第294話 通常運転は安心しま…す?
すみません。
今回少し筆休めで短いです。
「さぁ、ソフィア! 勉強しよう!」
キラキラした笑顔でラファエルに言われた。
問答無用で王宮図書館に連れて来られてから。
「………ぇ?」
何故そんなに嬉しそうなのだろうか。
机の上には本が重ねられており、意気揚々とペラペラ本を捲っている。
取りあえず向かい側に座ろうと椅子に手をかけた。
「ソフィア、違うよこっち」
ラファエルは自分の隣の椅子を引き、ポンポンと叩く。
「………」
顔が必死だ…
なんか怖い…
大人しく隣に座る。
「何からやる? 機械学? 技術学? 歴史学? 植物学?」
「植物学はサンチェス国とほぼ一緒だからなんとかなるよ」
「じゃあ機械学からやろうか。機械学を理解しないと技術学はちょっと難しいからね」
「ん。宜しくお願いします」
2人で本を覗き込み、ラファエルの説明を頭に叩き込む。
どうせならノートも用意して欲しかったけど…
…まぁ、部屋で復習する王女っていうのも間抜けだから出来ないけど…
「………そういえばソフィア」
「………ん?」
ある程度本の内容に理解が出来たとき、ラファエルがふと私を見た。
「ソフィアの考え込む姿も可愛いよね」
「………真面目に教えて欲しいのだけれど…」
「教えてるけど、ソフィアの悩んでいる顔も可愛くて」
「………」
通常運転だなぁっと私は苦笑する。
「ローズ嬢の謹慎は明日解けるから、明日は一緒に行くといいよ」
「………ラファエルは行けないの?」
「レオポルド殿がこちらに来ると連絡があったから出迎える。ソフィアは学園に行っていいよ」
「いなくていいの?」
「いいよ」
………なんだかモヤッとしたけれど、頷く。
私いてもやることなさそうだし…
「あ…」
「え?」
「だからって、俺以外の男と過ごさないでよ!?」
………本当に通常運転でなによりです…
「誰が私に寄ってくるっていうの…」
「スティーヴンとか」
「………スティーヴンはマーガレット大好き人間でしょうに…」
「それもそうか。………いやでも、俺の知らない時間をソフィアと過ごすのは…」
「はいはい」
キリのいいところだったので、パタンと本を閉じる。
そして未だブツブツ言っているラファエルの手を取り、図書館から出た。
頭を使いすぎたから、甘い物が食べたい。
「今日のお茶の時間には、どんな甘味が出るのかな?」
「ん? 今日のソフィアは甘い物をご所望?」
首を傾げるラファエルが可愛い…
「ちょっと脳に糖分が欲しくて」
「じゃあ、俺が作ってこようか?」
「それも嬉しいけど、アマリリスが作ってくれてると思うから」
途端にラファエルがムッとする。
………今度は何…
「最近のソフィアの胃袋をアマリリスが掴みすぎて憎い…」
………臣下に、しかも女にまで嫉妬…
変わらないラファエルに感心すると同時に呆れる。
嬉しいのは嬉しいのだけれど。
疑われているわけじゃないから心配はないのだけれど。
………なんだろう、この言い表せない感情は。
「じゃあ、明日はラファエルの甘味ね」
「任せて」
途端にキリッといい顔をするラファエルに、私は笑う。
私が先導していたけれど、今度はラファエルが私を先導するように手を引かれる。
そのまま私達は王宮の花畑へと向かった。




