第347話 こぼれ落ちそうです…
ラファエルが取り寄せた本を睨みつけるように見ていた私。
段々眉間にシワが寄っていくのを自覚する。
現在ラファエルはお兄様と打ち合わせ中でここにはいない。
ラファエルに問題を出され、本を見て良いから解くようにと渡されている紙。
鬼か!!
と叫びたいぐらいにびっしりと問題が書かれている。
………私、前世でもサンチェス国でも、こんなに必死に問題といてたかな…と遠い目をしてしまう。
「ヒューバート」
「はい」
「ここ教えてくれる?」
「失礼します」
唯一のランドルフ国学園卒業生であるヒューバートを呼び、問題を指差す。
本を見て良い=カンニングOK
ということは教えてもらっても良いって事でしょう!
と、勝手に解釈する。
「………ああ、ここは――」
ヒューバートが本を捲り、指差す。
「ここの部分とこちらの部分を合わせると…」
「あ、ホントだ」
お礼を言って答えを書き込む。
「出来たー!!」
「良かったですね」
「もぉラファエル容赦なさ過ぎだよぉ」
「ソフィア様のために作られた物ですから、そう言わずに」
「分かってるけどぉ…」
グッタリと机に寄りかかる。
脳の許容オーバーになりそうだよ…
ラファエルの隣に立つために勉強を蔑ろには出来ないけれど…
基礎を他の生徒の2倍や3倍の速度で詰め込むように、私の脳は出来ていない。
覚えた先から抜けていきそうになるほど、もう頭いっぱいだ…
「あ、ソフィア様、ここ間違ってます」
「………へ!?」
そんなバカな!?
殆どカンニングしたのに!!
と、自慢できない事を思いながらヒューバートの指先の問題を読む。
………自分だけで答えたところが間違っている…だと!?
「嘘!?」
私は急いで本を捲っていく。
「その本でしたら確か76ページです」
「………ページまで覚えてるんだ」
素直にヒューバートの言ったページにする為捲っていく。
そこには私の答えとは違うことが書いてあった。
また覚え直し!!
思わず頭を抱えたくなった。
「ねぇ」
「え……あ、ラファエルお帰り」
「お帰りなさいませ」
いつの間にかラファエルが帰ってきていた。
なんか不機嫌そうな顔をしている…?
首を傾げると、ラファエルがいっそう不機嫌になった。
「………近くない?」
「え……?」
ラファエルの言葉に私は、ふとヒューバートがまだ傍にいたな……と思いながら彼の方を向いた。
ヒューバートもラファエルの言葉に、私の方を向いたみたいで…
「………!? す、すみません!!」
慌ててヒューバートが飛び退き、後ずさった。
………うん、まぁ…教えてもらってたから近かったけれども…
そんなに真っ青になって飛び退く事ないじゃない……
「………そんな過敏に反応しなくても…ちょっと傷つくんだけど…」
「す、すみません!!」
「何。ソフィアはヒューバートがいいわけ?」
「そういう事じゃなくて、勢いよく飛び退かれるほど、私の傍は嫌なのかと」
「そ、そんな事は…!!」
「ふぅん?」
「うっ!?」
ヒューバートが私とラファエルのどちらに付けばいいのか分からず、固まってしまった。
「ヒューバートに教えてもらっていただけだよ。他に何もないから怒らないでよ」
「………そう」
ラファエルはまだ不機嫌なまま近づいてきて、私を椅子から抱き上げ、自分が座って私を膝の上に乗せて腰を抱いた。
「見せて」
「はい」
私に触れた事で機嫌が直ったようで、ラファエルは私が書き込んだ答えを読んでいく。
ドキドキしながら待つこと数分、頭を突然撫でられる。
「あ、全部正解!?」
「ん~惜しかった」
「………ぇ…」
ヒューバートに指摘されたとこも直したのに!?
まだあったの!?
ラファエルが指差した部分を見る。
………ケアレスミスしてるし!!
「あ~もぅダメ…休憩させてぇ……」
「いいよ。休憩終わったらまた教えるから」
「お願いしますぅ…」
ラファエルに寄りかかって言うと、ラファエルが笑ってまた頭を撫でてくれる。
ソフィーのお茶を待ちながら、私はラファエルの膝の上で休憩に入ったのだった。




