第334話 何を優先?
「ソフィア、遊びに行こう」
「………は?」
開口一番にラファエルに言われ、私は唖然としてしまった。
私の足はまだ治っていない。
車イス生活だ。
外出も禁止されていたはずだ。
他ならぬラファエルに。
その禁止した本人が私を何処に連れて行こうというのか。
「2人きりで」
「いや無理でしょ」
ニッコリ笑って言うラファエルに、私は思わず即突っ込んでしまった。
私の護衛達も一斉に首を横に振っている。
「やっぱり?」
「大体何処へ行くつもりなの? 私はこの足だから遠出は無理だよ? 精霊達もあんまり酷使したくないし」
「そうだね」
「それに私はみっちりとランドルフ国の勉強しなきゃでしょ?」
ひらひらと今日の朝届いたランドルフ国の本を揺らす。
勿論、ランドルフ国学園の物ではない。
おそらく王宮から持ってきた物だろう。
「あ、恨んでる?」
「恨んでない。でもやることやっちゃわないと…」
「ソフィアの口から出る言葉とは思えないけどね」
「………どういう意味…」
半目で睨むと、ラファエルは苦笑して私の前に座る。
「すぐに外に出たがるソフィアから、外出より勉強を優先する言葉が出るとはって事」
「教材が届いたのだからソレが優先でしょう? だって私はラファエルの将来の伴侶でランドルフ国王妃になる予定なのよ? ランドルフ国の勉強をちゃんとして学園の授業ぐらい余裕で出来なきゃ、民から認められないわよ」
私の言葉にラファエルは笑い、ソッと私の手から本を奪った。
そして私の後ろに回り込み、囁く。
「勉強は明日からでいいよ。それより遊びに行こう」
「………そこまでして行きたい所ってどこ?」
「行ってからのお楽しみ」
そう言ってラファエルは嬉しそうに私の車イスを押して、部屋から退室した。
慌てて私の護衛達がついてくる。
途中でお兄様とすれ違い、何故か仕事中のお兄様まで面白そうだとついてくることとなった。
………いや、仕事しろ…
私は訳の分からないまま、ラファエルに連れて行かれたのだった。
そして目的地だろう場所に着いたとき、私は思わず笑ってしまった。
「ここは……」
「俺も偶然見つけて、ここにソフィアを連れてきたかったんだ」
「いつの間にこんな所を?」
「ランドルフ国で見て、こっちも作ってみたいと思ってたんだ」
お兄様がヒョコッと私の前に出てくる。
私が驚いているのが面白いといった顔だ。
………なんかこっちは面白くない。
「ここで遊ぶってこと?」
「遊ぶというか、のんびりしようかなと」
「………それはまた……全然意味合いが違うんだけど……」
「ソフィアはのんびり散歩って言うより、遊ぶって言った方が食いつきがいいかと」
「………私は犬ですか……」
「イヌ?」
「あ、何でも無いよ」
ふるっと顔を横に振り、改めて周りを見渡した。
「あっちに行きたい」
「畏まりましたお姫様」
「………もぅ…」
茶化すラファエルに苦笑しながら、私は行きたい場所にラファエルに連れて行ってもらう。
「あ、お兄様はもう仕事に戻っていいよ」
「ソフィアが冷たいよ」
「仕事放り出してきてるでしょ?」
「大丈夫だよ。何処にソフィアのアイデアが落ちているか分からないから」
そんなゲームのアイテム拾うように言われても…
結局お兄様も共に来ることになった。
いつも『転生したらモブはモブでも王族でした』をお読みくださり、誠にありがとうございます。
実は5日前に事故に巻き込まれまして、医師から絶対安静を告げられ長時間起きあがってはいられない状態です…
現在頸髄捻挫の上半身むち打ち状態で、そのため小説を書くスピードが徐々に落ちております。
お読みくださっている読者様には申し訳ありませんが、暫く短い小説が続くかもしれません。
読者様には読み続けてくださっているお礼とお詫び申し上げます。
出来れば、これからも継読いただければ幸いです。
神野 響




