第344話 気づけば周りは
あれからラファエルの好きなように愛でられてしまった私。
………護衛達、助けて……と向けた視線は交わることなく、本当にラファエルの好き勝手されてしまい…
グッタリとラファエルに寄りかかる私と、ホクホク顔のラファエル。
………なんだこれ…
「ああ、そういえばソフィア。さっき何を考えてたの?」
「……ふぇ…?」
まだボーッとしている頭。
まるで何かのフィルター越しに話しかけられているように、ラファエルの声が遠い…
霧がかっている、と言えばいいのだろうか…?
「俺に嬉しい言葉を言ってくれる前」
「………ぁぁ……」
ラファエルの膝に座らされ、身体に力が入らないまま、私はまだラファエルに寄りかかっている。
そのままの体勢で、私は先程思い当たった考えを思い出す。
「フィーアが婚約すると、私の侍女全員、私の護衛と一緒になってね? と……」
「………ああ……」
「そう考えたら、みんな近すぎる距離でそうなってしまっているということで……別れたら気まずくね? と……」
「不吉なこと言わない」
だって、言うなれば近すぎる職場結婚だよ?
ラブラブなのか険悪なのか即分かってしまって、周りにも影響あるかもだし。
「ソフィーとヒューバートは恋愛で」
ビクッと2人が身体を震わせた。
「アマリリスとジェラルドは半強制政略で」
ジェラルドはいつも通りだ。
「フィーアとアルバートは完全政略でしょ」
「そうなると1番可能性があるのがソフィーとヒューバートだけどさ」
「ら、ラファエル様!?」
ヒューバートが慌てて声を上げ、焦った顔でソフィーを見る。
ソフィーは顔を染め、明後日の方向を向いていた。
「他の2組は政略が絡んでるから別れられないよ」
「ああ、そうね」
「ラファエル様もソフィア様も不吉なことを言わないで下さい!! 別れませんよ!!」
「「「「おお…!」」」」
「………ぁ……」
カァッと顔を真っ赤にするヒューバート。
今のは惚気と取っていいだろう。
ソフィーと話すこともままならなかったヒューバートが、こんなに成長して…
まるで母親気分でヒューバートを見てしまう。
実際にはヒューバートの方が年上になるから、お兄ちゃんなのに。
兄の恋愛を温かく見守る妹、の表現の方が正しいかもだけど。
でもやっぱり母親気分、の方がしっくりくる。
「ヒューバートの愛が無くならない限り大丈夫かな…」
「ソフィア様!?」
「いっそ2人も政略にしたらいいんじゃない? 前まで会話もまともに出来なかったから、そのうちソフィーがヒューバートに愛想尽かすかもだし」
「ラファエル様!?」
私達の言葉に焦るヒューバート。
そんなヒューバートを尻目に、私達はなおも会話を続ける。
「どんな?」
「ソフィーは精霊でソフィアと契約している。ソフィーの機嫌を損ねたら国に災いが起きる。だからソフィーの機嫌をとるために、ランドルフ国の公爵家の血を持つヒューバートを宛がい、誠意を見せる。そしてソフィーはソフィアの妹としてサンチェス国の姓をもつ王族の養女。ランドルフ国との同盟維持のためにソフィア同様、ソフィーも両国の架け橋として婚姻させる」
スラスラとラファエルの口から、後付け政略結婚の理由付けがされる。
「そ、そんな事されなくともソフィー殿は必ずもらいますよ!!」
「「「「おお…!」」」」
「………ぁ…」
………このやり取りさっきもした気が…
まぁいいか。
ソフィーがいたたまれないように、顔を手で覆ってその場に座り込んでしまった。
いつもの依然とした態度は取れないようだった。
私の話題のせいだし、咎めることはしないけど、可哀想な事をした。
「………私もラファエルと政略じゃなくても、結婚するよ…?」
ハッとしたときには遅かった。
ラファエルに即唇を奪われてしまっていた。
ヒューバートに触発され、無意識に対抗心出しちゃった…!!
カッとまた顔が赤くなる。
「え~…なにソフィア。今日可愛すぎるんですけど」
私の唇から離れたラファエルの唇が私の頬に移る。
「俺も絶対ソフィアを貰うよ」
み、耳元で囁かないでー!!
腰…砕けちゃった……
歩いちゃダメだけど、立てそうになかった…
「今日の勉強の目標達成してないけど、フィーアとアルバートの件もあるし、俺とイチャつこうか」
「べ、勉強する!!」
「ソフィアは俺と過ごすの嫌?」
「い……嫌じゃ、ないです……」
「だよね。じゃ、2人が戻ってくるまでイチャつこう」
結局ラファエルに押し切られる形で、私の今日の予定が変更された。




