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第340話 非常識が増えました②




私は記憶を引き出して、無礼令嬢はアイリーン・ケレイブ男爵令嬢だと判明した。

既に彼女の行動は、お兄様の影によってお父様とお母様の元へ、報告が行っているだろう。

私はまだお兄様の影に監視されているようだから。

チラッと天井を見たけれど、すぐに視線を元に戻した。


「アルバート、貴方ねぇ……」

「………すまねぇ……」

「ランドルフ国籍になっていることを知らせていなかったなんて…」


アルバートの両親がサンチェス国令嬢を見合い相手に選んだのは、アルバートがランドルフ国籍になっていることを知らせていなかったせいだと分かった。

サンチェス国籍のまま、私に仕えているのだと思っているそうだ。

アルバートの家は平民だけれど、兵士として部隊長まで上り詰め、兵士の中でも上位に位置するアルバートは貴族令嬢との婚姻に異論は出ない。

家名がないアルバートは貴族と籍を入れると、相手方の家名を名乗ることになる。

その為婚姻してしまえば、アルバートはサンチェス国に戻ることになるのだ。


「俺はソフィア様の騎士を止める意思はない。さっさと断ってくれって言ってトンズラしたから、見合い取りやめていると思っていたのに…」

「………追いかけて来ちゃってたねぇ…」


嫌な顔をして床に座り込むアルバートに、私は苦笑するしかない。


「すまないソフィア様……俺のせいで……」

「別にアルバートのせいじゃないでしょ。非常識なのは相手の令嬢」

「だね。どんな理由があっても、自国王女の自室に押し入るなど、刑罰物だよ」


ラファエルが私の隣に座って、私の腰に手を回してお茶を飲む。

………ここでくつろいでて良いのかしら……


「ここの貴族も非常識なの?」

「あれは規格外。あんな無作法されたのは初めてだよ。………確か彼女は来年に社交デビューするはずだけど」

「え? もっと年取っているのかと思ってた」

「ラファエル……」


思わず頬が引きつってしまった。

確かに綺麗な顔をして、年相応には見えなかったけれど…

本人の前で言わないでね……


「アルバートとの見合いを受けて、更に追いかけてきたってことは、アルバートの顔が好みだったか、強い男が好きなのか、年上好き?」

「止めてくれ!!」


ざぁっと真っ青になるアルバート。

性格はともかく、綺麗な顔の女はアルバートの好みではないのだろうか?


「俺は剣にしか興味が無いんだ! 女なんか寄ってきたら壊しそうだ! それに贈り物くれとか我が儘言うし! 邪魔しに来て訓練ばっかりしてないで構えとか!! 俺は煩わしいのは嫌だ!!」

「………ぁぁ……成る程……」


アルバートの主張に思わず納得してしまった。

まぁ、ストレートに言えば筋肉バカってところかな…

………っていうか、実感こもっているな…


「………昔、そうなったんだ?」

「ぐっ……!」


思わず聞くと、アルバートが言葉を詰まらせた。

昔はそういう子がいたんだぁ…


「で? フラれたんですね」

「うるせ!!」


オーフェスに言われ、アルバートが噛みついていく。

じゃれ合っている2人は置いておいてっと…


「カゲロウ」

「なぁにぃ…」

「追いかけられる?」

「………出来るけど…」


あ、嫌そうな顔。

天井から顔を出したカゲロウは如何にも嫌そうな――面倒くさそうな顔をしている。

久々の指名任務だけれど、気が乗らないらしい。

食事ほうしゅうの為なら意気揚々と行っていたのに。


「具合悪い?」

「ううん。姫様に非常識行為をした令嬢殺したくなるから、行きたくないなぁと」


………過激すぎる……

そんな性格じゃなかったはずなんだけど…

………私が怪我しすぎだからかな…


「じゃあライトに行ってもらう?」

「………ううん。行ってくる」


カゲロウが姿を消した。

………大丈夫かな…


「で? 相手は誰だったんです? どうせ我が儘な令嬢だったのでしょうけど」

「幼馴染みで平民だよ! 俺にその頃貴族との接点があると思うか!?」

「ああ、脳筋ですからね」

「否定はしないがお前に言われると腹が立つ!! 文武両道完璧男が!! でもそんなお前は女に興味が無いじゃないか! そんなお前にどうこう言われる筋合いはない!」

「ええ。女性は面倒くさいですから。そんな面倒を受けるぐらいなら、ソフィア様の面倒を見る方が簡単ですし」


………ん?

お茶を飲もうとしてカップに伸ばそうとした手が止まる。

2人の言い合いが終わるまで、高みの見物しようと思っていたのだけれど……


「………ちょっとオーフェス」

「はい? どうかしましたかソフィア様」

「どうかしたかじゃないよ。さり気なく私を引き合いに出して貶すのは止めてくれない?」

「貶してませんが?」

「いいや貶したよね?」


面倒な恋愛より、私の面倒を見る方が楽だと。

私はオーフェスの主なんですけれど?

王女なんですけれど?

その私の面倒を見るのが簡単って!

そもそも、私の守りをする騎士が面倒という言葉を、主に対して使う事自体があり得ないけれど!?


「どれだけオーフェスの中の私の位置低いのよ!?」

「生涯の主であり、唯一無二の存在です。私はソフィア様の盾であり剣です。ですから、その他の煩わしい者は必要ございません」

「じゃあ言い方もっと変えなさいよ!?」

「ソフィア様には飾らない言葉の方が、信頼関係が築けるでしょう?」


ニッコリ笑って言うな!!

くっ……

これが威厳がある主と、ない主の違いなのか…!?

仕方ない……私の今までの行動や言動のせいか……

………って割り切れるか!!


「もうちょっと主に対して言葉をオブラートに包もうか!?」

「言葉を繕っても、ソフィア様は言葉の裏を読むでしょう」

「………ぁぁ、確かに……」


思わず納得してしまった。


「………丸め込まれてるよソフィア…」


ボソッと隣のラファエルに突っ込まれ、ハッとすれば臣下達から生暖かい視線を向けられていた。

ガックリと肩を落としてしまった私の肩に、ポンッと慰めるようにラファエルが手を置いた。

それもこれもアルバートのせいだ。

キッとアルバートを睨むと、速攻で顔を背けられたのだった。


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