

「夜分に申し訳ないのですが、ラファエル様にもご内密でお願いしたいことがございますの」

「何でしょう。私共でお役に立てることならよろしいのですが…」

「作ってもらいたい物がありますの。わたくしは不器用ですから作れそうになくて…」

「そうでしたか。物の作製ならお任せ下さい。我々の得意分野です。何をお作りするのですか?」


………ぉぉ。

なんだか見た目とは裏腹に、物腰優しく引き受けてくれたぞ。

私は持っていた鞄から設計図を取り出した。


「コレなんですけれど…」

「こ、これは……!!」


何故か見た瞬間、雷に打たれたような…衝撃的な物を見た、って感じの顔をされた。


「………これは凶器か何かですか?」

「え……」


私はこの時思った。

………ラファエルとお兄様は私の設計図を見て、よく理解できてるな、と。

我ながら良く書けた、と自信を持っていたわけじゃない。

子どもの絵みたいに拙い設計図だとは分かっていたけれど…

………まさかの凶器…という解釈をされるとは…


「そ、ソフィア様…?」

「………ゴメンナサイ……私の言うとおりに書いてもらってもよろしいかしら……」

「………は!! も、申し訳ございません!!」

「あ、ううん。責めてるわけじゃないから」


私達は研究室に入り、その室内にある会議室らしきところへ入った。

扉を閉めると外の騒音も聞こえず、密閉度が高い。

………影がいるから何かあってもすぐ助けてくれるだろう。

………ラファエルにバレたらかなり怒られるだろうけど…

ラファエルにも内緒だから、心の中で謝る。


「コレを元に――」


彼は私の言うとおりに設計図を書いていく。

遙かに私より上手いよね。

うん、当たり前だけれど。


「こんな感じですか?」

「そう! ありがとう!」

「いえ。それでココには…」

「あ、そこにはこれを1つずつ嵌め込んで欲しいの」


私はラファエルに買ってもらった宝石を出した。


「成る程。………個数は、14個ですか」

「8人分、頼めるかしら? こちらは1つで……そしてこの宝石は――」

「畏まりました。この細工なら、明日中には出来るでしょう」


男の言葉に、私は顔を上げる。

そんなに簡単に…?


「早いわね。でも、大丈夫ですの? ラファエル様にも命じられている事があるのでしょう?」

「それは部下がやります。これぐらいなら私1人での作業でも大丈夫ですので」


さすが本職。

この人がここの責任者なのかしら…?


「まぁ。それでは宜しくお願い致します」

「はい。出来上がった後は部下に届けさせます」

「そう? ではお願いね」

「はい」


すぐに引き受けてくれるとは思っていなかったから、嬉しくてニヤけ――笑ってしまう。

研究室から出た私は、早足で部屋へと戻る。

その間に誰にも見つかることなく、部屋へと帰れた。

ホッと一息つき、次の瞬間息を飲むことになる。


「………お帰りソフィア」

「………ラ、ファエル……」


仕事に行っているはずのラファエルが、私のベッドの上に座って足を組み、ニッコリと微笑んでいた。

………なんで今夜は戻れないって言ってた人がここにいるのだろうか…

って、そんな事今は関係ない。

目の前に微笑んでいるラファエルを、どう宥めるのかが問題だった。

勝手なことをした自覚はあるけれど、今はまだ知られたくない内密のこと。

私は冷や汗をかきながら、ソッと口角をぎこちなく上げることしか出来なかった。


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