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第31話 設定が狂っていたわけではないようです




「姫」


ラファエルとお茶しているとライトが戻ってきた。


「あ、おかえり」

「………なんで普通に影が姿現してるの…」


ジト目でラファエルがライトを見る。


「サンチェス国なので」

「どういう理屈……」

「姫、聞いてきました」


ライトがラファエルを無視して書類を渡してくる。

苦笑しながら受け取り、内容を確認する。

読んでいくと、ある一点に書かれている物に目を止めた。


「………へぇ」

「何かありましたか?」

「いや、なんでもない。ご苦労様。後で食事ほうしゅうタップリ渡すね」

「と、いうことは姫に有意義な情報を渡せたということですね」

「あ、ずるい! 姫様俺もなんかやる~!」


ライトがニヤリと笑い、ライトの言葉にカゲロウが天井から逆さで上半身を出しながら不満を言ってくる。


「後でね。二人とも下がっていいよ」

「むぅ……」

「はい」


二人は天井に姿を消した。

………あのジャンプ力欲しい……

私も影として転生してたら、あの身体能力最初から持てたのだろうか……

………でも、私みたいに接する主人なら苦痛だったかも……

同じ様な性格ってなんか嫌だよね。


「………ソフィア?」

「はい?」

「一体何を調べてるのかなぁ?」


あ、守銭奴の顔。

……失礼…

でも、目がキラキラしてるからね…


「ラファエルには関係ないことだよ? ローズに聞かされていた件でちょっとね」


私の言葉にラファエルがいつもの顔に戻った。

………と、思ったけど…


「関係ないことなんてないでしょ。俺はソフィアの夫だよ?」

「お…!? ま、まだ婚約者!!」

「一緒だよ」

「違うからね!? その解釈可笑しいから!!」

「可笑しくないよ。それともソフィアは俺と結婚しないの?」


う……!

その子犬のような目をして見ないで!!

可愛いから!!

私の方が可笑しいと思ってしまうから!!


「………ラファエルって、私をからかうの楽しんでない……?」

「からかってないよ。ソフィアが毎朝俺の顔見て悶えてるから、この顔に弱いのかなって」


確信犯!!

弱いって分かっててその顔で私を説得しようとしないで!!

頷かせようとしないで!!

………って!


「寝ぼけてて覚えてないんじゃないの!?」

「俺がソフィアの事で忘れる出来事なんてないよ。寝ぼけてても、上手く頭が回らなくても、記憶力には自信があるよ」


………すぐさま消して欲しい…


「で?」

「ぇ…ぁ~……ローズがエイブラム男爵令嬢の迷惑行為をなんとかしたいって手紙に書いてあったでしょ?」

「ああ……」

「今日街で見かけてね? ちょっと街でもやらかしているみたいだから、お兄様の影が何か知っているかと思って聞いてもらってたのよ」

「ふぅん? それで内容にソフィアに都合が良いことでも書いてあったんだ?」

「ええ」


ライトの報告書にはこうあった。

要約すると……




・街では毎日男に声をかけ、言葉巧みに男を誘惑。


・散々貢がせ、家名は名乗らず去って行く。


・男は利用されたことにも気づかず、アマリリスの虜となる。


・街で複数の男が接触した場合、今日見た光景と同じ事になる。


・レオナルド元王子は毎日のようにアマリリスと接触するため、上記の事になり、毎日が騒動。


・アマリリスが一人になると、毎度同じ言葉を吐く。


『ヒロインの私がモテないわけないでしょ』


『バカ王子が位を持たない平民になるなんて、あり得ない!』


『どうしてモブ王女があそこで出張ってくるのよ! 学園でも目障りだったけど! あの女とローズだけよ! 思い通りに動かないの! キャラのくせに!!』


『攻略対象外のラファエルがモブ女を選ぶなんてあり得ない! 私を絶対に選ばせてやる!』




「………ふっ」


思わず失笑してしまうでしょ。

多分ライト達……この世界の者達には意味不明な言葉ばかり。

でも、私は転生者。

『モブ』も『ヒロイン』も『キャラ』も『攻略対象外』も全部理解できる。

間違いない。

アマリリスは転生者。

私と同じだ。

あのパーティの時も学園の時も、天然女を演じていただけ。

………私もまだまだだなぁ。

あの演技に騙されていた。

でも、断罪したのは私だ。

あのパーティで少しでもボロを出してくれたら気づいたのに。

社交パーティで好き勝手、街で好き勝手させないように根回しできたのに。

けれどこれで理由は分かった。

転生ヒロインの獲物は――攻略対象外のイケメン王子。

狙い目は――


「ん?」


未婚のラファエル。

レオポルドは結婚している為、手は出せないだろう。

なにより接触出来ない立場の人間だし。

学園ならともかく、卒業している王子に接触するのは至難の業。

しかも弟のレオナルドをフってるしね。

じゃあラファエルもじゃないか、と思われるだろうけど――

チラッと机に置かれている手紙を見る。

この手紙は帰ってきて置かれてるのに気づいたもの。

お茶しながら読んでたんだけど……

王妃がパーティ開催するらしい……

私の帰還とラファエルとの婚約お披露目と称した……

貴族階級なら出席可能な、招待状なしのパーティが……

ここで絶対来るでしょう。

玉の輿狙いなら……

………招待状作られたら作られたでアマリリスは来れないから良いんだけどね…

また別のパーティでアマリリスが出席するかどうか調べる必要あるから面倒だし。

言いたいことは二つあるけど……


一つ目は…

なんで王家主催のパーティに招待状を作らない!?

危ないでしょ!!

制限かけないと良からぬ事を企んでいる者が入ってくるかもでしょ!?


もう一つは、

なんで王家にパーティを追い出された令嬢がパーティ出まくってるのよ!!

可笑しいでしょ!?

普通ならローズより社交界に顔出せない立場でしょうよ!!

ヒロイン補正いい加減にしなよ!?


………と、全力で叫びたい……


二つ目のはローズの手紙を読んだ時に叫びたかったけどね…

ランドルフ国で思いっきり叫べないし。

まぁ、サンチェス国でもだけど…

今機会があったから心の中で叫んでみた。


「ソフィア、どうした?」

「ラファエル様」


ニッコリと笑ってラファエルを見た。

様をつけた事でムッとしてたけど。


「ちょっとお願い聞いて貰えます?」


両手を合わせて首をちょっと傾けてみた。


「………内容による」


………くそぉ。

やっぱり私の顔では一発で頷かせられないらしい……

悲しいかな…

ガックリと項垂れながら、私はラファエルにお願いを口にしたのだった。


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