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第341話 妙案だとは思うけど




「諦めないみたいだよぉ」


暫くして戻ってきたカゲロウはそう言った。

アイリーン・ケレイブ男爵令嬢はアルバートとの婚約に乗り気のようだ。

私にとっては筋肉バカでも、他の女にとってはそうではない。

だからといって、何をしてもいい理由にはならないのだけれど。


「ソフィア様! どうにかしてくれ!!」

「無理ね」

「どうして!!」

「アルバートが私をどういう目で見ているのか知らないけど、貴方の将来は貴方のもので、私が決めることじゃないわよ」

「アマリリスの事は決めただろ!?」

「………罪人と一緒にするな……」


思わず頭を抱える。

アルバートの中の私はどういう人間なんだろうか…


「じゃ、じゃあなんか考えてくれよ!! このままだと俺、いずれあんな女と結婚することになる!!」


………“あんな”って…

同情する気は無いけれど、好いているだろう男にそんな事を言われる彼女が哀れだ。


「他に付き合っている女がいる、っていう呈は?」


ラファエルの言葉に視線が集まる。


「婚約もしていて、愛し合っているのだと」

「そんな事を演じられる子が何処にいるのよ…」


簡単に言ってくれるけれど、アルバートのような男に合わせてくれる子はいないだろう。

思わずため息をつきそうになる。


「俺の影でも良いし、もしくは――」


ジッとラファエルが私を見てくる。

………へ?

私は首を傾げる。


「フィーアでも良いんじゃない?」

「………フィーア!?」


考えもしなかった子の名前が上がり、私は驚いてしまった。

フィーアはロペス侯爵家の娘だったけれど、ロペス侯爵の罪により、侯爵家は地位を剥奪され一家全員平民落ち。

………全員と言ってもフィーアだけなのだけれど…

侯爵とフィーリアは罪人として捕らえられ、使用人は全員ガルシア公爵家に引き取られている。

ロペス侯爵の妻は侯爵と娘の罪に耐えかね、捕りものがあった日の翌日に離縁手続きをして、実家に戻っていた。

強かだよね。

………っと、話が逸れた。


「フィーアは平民よ? アルバートの家族が納得するかしら?」

「ソフィアの侍女なんだからどうせ近々貴族の養子に入る。こちらの人間にその家の名を出しても問題ないだろう」

「え? 何処に入るか決まったの?」

「アシュトン家だよ」

「アシュトン家って北の公爵? よく受け入れてくれたわね……仮にも罪を犯した家の娘を……」


いくらアシュトン家が中立だからって……

それにフィーアも私を傷つけた1人に変わりは無いのに……


「アシュトン家に現在跡継ぎがまだいないからね。養子を近々もらいたいと言っていたのを思い出して、提案してみたんだよ」

「………それで?」

「「ソフィア様付きの侍女なら、これからは大丈夫でしょう。ソフィア様は信頼に値する人物だと判断しておりますので」って言ってくれてね。それにフィーアが養子に入れば、その相手を婿養子として家に入れて、跡継ぎを作ってもらえるならいい、とね。あそこの奥方は、もう跡継ぎを産める望みは殆ど無いらしいし」

「………成る程……」


思わぬところでランドルフ国の公爵からの評価が聞けて、胸が温かくなった。

………っと、喜んでいる場合じゃないよね。

すっとアルバートに視線を戻すと、ジッと見つめられていた。

………期待を込めて見ないで欲しい…


「でもフィーア・アシュトンの婚約者、として紹介してしまえば後には引けないわよ?」

「………そうだねぇ…」

「それに…アルバートが公爵家の事を覚えられるとは思えないし……」

「………」


私の言葉にラファエルは笑みを浮かべたまま固まり、自然とこの部屋の者全員がアルバートに視線を向けた。


「無いな」

「「「無いですね」」」

「出来ないと思う~」

「………ってジェラルド!! お前に言われたくねぇよ!!」


………ああ、いたんだジェラルド。

アマリリスは大丈夫なのだろうか。

ってか鍵はどうした……


「失礼だなぁ。俺はちゃんと教育受けたよぉ。きちんとした社交界ではちゃんと出来るもん」

「………信じられねぇ……」


アルバートが疑わしい顔を向ける中、私は再度ラファエルを見た。

ラファエルは少し考え、アルバートを見る。


「決めるのはアルバートだよ」


ラファエルの言葉にアルバートがラファエルに顔を向けた。


「………それしか方法がねぇなら、何処の誰とも知らない女よりフィーアに頼んでくれソフィア様!!」

「………私かい…」


ラファエルの顔を見ながら言う台詞じゃないと思うんだけど…


「………後には引けないわよ」

「どうにかしてくれと頼んだのは俺だ! あの女――いや、今後の女除けにそれしか道が無いのなら俺は従うぜ!!」

「………ぁぁ、そう……」


私はため息をついて、火精霊ホムラを呼び出した。


「最速でフィーアをこちらへ連れてきて。国境手続きは頼んでおく。すぐに国境を通れるように。だから、国境で1度フィーアを通過させて連れてきて」

『………分かった』


不満そうな火精霊ホムラを見送り、私はお兄様に国境警備兵士経由で入国管理に連絡が行くようにお願いするため、オーフェスを向かわせた。


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