第30話 お転婆代償は支払いません
「おかえり」
………バタンッ!!
部屋にバルコニーから戻れば、満面の笑みのラファエルに迎えられました。
………あ、思わずガラスドア閉めちゃった。
カゲロウ、私を庭に下ろしてくれないかな……
ガチャ
「なんで閉めるのかな?」
「………ぇっと……なんとなく…」
バルコニーにラファエルが出てくる。
「何処行ってたの」
「………ちょっとそこまで?」
「ふ~ん。俺に隠し事?」
自分だってしてるくせに!!
………とは言えません。
目が笑ってないから。
「浮気?」
「してません!!」
私はラファエルの体を押して部屋に入る。
もぉ……
「街に行って自分の店の状況見てきただけ」
………嘘だけど…
本当は寄る間もなく帰って来ちゃった。
だって、アマリリスがねぇ……
「店?」
「………ぁ、言ってなかったっけ…? 私が昔立案した店なの。平民向けだから大した利益はないんだけどね……」
「どんなの?」
………あ…
ラファエルの目が輝いています。
これは、自国に取り入れられるかも、って目ですね…
「甘味の店と研究が一段落したら教える。ラファエル働き過ぎ」
私が指摘すると、目を見開かれる。
「もぅ……サンチェス国に来てる間は、新しいこと禁止!! ラファエル倒れる!」
「倒れないよ。だから」
「教えません!」
まったくもぉ…
こっちの心配も聞いて欲しい…
「ラファエルの言うこと私いつも聞いてるでしょ! ラファエルも聞いてよ!」
「………ソフィア、サンチェス国に来てるから強気になってる?」
「………そうかも……」
そういえば、この手に関して私何か言ったことないな…
「嬉しいな。俺のこと心配してくれてるんだ。ありがと」
「う……」
裏表がない笑顔……
まぶしい!!
「嬉しいんだけどね?」
「………ぇ?」
「バルコニーから帰ってくるってどういう事?」
「………ぁ……」
スルーしてくれないんだ。
「お転婆って、前に言ってたけど……こういう事?」
「………」
思わず視線を反らしてしまった。
「………もしかして、ランドルフ国でもやってた?」
「まさか!」
「………じゃあ、どうやってあの時街に出たの?」
「あの時?」
「食べ物配ったとき」
「………ぁ……」
思わずギクリとしてしまった。
「………ふぅん?」
バレた。
あわあわしていると、ラファエルに腕を掴まれる。
「………ソフィアには鎖が必要?」
「要りません!!」
危ない趣味止めてくれる!?
「ランドルフ国で緊急以外出るわけないでしょ!? 勝手知ったる自国じゃないんだから!!」
「………サンチェス国ならやるんだ……」
「慣れてるからね」
「じゃあランドルフ国も慣れたらやるんじゃない?」
「そんな事してどうするのよ……ランドルフ国民殆ど私の顔知っちゃったんだよ?」
「………ぁぁ、それもそうか……」
サンチェス国はともかく、ランドルフ国の民に直接食べ物を配った私。
民にとっては命の恩人的ポジションだろうし、絶対に私の顔は忘れないと思うんだよね……
サンチェス国みたいに民の格好をしても、絶対にバレる……
「でも、絶対に安全じゃないんだから、サンチェス国でも止めてよね?」
「嫌です」
「………」
………ぁ…
しまった!!
何拒否ってるの私!?
頷いておけば穏便に済ませたのに!!
「………ソフィア?」
「だ、だって、自分で目で見た方が自国の発展になるアイデアとか出るのよ!」
リメイク店だって、食べ物の店ばっかりだなぁ~とか思いながら歩いてたらピンと閃いたんだもん!!
無意識に日本の知識引き出してたらしいアイデアだよね。
「そのアイデアもらおうか」
「ダメ! ラファエルは休むのも仕事です!!」
「チッ」
「舌打ちしない!!」
ノってポロッと言うと思わないでよね!
私の今日の任務はラファエルを休ませることだな…
「じゃあ俺を心配させたって事で添い寝してくれる?」
「しません!!」
そんな代償支払いません!!
なんでラファエルがいないかどうか確認しないでガラスドア開けちゃったかなぁ…
「くせ者で捕らえられるよ…」
「じゃあ俺の部屋で」
「だめです」
「………ソフィアがサンチェス国に帰ってきてから冷たい……」
「冷たくありません。お茶なら付き合うよ?」
「頼んでくる!!」
瞬時に出て行くラファエルに苦笑する。
自分の慣れ親しんだ部屋だからだろうか?
ランドルフ国の部屋にいたときよりリラックスしてラファエルと話せた。
今のうちに沢山話せたら良いなぁ…
ランドルフ国ではラファエル仕事が忙しいから、気軽に話せないし…
ラファエルが戻ってくるのを待ちながら、私は微笑んだ。




