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第303話 王家規約執行権限証!?




「そうだ、ソフィア。今日で謹慎終わりでしょ。親父から伝言」

「………ぇ……罰のアイデアは出したはずでしょ…?」

「ああ、そうじゃないよ。謹慎が終わったら告げていいって言われてるんだよ」


そう言ってお兄様は自分のポケットを探る。

なんだろう…


「はいこれ」


お兄様が出してきたのは、手の平サイズの宝石箱。

蓋の部分にサンチェス国国紋が彫られている豪華な物。


「こんな小さな箱に、細かい国紋をよく彫刻できるよね…」

「………ソフィア、気にして欲しいのはそこじゃない」

「あ、ごめんなさい……これは?」

「開けたら分かるんじゃない?」


そう言って手渡され、私は壊れ物を扱うかのように丁寧に、尚且つ慎重に蓋を開けた。

そこにはサンチェス国の国紋がペンダントトップになったネックレスだった。

………で?

思わず首を傾げてしまった。

そんな私を見て、お兄様は苦笑する。


「王家規約執行権限証だよ」

「………へ!?」

「本来国紋を身につけられるのは、王の直系でも正式パーティの正装の時、それも衣類に刺繍している物のみ。国紋が入った装飾品など到底身につけられやしない。常に身につけられる――身につけているのは王のみ」

「それは知っていますが…」

「で、これは王家規約で決められている事を決定する事が出来る者、王の許可を頂いており、王代行として王に許可を事前に取らなくても王家規約を執行できる立場の人間だと分からせる物なんだ」


チャリッとお兄様が先程のポケットとは逆のポケットから取り出したのは、国紋が彫られている懐中時計だった。


「………そのお兄様の懐中時計はそういう事だったの!?」

「そういう事だったの」

「………お兄様が王になるつもりだから、勝手に身につけているのかと…もう自分は王のつもりなんだと……」

「お前は普段俺をどんな人間だと思っているんだ…つもりじゃなくて、なるけどね。取りあえず急ぎで作らせたんだよ。正式な懐中時計は国紋が彫られ次第渡すよ」

「え…私にも懐中時計を…?」


てっきりこのネックレスがそうなのかと…


「それは出来上がるまでの繋ぎ。それに身につけるならずっとそれはマズいでしょ」

「………?」


首を傾げると、苦笑される。


「これ、ラファエル殿が見たら何て言うかな?」

「………ぁ……」

「いくら国紋とはいえ、ラファエル殿以外の男が贈った物だからね」

「………男って……お兄様からだよ…?」

「それで許容するような男?」

「………」


お兄様に笑って聞かれ、私は否定できなかった。

………悲しいことに…


「懐中時計が正式なら、このペンダントトップの国紋は…」

「それは元々祖母が使っていた物らしい。ソフィアが産まれる前に亡くなったから、知らないのも無理は無いけれど」

「じゃあ、お祖母様は社交の時に付けられていたと?」


ネックレスにソッと触れる。

冷たい金属の感触がする。

けれど、王しか国紋の装飾品を付けられないはず…


「そ。本来は王以外は刺繍だけなんだけど、祖父の代から装飾品も作られるようになったんだ。まぁ、王は王家規約など変更できる唯一の立場だからね。王が変える、付け加える、と決めたなら国政はともかく王家規約はそれだけで変わる」


なるほど……それは知らなかった…


「………それは、怖いね」

「そうだね。だからこそ王は間違えられないけれど」


お兄様は少し目を細める。

いつになく真面目な顔だ。

プレッシャーを感じたのだろうか?


「っと、それは置いておいて…とにかく、ソフィアには王家規約の執行できる立場になったんだ。罪人の聴取を取ることももう違法じゃないよ」

「………ぁ、そういえば…でも、どうして…」

「これからもサンチェス国民がランドルフ国で罪を犯さない、なんて保証はないだろう?」

「………そういう事ですか…」


お兄様の言葉で、何故私にも権限を渡すのかの意味を知った。

そりゃ向こうで私が行えば、お父様とお兄様の仕事は減るよね。

それなら私が断る理由はない。


「分かりました。向こうで執行する際は、お父様やお兄様に許可を貰わずとも、事後報告でいいんですよね?」

「そうだよ。但し、きちんと王族として恥じない、正しい執行が条件だぞ」

「勿論です」


私はネックレスを取り、自分の首に付けた。


「………謹んでお受け致します」

「ん。こっちもこれからのソフィアのアイデア期待してるよ」

「ですから少しはご自分で考えて下さいと…」


国のことが分かっているのは私よりお兄様。

それはこれからも変わることがないのに。


「ソフィアは一生サンチェス国王族だ。こっちも手伝う義務がある」

「威張って言うことですか…そこだけ聞かれたら情けない王太子になりますよ」

「何を言う。俺は良く出来た格好いい王太子で民には人気者だ」

「………自分で言いますか」


呆れながら、私はネックレスが入っていた宝石箱を、そっと引き出しにしまった。

………でも、良くお父様が許したわね…

あのお父様が…

明日の朝に謹慎解かれて部屋から出られるし、お父様に会いに行こう。


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