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第346話 良くやったと褒めよう




「だぁーーーー!! もう無理だ!!」


一同沈黙したまま私達は私の部屋に帰ってきた。

車イスからソファーに移って、ソフィーのお茶でも…とソファーに手をかけたときだった。

扉が閉まる音がしたと思ったら、叫び声が聞こえギョッとして振り返った。


「おおお俺はなんて事を!!」


真っ赤な顔をして床に蹲るアルバート。

………一体何事!?

その巨体で扉の前で蹲られると迷惑なんだけど……


「恥ずかしさがピークになってるね」


ラファエルはすました顔でアルバートをチラ見して、私の脇に手を差し込んで抱き上げながらソファーに移してくれる。

お礼を言って改めてアルバートを見るも、何かブツブツ呟いているだけ。

他の護衛は我関せずで定位置について行く。

ソフィーも素知らぬ顔でお茶の準備。

フィーアは――ん?

ちょっと顔が赤くなっていて、なんだか表情が作れない様子でソフィーの手伝い中。

………ぁぁ、成る程。

さっきのアルバートの対応にアルバートの恥ずかしさがMaxになり、フィーアは無関係を装っているが、先程の発言に頬を染めながら多分笑いを堪えているのだろう。


「まさかあの脳筋のアルバートが溺愛宣言とは」

「イメージ崩れますね」

「どうして~? あれぐらい普通だよねぇ?」

「だ、黙れ!!」


あ、護衛達がアルバートをからかい始めたぞ。

コトリと私の前にお茶を置くフィーアを見上げる。


「あれ、打ち合わせしてたの?」

「いえ……私の設定だけで、彼の設定はしておりませんでした。どうせ言っても実行は出来ないと思いまして」

「………へぇ?」


思わずニヤリとしてフィーアを見てしまう。


「な、何ですか…?」

「意外と嬉しかったんじゃない?」

「っ……!?」


私の言葉もフィーアにとっては予想外だったのだろう。

カァッと一気に色づいていくフィーアの頬。


「良かったね。政略結婚でも上手くいきそうで」

「い、いきませんよ」

「どうして?」

「あのアルバートですよ? どうせ両親の前でいい顔したかっただけで、後はいつも通り訓練に明け暮れるでしょう」

「………ぁぁ」


フィーアは顔を背けてツンとした顔で言う。

………頬の赤みで全く台無しだけれど。

フィーアの言葉に私は納得してしまう。


「分からないよ」


ヒョイッとラファエルが間に入ってきて、微笑む。


「ラファエル?」

「ああいうのが意外と1番恋愛したら変わるから」

「「へ?」」

「今まで剣が大事だったのが、女大事に変わりやすいんだよ」


ピッとラファエルが、言い合いしている護衛達の方を指差す。

………ええ?

そうかなぁ…?


「実体験済みだから分かるよ。男は単純なの」

「………ん?」


実体験済み…?

ラファエルを首を傾げて見ると、苦笑される。


「俺が今まで大事だったのは復讐だったの。勿論民も大事だったけど。如何にして王と兄を追い落としてやろうかってそれだけしか考えてなかった俺が、ソフィアに会ったら復讐心薄れてソフィアの事ばっかり考えるようになってたの」

「………ふぇ!?」


あまりに不意打ちだったために変な声出してしまった!!

顔が真っ赤になっていく。


「あの時は本当にダメだと思ってたのに、ソフィアの顔が離れなかったんだよね。体裁整えるために気付かせないようにするのが大変だった…」


私と婚約したばかりの頃、冷たい目で見られてたのも、私を見極めようとしてたのも、全部演技だったって事?

だとしたら、ラファエルは役者目指したらいいと思う…


「男は単純だからフィーアがちょっと甘えたら即落ちるよ」

「し、しませんよ!?」


ニッコリ笑うラファエルに、フィーアが慌てて首を振る。


「そう? ああいう男は惚れたら一生守って大事にしてくれるよ?」

「つ、罪人の私がそんな畏れ多いことなど!」

「罪は罪だけど、俺もソフィアもフィーアに幸せになるな、なんて一言も告げてないよね?」

「え……」

「俺とソフィアを裏切らなければいい。一生ソフィアの為に尽くせばいい。公爵家の中のこと、休暇中に何をしようがそこは制限してないよね」

「で、ですが……」


戸惑うフィーアに、私は苦笑する。

まるで、前のアマリリスを見ているようだ。


「まぁ、それは私達が口を挟まなくても2人の今後で自然に決まるよ」

「そうだね」

「し、失礼します…」


居心地が悪くなったフィーアは足早に、ソフィーが待機している場所まで下がった。


「ま、今回はアルバートは良くやった、と褒めようかしらね」

「原因アルバートだけどね」


私の言葉にラファエルが苦笑する。

ソッとお茶に口をつけ、言い合いしている護衛達のやり取りを観察していた。


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