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第318話 繋がりました




ざわりと空気が動いた気がした。

けれど頭が重く、私は目を暫く開けられなかった。

………なんだろう…

風邪でも引いたのだろうか…


『主!!』


ハッと私は目を開いた。

物凄く近くで究極精霊みんなの必死な声が聞こえた。


「………は……?」


私は目の前に広がる光景に、暫く唖然とした。

見たこともない部屋にいる。

何処…ここ…

私はどうやら寝かされているようで、取りあえずベッドから起き上がろうとして、手足が思うように動かないことに気付く。


「………な、に……これ……」


私の両手足首には重量感ある枷。

そして枷に鎖が付けられている。

起き上がれることは出来る。

けれど、鎖は四方のベッドの脚と繋がれているらしく、ベッドから離れることは出来ないだろう。

ひんやりとした空気に身震いする。

部屋は頑丈なコンクリートのような壁で囲まれ、唯一の出入り口の扉は鉄で出来ていそうだ。

家具と呼べるものはこのベッドしかない。


『申し訳ございません、油断しました』

「………油断…?」

『主が王太子と少し離れていた間に、気配を感じぬ者に薬を嗅がされたのです。我々も力を使う前に眠らされたようで…』


一旦私の思考回路は止まってしまったようだ。

口を開くも声が出ない。

落ち着け…

私は声を出すのを諦め、心の声に切り替える。


『………究極精霊あなた達が……眠らされた……?』

『申し訳ございません』

『ちょっと待って。謝る前に究極精霊あなた達が眠らされる事ってありえるの!?』

『………分かりません。けれど、我々も気付けば主と共にここにいた、としか…』


サァッと私は自分の顔色が真っ青になっていくことを、何処か他人事のように感じていた。

頭が付いていかない…

どうして?

通常の精霊はともかく、究極精霊は人にどうこうできるものではないし、まして契約している精霊を眠らすなんて…

そんな事が、可能なの……?

ハッと私は顔を上げた。


『…さっき……気配を感じぬ者って言った…?』

『はい』

『………やられた…』

『主…?』


レオナルドが手に入れたという薬が関係しているだろう。

ラファエル達の言葉を信じれば、私を好いているだろう者からの手紙の主がその薬を手に入れていたとしたら……?

気配を感じられず精霊の目さえ誤魔化し、誰にも見つけられない人間なら私を誘拐するなど、お手の物だろう。

隣にいても気付かないという可能性も捨てられない。


『この鎖、外せる…?』

『………申し訳ございません…』


精霊が外せない…

ということは、精霊の力が通用しない呪具の一種なのだろうか…


『私から出て助けを呼びに行ける?』

『………主がそれを付けている限り、無理のようです…』


………もしかして精霊封じの道具……?

八方塞がりだ。

力一杯引いても、ちぎれるものでもないだろう。

ベッドの下を覗き込めば、鎖の先の輪をベッドの脚にはめているだけに見えた。

けれど、手も足も拘束されているため、ベッドから降りられない。

よって、ベッドから降りてベッドを持ち上げて鎖の輪を脚から外すことも不可能。

それにこのベッドを私1人で持ち上げるなど出来ないだろう。

扉と同じく鉄で出来ているとみた。

風精霊フウが出れないと風で持ち上げることも出来ないだろうし。

木精霊ジュリで植物を下から生やして持ち上げることも出来ない。

………あれ……?


『………鎖……?』

『主…?』


私の頭の中で、ある人物が1人思い描かれた。

サンチェス国の人間で、私に好意があるらしい男に1人、心当たりがある――こともない。

私は思い描いた人物をすぐさま頭から消した。

ないない。

本来精霊は王以外に見えない者だった事だし、精霊に対するこんな対策が出来るわけがない。

人外の力が存在する事自体、王以外は知らないはずだ。

それに私が精霊と契約していることも知らないはず。

よって、あの人物が知るはずもない。

もしそうだとして、今まで大人しくしていた方がありえない。

………そう、思うのに……

何故だろう…

1度思い描いてしまえば、その人物以外見当もつかない…

………どうか…

ガチャンと重い音が部屋に響き、ぎぃぃと音を立てて唯一の扉が開かれていく。

………私は怖くてそちらを見られなかった。


「やぁソフィア。寂しかったかい? 悪かったね。迎えが遅くなってしまって」


………どうか……思い描いていた人物ではありませんように…

そう願っていたけれど、期待は最悪な形で裏切られてしまった。


「でも酷いじゃないか。いくら寂しかったといっても、私を待たずに他の男のモノになってしまっているなんて」


コツコツと男の足音がこちらへ近づいてくる。

サァッと血の気が引いていく。

聞こえてきた声は間違いなく、想像していた人物だった。

私はよく知っていた。

その男の――性格を。


『………い、やだ……』


それ以上近づいてきて欲しくない。


『………たす、けて……ラファ………エル……』


男の手が私の肩に置かれた。


「愛しいソフィア。さぁ、この私と婚約し直してくれるよね? 王弟の息子であるこの私と、ね……」


肩に置かれた手に力が徐々に加えられていき、じわじわと痛みを与えられる。

私を誘拐した犯人、そして怪しい薬やこの精霊の力を封じる道具を作ったのは、お父様の弟であるアーク・ディエルゴ(元サンチェス)の息子、ロード・ディエルゴだと確信した。


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