第292話 ちょっと寂しいです
誤字報告ありがとうございます!
私はソフィーの言葉を頭で反芻しては、嘘だ、本当か、と自問自答していた。
だ、だだだだって!
ルイスとローズと一緒にいてもそんな素振り1つも見せなかったのに!
2人ともいつも通りだったもの!!
それに……どうしてローズは私にだけ秘密にしてたのかなぁ…
友達じゃなかったの…?
「遅くなってごめん。ソフィア、相談が――ソフィア?」
ルイスとなら賛成だし、私がローズをルイスから引き離すことなどしないのに。
信用なかったのかな?
それはそれで複雑なんだけど。
「ソフィア」
大体、ローズは大人すぎるのよ!
同じ歳なのに!
レオナルドとの婚約がいかに苦痛だったか痛いほど分かるよ!?
ルイスみたいな大人に惹かれるのは分かるよ!
恋するのは自由だし、ルイスなら納得だよ!
恥ずかしがることじゃないし!
「ソフィア!」
「ひやぁ!?」
突然ガッと肩を掴まれて驚いた。
「ら、ラファエル!? い、いつの間に…」
「さっきからいたよ。どうしたの」
「い、いや…ちょっと考え事…」
「………そう」
ラファエルが肩を離してため息をついた。
気付かなかった私が悪いけど、ため息は酷くない?
「考え事の最中に悪いけど、ちょっと相談があるんだけど」
「何?」
「ルイス経由のローズ嬢の相談なんだけどね」
………ローズから?
何で直接相談してこないんだろう…
「罪人の姿絵があるよね?」
「え? あ、うん。それが?」
「それを罪の大小に関わらず、姿絵を簡単に作成するいい方法がないかな? 今回みたいな事が起こらないようにしたいんだけど」
………ぁぁ、レオナルドの姿絵なんてなかったわよね。
でも、それってさ…
「………姿絵なんて作らなくてもよくなるでしょ」
「え?」
「国境のシステム変えるじゃない。罪人の指紋を採って登録しておくことになったでしょ。指紋は1人1人違うし、偽ることなど出来ない。姿絵なんて、顔が変わってたら意味がないわ。特に女性は化粧でいくらでも誤魔化せる」
「あ、そっか…」
ラファエルは思い出したように頷いた。
「だから、これから罪人の指紋を罪の大小に関わらず採っておく。精霊も協力してくれるし、出来上がったら完璧になると思うよ」
「そうだね。ありがとうソフィア」
………それでも不安なら、顔認証システムも作るといいと思うけど…顔の骨格とかで判断するから化粧などで印象を変えても判断できるだろう。
けれど、そんな事言えばまたラファエルの仕事が増えるから言わない。
ラファエルが隣に腰掛けてくる。
「………ねぇソフィア」
「ん?」
「………考えてた事ってレオナルドの事?」
「………は?」
ラファエルの言葉に疑問符が大量に出てきて首を傾げる。
何故レオナルド?
もう私がレオナルド自身に対してすることはない。
私がすべきは薬とやらを探し出して成分を分析、それをサンチェス国へと報告することだけだ。
レオナルド自身の処理はサンチェス国王に任せることになるし。
「違うけど…」
「………そう、ならいいよ」
今度は何やら安堵のため息をついているようで…
………なんだろう?
「………ぁ、もしかして、私がラファエル以外の男の事を考えているとでも思った?」
「うん」
………即答されました。
変わらないなぁラファエルは。
私が別の男を気にするのを面白くないと考えるのは。
「例え考えても、そういう意味じゃないよ?」
「分かってるよ。ソフィアは俺が大好きでしょ」
「っ!?」
にこぉっといい笑顔で見てくるラファエル。
久々に顔が真っ赤になる。
「………だよね?」
………自信満々に言い切っておいて、すぐに自信なさげに聞いてこないで…
私の今までの行動のせいだと思うけれども…
「………ん」
コクンと頷くと、ラファエルは安心したような顔をする。
「でも、面白くないものは面白くないよ。ソフィアは俺で毎日、1日中頭いっぱいにしておいてもらいたいし」
「1日中!?」
そ、それはちょっと無理かなぁ…!
だって、勉強もあるし!
「そうだよ? で、ソフィアはさっき俺のことじゃない何を考えていたのかな?」
………結局それが聞きたかっただけなんじゃ…
私は苦笑し、唇に人差し指を付ける。
「内緒」
「えー!?」
………だってラファエルは知ってたんだし。
ルイスとローズの事。
だから、私の気持ちは理解できないと思う。
蚊帳の外だったのは間違いなくて。
1人だけ知らされてなかった寂しい気持ちなど、分からないだろう。
「そんなことよりラファエル」
「そんなこと!?」
「お腹空いたんだけど、緊急のお仕事ないなら、ラファエルと一緒にご飯食べたいなぁ」
「ソフィー! アマリリスをさっさと呼び戻して準備させろ! ジェラルドが離さなければヒューバートが引き剥がせ!」
私の言葉にすぐさま反応したラファエルに言われた2人は、苦笑しながら頭を下げて出て行った。




