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第35話 今度こそヒロインVSします




王妃の言葉に睨みつけるように見てきたアマリリス。

それを無表情で見返す王妃。


「王妃を睨みつけるとは何事ですか」


あ、ヤバイ。

つい、口を挟んでしまった。

チラッと王妃を見ると、王妃は私を見て頷いた。

おお、選手交代ですね!

やったー!

………別に喧嘩が好きとかじゃないから。

念のため。

早く退場してもらわないと、貴族の教育に悪いから。

ローズのためにも。

この世界にヒロインなどない。

ゲーム感覚で好き勝手されると、困るのよ。

なによりラファエル狙いは、やめてもらいますよ。


「貴女は男爵令嬢。王妃と言葉を交わす事さえ難しい立場の人間です。そんな人間が、王妃を睨みつけるなど、あってはならないことです」

「わ、私は、王子を誑かしてはいません! 王子が勝手に勘違いして勝手に婚約者へ破棄を申し上げたのです! 私は関係ありません! なのに何故私が追放になるのですか!!」


私の言葉に瞬時に睨みつけるのを止めたと思えば、涙目で訴えてきた。

………へぇ。

勝手に勘違い、関係ない、ねぇ。


「関係がないのでしたら、何故レオナルドが貴女に対して恋心を抱いたのでしょうか? 何故人気のないところで逢瀬をしていたのですか? 何故公爵令嬢と婚約破棄をしようなどと思ったのでしょうか? 関係ないとおっしゃりますが、では何故あのパーティの際のエスコートを断らなかったのですか?」

「向けられた好意は嬉しく思いますが、私のせいではありません! お、逢瀬とおっしゃいますが、教室でお話していただけです!」

「二人きりだと誤解されるのは分かっていたはず。なのに貴女はレオナルドと二人きりを許容した。責任は貴女にあります。レオナルドは婚約していると知っていたでしょう」

「そ、それに私が婚約を解消して下さいと頼んだわけではありません!!」

「逢瀬の場所であんな事を口にしておきながら、よく言いますね」

「あ、あんな事……?」


ちゃんとライトとカゲロウから情報を得ている私は口角を上げた。

………逃がすまい。

二度と誘惑などしないように。


「『レオナルド様と一緒にいられて嬉しい』『婚約しておられないのでしたら、ずっと一緒にいられますのにね』『レオナルド様は素晴らしい人です。私がお側で支え続けられるのでしたら幸せなんですけれど…』などなど。誤解を招く言い方をなさっていましたよね。更に『ローズ様から色々言われてしまいました…』と言って、ありもしないことをレオナルドにおっしゃっていましたね。これの何処が関係ないのでしょうね?」

「なっ……」


あ、表情が崩れた。

ちなみにアマリリスが言った台詞は、ゲームの選択肢です。

………どうでも良いこと覚えてるのね私の脳は。

ラファエルの国立て直しの内容は未だに思い出せないのに。

今の私には、ラファエルの方が大事ですから!!

アマリリスの選択肢台詞なんてホントにどうでもいいよ!!


「貴女がレオナルドに好意を持っていると思われる態度は、学園で明らかでした。それなのに自分には関係ないなどと、よく言えたものです」

「っ……!」

「『トラブルを起こした者は、容赦なく処分します。貴族は勿論、平民の出の者も学園では平等です。けれど自分の本来の立場を決して忘れぬよう』」


アマリリスはいきなり何を言っているんだ、という顔で見てくる。


「『我が物顔で人を思うようにしようなどと許しません。“我が王家が常に周りを見ている”ことを、忘れぬように』そう私は言いましたよ。学園で――貴女の目の前で」

「!!」

「人目がないとでも思っていましたか? あの時のパーティでは他国の王子達もいらしてくれていました。ですから具体的な事は――貴女が誘惑していたことは言わずに会場を出て行ってもらいました。貴女は、レオナルドにおこなっていたことを、他のパーティ、城下街でやっていますね。知られていないとでも思いましたか?」

「っ!! ………モブ王女がっ」


小声で喋ったつもり?

聞こえてるわよ?

ここまで、ね。


「“モブ”王女、とは? 今まで聞いたことがない言葉ですが、貴女の表情を見ると良い言葉ではないようですね」


………う~ん。

我ながら白々しく感じるけど…

ここで分かるという態度取れないし。

一番知られたくないアマリリスに知られることになってしまう。

それは避けないと。


「――なんで……」


あ、来るかな?


「なんでアンタみたいなのに責められなきゃなんないのよ!? 私はヒロインよ!? 私が主人公なの!! なのになんでアンタがラファエルと婚約してるのよ!! 可笑しいでしょ!? サブキャラと恋愛できるなんて聞いてない!! この世界設定狂ってるんじゃないの!?」


………早かったなぁ……

ボロが出るの。

ってか、この世界にない言葉を使わないの。

頭可笑しい子に思われるよ?

自分がアマリリスに転生していると分かっていても、自分自身がコントローラー握って操ってるんじゃない。

ここは現実世界だ。

それを認めずに好き勝手やってた代償がこれだよ。

周り見てみなよ。

急に態度が変わった令嬢を、疑わしい目で見られているのに気づきなさい。

そして――


「同盟国の、それも王子を呼び捨てとは何事ですか」


王妃が怒っちゃったよ。

本気で。


「たかが男爵令嬢如きが。恥を知れ」


王も怒っちゃった。

ランドルフ国の現状を知っているけれど、それは王家だけ。

貴族は知らない。

王も公の場では同盟国への礼儀を示す。


「自国の王女も侮辱しておいて、生きて帰れると思うなよ」


………あ、居たんだレオポルド…

存在感なかったよ…

滅多に怒らないレオポルドが本気で怒ったら怖いな…

ラファエルと言い合ってたときはまだ軽かったんだね…

………うん、私はもう引き下がろう。


「なっ!? は、離しなさい! 私はヒロインなのよ!?」


………まだ言ってる…

わーわー喚きながらアマリリスは引きずられていった。

あれは帰れないかもね…

思わず同情してしまった。


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