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第329話 正直困るんです




「今日こそお願いします!!」


ガバッと目の前で頭を下げられた。

私はポカンと見、ラファエルは半目で見、お兄様はニコニコと笑っている。

お兄様は絶対この状況を楽しんでいるわね…


「無理ですわ」

「そこを何とかお願いします!!」

「お断り致します」

「私にも何か出来ることが!!」

「ありません」


私はニッコリ笑って拒絶した。

がーんっとショックを隠すことのない相手に、私は内心呆れてしまう。


「わたくしには必要最低限の人数がいれば良いのです。わたくしの為を思って下さるなら…」


チラッとお兄様を見る。

相変わらずニコニコと笑っている。


「その分お兄様に尽くして下さいませ。それがわたくしへの償いになりますから」

「ソフィア様…」

「お兄様は次期国王。当然わたくしの命より優先されます」

「ソフィア…」


ラファエルが私の腰を抱く。

ラファエルにとっては私の命が第一なんだろう。

それぐらい愛されてると既に分かっているけれど…

彼を説得させるのに使わせて。

私の言葉に、ガックリと肩を落とす兵士。

そう、今私の前にはあの暴言を私にくれた兵士がいる。

前回は勝手に帰っちゃったから、彼の迷惑行為をあれ以上受けなくてよかったのに…

また私が来ちゃったものだから、彼もまた私の所に来ちゃったのよね…

何処から情報――って、ロードの件で私の捜索指示が出されたから知っちゃうよねぇ……

………はぁ…


「君の負けだねぇ…」

「レオポルド様ぁ…」

「男が情けない顔をしても気持ち悪いだけだから」


………お兄様が笑顔で容赦なく…


「ソフィアが断るならそれに従え、と言ったよね。諦めな。即訓練に戻るように」

「………」

「私に2度発言させるつもりかい?」


動かない兵士にお兄様が凄むと、ビクッと身体を震わせ、兵士が慌てて敬礼をして出て行った。


「………ふぅ…」

「いやぁ、彼諦めてなかったんだね」

「他人事のように言わないで下さいお兄様。お兄様のせいですわよ」

「あはは。ごめんね。あの時凄い勢いで頼んでくるものだから、暑苦しくって」

「笑い事じゃないわよ…」


思わず頭を抱えてしまう。


「それにしても頑なだねぇ…」

「彼に傍にいられると困るのよ」

「ああ、彼は口が軽そうだし、影の選定に支障が出るか」


苦笑するお兄様にラファエルが反応した。


「レオポルド殿もソフィアの立場知ってるんだ」

「当たり前じゃないか。俺はあえて侍女達の不正を見逃す役目だし」

「………見逃す役目?」


キョトンとして首を傾げるラファエル。

………可愛いね…


「俺の評価が緩いと、必然的にサボって虚偽の申告でも大丈夫だと、ソフィアに対しての仕事ももっと手を抜きやすいでしょ」

「………成る程ね…」


苦笑するラファエル。

多分ラファエルにとっては、私が侍女に蔑ろにされていることが、許せないのだろうけれど。

サンチェス国にはサンチェス国の評価基準があるから。

王と王妃の絶対的な存在、完璧な仕事評価。

お兄様の簡易評価。

私の辛辣評価。

全ての試験を乗り越えられれば、侍女としての地位が確立される。

王家の者から侍女として雇っても問題ないと、太鼓判を押されるようなもの。

勿論使用人も。

国民の税から払われる給金なのだ。

使えない者は困る。

王宮に入った者達は見習い期間のため、3年は平民の飢えないくらいに暮らせるような、微々たる給金しか与えられない。

問題有りと判断されれば1年ごとの契約更新の際に、打ち切られ家に帰される。

その時初めて自分の仕事内容を評価された書類が突きつけられる。

評価内容は秘密厳守出来る者のみが見られるのだけれど、今までその書類を見られた者はいない。

………まぁ、当たり前だけど…

サボる人間の口は基本的に軽い。

自分は悪くないと、自分を正当化する者も多い。

納得いかない者は食い下がってくるが、一言「王と王妃が、貴女の王女に対する態度に激怒しております。これ以上いさせられません」と言えば真っ青になって大人しくなるらしい。

侍女長恐るべし……王と王妃の名を出すことに躊躇がありません…

まぁ…今の侍女長はお母様と同じ乳母に育てられた(お母様を育てた乳母の娘で)姉妹同然の人らしいから、比較的名を出しても支障ない人なのだろう…

勿論3年の試験を乗り越えても、1年ごとの評価は変わりなく継続される。

だからこそ私の評価が無くなれば、王宮が無法地帯にならないか心配だけれど…

お父様とお母様なら心配ないと思うけどね。


「………うちもそうしようかな」


………おっと。

ラファエルがランドルフ国王宮のシステムに組み込もうとし始めてるよ……

………いいけどね、別に……

詳しい評価の仕方をラファエルがお兄様に聞いているのを見ながら、私はお茶に口を付けた。


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