第332話 仲直り?
屋台用の道具を紙に書いてラファエルに渡し、ラファエルが後でお兄様に渡すことになった。
チラチラと私の顔色を窺ってくるラファエルに、私は怪訝な顔をしてしまった。
「な、なに…」
「………もう怒ってない?」
「え……最初から怒ってないけど…」
私が首を傾げると、ラファエルは困った顔をする。
………ぇ…
「いえ……ソフィア様、怒ってらっしゃいましたよ…」
「怒ってたねぇ」
「確実に」
「怒ってたな」
………私の護衛に1人もフォロー役がいないのは何故だ…
………日頃の行――いやいや、そんなはずはない。
私は日頃大人しくていい子だ………すみません調子乗りました。
「ごめんね」
「怒ってないよ」
「うん。でもごめんね」
………この場合どうしたらいいのだろうか…
私はもう気にしてないから、ラファエルも気にしないで欲しいのだけれど…
「………ん、いいよ」
………これでいいのだろうか…
不安だ…
「ありがとうソフィア」
あ、いいんだ…
良かった…
ラファエルがソファーに座り、ポンポンと隣を叩く。
私は車イスを操作してソファーに横付けし、腕をソファーにつくのと、ラファエルに脇の下を支えてもらう感じで移った。
「凄いね。小回りもきくんだ」
「アマリリスが凄いんだよ」
「だね。それだけに惜しいな」
「ん?」
「罪人じゃなかったら引き抜いたよ」
「………ぁぁ…」
やっぱりラファエルもそう思うよね…
アマリリスの再現能力は評価に値するだろう。
けれど、評価と罪は関係ない。
どんなに良くても、罪は消えない。
「まぁ、アマリリスがソフィアの好きな物、便利な物を生み出しても、俺は許す気は無いけど」
「………嫉妬はしても?」
「うん。だって俺はソフィアの喜ぶ顔を、自分で引き出したいからね」
「そういうもの?」
「そういうものだよ」
ラファエルが困ったように笑う。
私とラファエルの思いがすれ違っている……?
………う~ん…
「………あ、私がラファエルとナルサスが話してて、ラファエルが笑ってると嫌な気分になるのと一緒?」
「そうだよ。って、嫉妬してたのソフィア?」
「………まぁ……」
何故だろう。
物凄く認めたくなかったんだけど……
相手がナルサスだから?
………よく分からない。
「今度は俺がソフィアが喜びそうなもの作りたいな」
「ん~……じゃあ、ラファエルの新作甘味がいい!」
「甘味か。ソフィアが作ったプリンとか越えられるかな」
「越えるとかじゃなくて、私はラファエルの考えた甘味がいい。1番に食べさせてもらえるのが特別って感じで好き」
「分かった。頑張る」
ニッコリと笑ってくれるラファエル。
………ああ、もうその笑顔だけで満足しそうな私がいるのは内緒だ。
だってラファエルの甘味美味しいから食べたいもん。
「どんな果物使ったのがいい?」
「えっと……というより、色んなのが入った物がいいな」
「成る程ね」
ん~っとラファエルが考え込んでしまい、私はしまったと思う。
せっかくのラファエルとの時間を…
私が道具のことを書くために時間を費やした上に、今度はラファエルの時間が…
クイクイとラファエルの服を引くと、ん? とラファエルは私の方を向いてくれる。
「ラファエル、もうお話終わり?」
首を傾げてラファエルを見ると、ラファエルは速攻考えるのを止めてくれたらしい。
「何の話する?」
嬉しそうに私を見るラファエルに、ちょっと照れてしまう。
自分で言っておいて…
誤魔化すように私はラファエルに向かって口を開いたのだった。




