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第297話 やっぱフォローいるでしょ ―Re side―




「失礼致します」


執務室の扉がノックされ、ソフィーが入室してきた。


「どうしたの」

「姫様がお戻りになられました」

「そう。レオポルド殿、ソフィアの部屋に行く?」

「行くよ」


ラファエル殿に言われ、俺は腰を上げた。

………さて、俺の可愛い妹は消耗してないかな?

レオナルドの聴取を取ったのはソフィアだと聞き、俺は心配だったんだ。

ラファエル殿に続き、俺はソフィアの部屋へと向かう。

すると、丁度部屋の扉の前でソフィアとばったり出会った。


「………お兄様、まだおられたのですね」

「ソフィアが冷たいよ!?」


開口一番、呆れた風に見られた。

別にサボってるわけじゃないし!!

っていうか、こっちの制服似合っているな。

男の制服はどんなんだろう。

格好よかったら着てみたい。


「ソフィアに聞きたいことがあって待ってたんだよ」

「そうですか」


スッと視線を外してソフィアが部屋の扉を開けて入って行った。

………まだ臣下を使うことを覚えてないな…

扉を開けようとした騎士が固まっている。

内心苦笑して、ひらっと俺は騎士に手で合図した。

騎士は頭を下げ、元の立ち位置に戻る。

………こいつは確かサンチェス国の兵士だった奴だな。

そんな事を思いつつ、ラファエル殿と共に部屋に入った。

今度はちゃんと騎士が扉を閉めた。


「ソフィア、今日の授業は大丈夫だった?」

「はい」


ラファエル殿の言葉に返しながら、ソフィアは寝室へと入って行く。

ソフィーも続いて扉を閉める。

着替えるのを待つか、とソファーに座って待つ。


「学園の授業って何があるんだ?」

「サンチェス国と違うのは機械学と、技術学。それと廃止したけど精霊学」

「機械学は学んでみたいな。技術学はこっちに渡してくれたやつとはまた違うんだろう?」

「うん。渡したやつの3倍ぐらいはページがあるかな」

「へぇ」


サンチェス国の学園に取り入れた機械技術学は、サンチェス国に卸してもらっている機械だけのものだから薄っぺらいのは仕方ないけれど。


「それに精霊学かぁ…精霊に協力してもらって各国の精霊書みたいの作って、王だけ読めたら便利だよなぁ…」

「他国に能力知られたらマズいでしょ」

「だよね~」


冗談めかしてくすくす笑っていると、ソフィアが出てきた。


「お待たせしましたお兄様。私に話とは…」

「ああ、出てこなくていいよ。そっちで話そう」

「レオポルド殿! いくら兄妹だからといっても、寝室に2人きりは!」

「ソフィーが立会だよ」


ラファエル殿に慌てて止められ、俺はちゃんと2人きりにはならないと言う。

だがサンチェス国の人間だけ。


「じゃ、ちょっと待っててね~」


軽く言いながら、俺はソフィアの背を押し寝室へ戻らせた。


「………どうしたんですかお兄様…」

「………分かってるだろう…」


俺は隠すことなくため息をつく。

ソフィアは分かっている。

敬語なのがその証拠だ。

ソフィーに手で扉を閉めるように示し、ソフィーが扉を閉めた。

念の為に扉から離れる。

ソフィーは扉の前で待機だ。


「………何故お前が聴取したんだ…」

「………ラファエルにさせるわけにはいかないでしょう…」

「そりゃそうだが、お前の影にやらせりゃよかったんだ。面倒くさい」

「………」


沈黙するソフィアにもう一度ため息をつき、腰に手を当てる。


「自分の行いで、俺が帰らないことぐらい気付いていただろう」

「………はい」


共通規約に、罪人はその罪人が籍を置いている国の王族が裁くことになっている。

従って、今回の件でサンチェス国民のレオナルドは、サンチェス国の王族が裁く事になるのは当然。

だが、聴取自体は王族がするものではない。

する時もあるが、基本的に王族が信用している臣下にやらせるのだ。

他国の人間が罪人に聴取することは違法行為となる。

ラファエル殿やルイスが出来ないのは当然。

騎士らにも聴取は出来ない。

サンチェス国民だった兵士も、既にランドルフ国民になっているから出来ない。

これにより、この国でレオナルドに聴取出来る人物は限られるのだが…


「ライト、カゲロウ、イヴ、ダークの中の誰かにやらせなかったのは何故だ」

