第33話 返品は不可ですか?
兄の名前を、レオンハルトからレオポルドに修正しました。
レオンハルト(ドイツ)とレオナルド(スペインなど)で
同一名にかかってしまうとご指摘いただき、ありがとうございました!
混乱させてしまいますが、すみません!!
私はパーティの時に着るドレスのリメイクをしていた。
王女なんだから買えよ、とは突っ込まないで!
着てないドレスいっぱいあるのよ!
管理はされているけれど、流行遅れとかのドレスも結構あってね…
着ないんだから売っちゃったらお金になるのに。
でも、王族ってそういうとこ見栄張るよね。
売ってるところなんて見られたくないとかなんとか。
貴族は売るんだから王族も売って良いと思うけど。
まぁ、侍女に行かせたらこんな豪華なドレス何処から盗んできた、とか言われるだろうし。
その時、王宮から王家の使いで、とかいえないよねぇ。
というわけで、古いドレスの飾りを今時のに変えているのです!
王族専属針子にやらせろよ、っていう突っ込みも要らないから!
私の唯一の得意分野取らないで!
刺繍とかリメイクは出来るのよ!!
「………姫。口より手を動かした方が良いかと」
ライトに突っ込まれる。
「………また出てた?」
「はい」
即答するライトに、私は苦笑いを返した。
「貴族は買い換えているのに何故姫は買って貰わないのですか」
「聞いてたんでしょ? ラファエルに買ってなんて言えないじゃない。現状のランドルフ国の事考えなさいよ」
「いえ、王や王妃や王子に」
「それこそダメよ。ラファエルが『なんで俺のは受け取らなくて他人のは受け取るんだ』ってなるでしょ」
「………ぁぁ」
ライトも納得したことだし、私はドレスの飾り付けを再開した。
「………その婚約者様の件でご報告が」
「何?」
「………宝石商へ何やら接触しているようです」
「宝石? 何かまた別の仕事見つけたんじゃないでしょうね!?」
「さぁ、そこまでは」
「ちょっ!? ちゃんと見ておいてって言ったじゃない!」
ライトは真面目なんだか不真面目なんだか時々分からなくなる。
「報告はしました。では」
ライトが天井に消える。
「………もぉ…」
取りあえず今は出掛けられないし。
ドレスを完成させるのが先ね。
私は集中し直してドレスに向き合った。
この時、何故ラファエルの所に行かなかったのか。
後で後悔することになるとは思ってもみなかった。
目の前にコトッと置かれた箱。
「………なに、これ」
私は無表情でニコニコ笑っているラファエルを見た。
「何って装飾品だよ。ソフィアの髪には赤が映えると思ってね」
「ちょっとーーー!!」
宝石商と接触していたのって、まさかの私への贈り物ですか!?
「受け取らないって言ったよね!?」
「ドレスは、でしょ」
「ぐっ!」
確かにドレスは要らないと言った。
言ったけれども!!
贅沢品は要らないと言ったら、普通は贈り物全般受け取らないって解釈するでしょ!?
「丁度ソフィアが手直ししてるドレスもワインレッドだし、合うと思うんだよね~」
「………」
婚約発表だからラファエルの瞳の色に似ているドレスを選択しましたけれども!!
って、どうでも良いよそんな事!!
「返品してきて!」
「嫌」
「即答!?」
「だって俺、ソフィアに何もお礼していない」
「………お礼?」
「サンチェス国からランドルフ国に来てくれたこと、民のために食べ物を配ってくれたこと、腐敗していた王家の王子を排除してくれたこと、新しい事業の提案をしてくれたこと。どれに対しても俺はソフィアにお礼が出来てない。俺の我が儘でランドルフ国に来て貰ったあげくに苦労かけてる」
「そんな事……」
「ないとは言わせない。ソフィアは本当はこの豊かな国で平和に暮らせていたのだから。それを俺が奪った」
違うのに。
そう言いたいのに…
ラファエルが作っている空気が重い…
「それなのに俺はソフィアに何も返せていない。贅沢したくないのは分かる。でも、ここでお金を落とさない理由にはならない。少しは使っていかないと民に回っていかない」
確かに「金は天下の回りもの」っていうし…
お金を持っている王族貴族がお金を使わないと、そのお金で民は生活できなくなる。
………分かっている…
でも……
「………いくら使ったの」
本当に高すぎる買い物は、ラファエルの首を絞めることになる。
「大丈夫。心配要らないから」
「………借金を増やして、とかなら絶対に受け取らないわよ」
「それも心配ない。ちゃんと俺の懐から出してる。借金なんてしたら、ソフィアにも負担がかかるじゃないか」
ラファエルの言葉も理解できるけど……
「………はぁ」
「贈り物でため息つくのってソフィアぐらいだよね」
「………でしょうね」
私の中身は庶民ですから。
贅沢は性に合わないっていうと、物欲がない人間って事になるのかもしれない。
でも、これはどうしようもない、か……
「………ありがと」
「うん」
困った風に笑うものの、私が受け取ったからかラファエルは笑顔だった。
中を見てみる。
………ぁ…
バレッタにリボンがついていて、色は赤。
宝石はワインレッドに似た色をしているけれど、吸い込まれるような透明感があり、不思議と目が奪われた。
「………付けられない…」
「いや、付けるために買ったからね!? しまい込まないでよ!?」
「だって落としたら嫌だし」
「簡単に落ちたりするようなものじゃないから!!」
そんな押し問答をしつつ、私は嬉しかったから次第に笑顔になった。
初めてのラファエルからの贈り物だ。
大切にしよう。
そう思った。




