第315話 実はオタクだったようです
昼休みになって、皆で食堂に移動した。
皆で食べるのなら、とフィーアも呼んだ。
6人でわいわい、ではないけれどそれなりに楽しい食事時間となる。
「ラファエル様は複数の精霊と契約していると聞きましたが!」
「そうだね」
「前にロペス侯爵の屋敷でソフィア様の精霊を見ましたが、まさかラファエル様も!」
「まぁ、同数は」
「すごいです!」
もっぱらラファエルに興奮気味で話すスティーヴンに、皆苦笑いなのだけれど。
そんなに精霊好きとは知らなかった。
「み、見せていただいても!?」
スティーヴンの勢いに、私の目に見えている精霊達は一斉に首を横に振っている。
勿論、ラファエルの中にいる精霊は私には見えないのだけれど、契約していない精霊は何処にでもいるから。
そしてスティーヴンの精霊だった子も、思いっきり首を横に振っている。
………何か、よくないことが起こりそうだ…
スティーヴンの契約精霊だった子まで拒否するのは可笑しいし…
『あ――す、スティーヴンは、精霊を見ると、眺めるだけではなく能力を見せてくれとせがんだり、撫で回したり、スティーヴン自身に力を使ってくれとか、い、色々危ないんです!!』
元スティーヴン契約精霊が顔を真っ青にして、私に訴えてくる。
………まさかの精霊オタクだった……
色々と危ない人だ…
能力を見るだけなら良いけれど、自分に力を使わせるだなんて…
Mなのかしら……
「申し訳ないけれど、お断りだね」
「何故です!?」
「精霊は見世物じゃないし、そもそも精霊は俺の友人だ。友人に無理矢理力を使ってもらうのは違うでしょ?」
ラファエルには他の精霊達は見えないようだけれど、ラファエルの契約精霊が拒否したのだろう。
断ってくれて助かる。
私が口を出さなくても大丈夫そうだ。
2人のやり取りを聞きながら食事を続ける。
「そうですわよスティーヴン。ラファエル様と精霊を困らせてはいけないわ」
「だけど、こんな機会滅多にないんだぞ。見るぐらい」
「それで終わりそうにないでしょう? 絶対に力を見せてくれって言うに決まっています。ラファエル様にも精霊にも失礼ですわ」
さすがマーガレット。
スティーヴンの性格をよく分かっているようだ。
うんうんと2人の後ろで頷く元契約精霊とその他の精霊。
「くそぉ……」
悔しがるスティーヴン。
その目はまだ諦めていない。
「もう俺はラファエル様に力をお貸しできないんだぞ? 精霊との契約は解除したし」
ピクッと反応してしまいそうになって、慌てて自分を落ち着かせる。
「何かあっても手伝えない悔しさが分かるか?」
「それとこれとは話が別ですわよ」
「だから、手伝えないって事は共に戦えないって事! ということは、ラファエル様の精霊の勇姿をこの目で見られないって事だぞ!? つまり、俺は生涯目にすることはないということだ!」
ラファエルと話せる機会もそうそうないということで、今見せてくれ、という理屈に持っていきたいのか…
「………なんだか怖いですね…」
「あんまり聞かない方が良さそうよ」
フィーアがスティーヴンの勢いに引き、ローズがそれに返す。
「共にって言っても、前回スティーヴン殿が一緒に来ても、結局ソフィア1人で解決したようなものだよね。スティーヴン殿がまだ契約していたとしても、連れて行かないよ」
「うっ……」
………ラファエル、意外と正面から辛口ね…
もう終わったことだけれど、彼らにも精霊と共に戦ってもらえる機会を、作った方がよかったかもしれない。
あれが、多分最後だったと思うから。
彼らの共同作業。
「俺もソフィアに役立たずって言われないように、頑張ってるけれどね」
あれ?
こっちに何故か飛び火してきた!?
「わたくしの方がラファエル様に捨てられないように、頑張っているんですけれど…」
「俺がソフィアを捨てる事なんてあるはずないでしょ。まだ自信持ってないの? 俺がソフィアを愛していることを」
「そ、そちらではありませんわ!」
人のいる場所でも平気で言えるラファエルを、ある意味尊敬するけれども!!
「ラファエル様のお役に立たない。そう言われてお飾りの婚約者になるのは嫌です、という意味です」
「ああ、そっち? そっちも心配しなくていいよ。ソフィアはどちらの意味でも俺にとって必要不可欠な存在だよ」
ニッコリ笑うのはいいのだけれど、こんな所で腰を抱かないで…
恥ずかしい…
「相変わらず仲がよろしいですわね」
ニッコリ笑ってマーガレットに言われ、頬が赤くなってしまう。
「ラファエル様!」
「スティーヴン、しつこいですわ」
笑ったままマーガレットがバッサリ切る。
………日常茶飯事だったのかしら。
少し頬が引きつるけれど、私は笑顔を保ち続けた。