「申し訳ございません。レオナルドの非常識な行動に冷静さを失っておりました」


素直にソフィアが頭を下げた。

………それだけなら、ラファエル殿に聞かれないようにする必要はないと思われるだろう。

けれど、これからの事を聞かれてはマズいのだ。


「お前、王族――王女だからと許容されると思うなよ」

「はい」

「――いつ来れる」

「サンチェス国からの命令だとラファエルに言えば、すぐにでも行けると思います」

「………分かった。一応告げようか?」

「規則ですから。お手数をおかけして申し訳ございませんが、お願いします」


スッとソフィアは頭を上げ、俺を真っ直ぐに見つめてくる。


「ソフィア・サンチェス。罪人を裁く権利を持たぬ王族にも関わらず罪人を聴取、及び情報の秘匿義務違反、その他諸々サンチェス国法違反により、サンチェス国への出頭を命ずる」

「畏まりました」


サンチェス国法違反。

正確には王家規則だから、サンチェス国民も知らない事柄だけどね。

サンチェス国独自の法律により、以下の違反をソフィアは犯した。


罪人を裁く権利を持っているのは、サンチェス国王、サンチェス国王太子、サンチェス国宰相だ。

この3人が信頼する臣下を罪人の聴取に向かわせる。

聴取した事が偽れないようにそれぞれ1人ずつ出し、最低3人。

一字一句正確に3人に伝えられるように。

これは誤った情報により、誤った処罰をしないようにするためだ。

そこに王女が入っていない以上、ソフィアも対象外。

ただ今回の場合、ランドルフ国に滞在していたサンチェス国王族であるソフィアが、早期解決・時間短縮の為に王または王太子代理として、自分の臣下に聴取を取らせに行くのは、超法規的処置で有りだった。

これも国法に記載されている。


次に情報の秘匿義務。

サンチェス国民罪人に関する聴取した情報を、他国の人間に漏らさないこと。

罪状は公開義務があるけれど。

これも聴取の場にラファエル殿とランドルフ国籍の騎士がいた以上、違反したとみなされる。

ただ、これも事前に王に伝えてもいいかと許可を貰っていたら有りだった。

事後報告でも“王に伝えれば”有り。

だが、今回“ラファエル殿から”俺へと伝わったために、違反となる。

ラファエル殿は知らないし、兵士やましてや騎士が知るはずもないから、サンチェス国籍のソフィアが聴取し、傍聴することになんの疑問もなかったんだろうな…

“聴取”をランドルフ国の人間がしたわけじゃないから…


今回レオナルドが服用した薬を捜索する必要があったから、ソフィアが王に伝え、許可が出たらラファエル殿に伝えて捜索するという手順が必要だった。

手順を色々すっ飛ばしてしまってるからなぁ…

多分、ソフィアもレオナルドが罪を犯したから考える暇もなかったのだろう。

………普段こんな事ない――いや、あっちでも時々あったか…行き当たりばったりが…

自覚あるんだから俺から伝える前に、弁解すれば良かったものの…

………いや、出来ないか。

アマリリス元男爵令嬢の事があるから。

後で気付いても、何も言わず普段通りに過ごしていただろうしね…


「分かった。ラファエル殿には俺から言う。暫くソフィアをサンチェス国に連れて行く必要があると。詳しくは言わないよ。サンチェス国法の事だから、他国の人間には漏らせない。………ないとは思うけど、ソフィアからもサンチェス国法についてはラファエル殿に今後も伝えないように。王家の規則のこと」

「はい。宜しくお願い致します」


ソフィアがまた頭を下げたのを見て、俺はソフィアの頭を撫で、寝室を後にした。

………う~ん…可愛い妹を説教するのはやっぱり辛いなぁ…

必要なことだけど…ソフィアも罪人聴取権限持たせられないか親父に頼んでみようかなぁ。

王女――女だから、って排除するのは違うと思うんだよなぁ…

これからもソフィアはこっちで過ごすし、結婚してもソフィア・サンチェスで親父――王の直系なのは変わりないし、生涯サンチェス国法の対象になる唯一の王家の娘だ。

サンチェス国民がこれからも罪犯さない保証ないし…権限あった方が何気に便利だよな。

時間を無駄にしないし……説得には時間かかるだろうけど、悪くない案だよな…?

親父面倒くさいけど…う~ん…さっさと権限渡してくれたら話が早いけど…

少し憂鬱になりながら、ラファエル殿に伝えるために後頭部を掻きながら歩いた。


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