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第289話 いろいろ予想外です




翌日の学園終了後、私とラファエルはアマリリスとジェラルド、そしてヒューバート達護衛組と合流し、城下街へと散らばった。


「今日は出てくるかしら…」

「精霊が探し出せてないからな……やっぱり学園に行かずに朝から探すべきだったか?」

「復帰して2日目なのに休むわけにはいかないでしょ。また何かあったのかって学園から国中に広まったら、王族の信用がなくなっちゃう」

「まぁ、そんな事になったらマズいね…」


ラファエルと共にアマリリスから数メートル距離をあけて、腕を組んで後をつけていた。


「そうですわよ。ようやくこの国が整ってきているというのに、余計な不安要素を出す事は悪手ですわ」

「だよね…」

「分かったよ。ソフィアの言うとおりに……」


ラファエルの言葉が途切れ、私も私とラファエルの声以外の第3者の声に一瞬思考が止まる。

ギギッと顔を横に向けてみると…


「それにしても、あの人が姿を現せば簡単なのですがね…」


頬に手を当ててため息をついている人物…

それはここにはいないはずの人で…


「ローズ!? なんでここにいるの!?」

「わたくしも無関係ではありませんから。一緒に来て当然でしょう?」

「いやいやいやいや!! ローズはか弱い乙女なのよ!? 何かあったらどうするの!? 怪我でもしたらローズの婚約者にも申し訳なくなるじゃない!」


私はすぐにローズを帰そうと、腕を掴む。


「あいにく、傷が残ろうが彼は私を手放さないわよ」

「そんなの分からないじゃない! とにかく! ローズは身を守れないのだから――」

「きゃぁ!?」


ローズを説得しようとしていれば、前方からアマリリスの悲鳴が聞こえた。

慌ててアマリリスの方を見ると、ジェラルドがアマリリスを庇い、前に出ていた。

まさか…

ラファエル達と共に走り寄ると、ロープでぐるぐる巻きにされたレオナルドが地面に転がっていた。

………うそぉん……

レオナルド……ここまで単純な男だったの…?

よ、よかった…

レオナルド以外の王子がサンチェス国に生まれていて……

と、思わず考えてしまった。

レオナルドが王になってしまったら、サンチェス国がなくなるところだった…


「アマリリス! やっと見つけたんだ! 俺と一緒にサンチェス国へ帰ろう! 大丈夫だ! 俺が守るから! ランドルフ国で扱き使われているんだろう!? 可哀想に…」


………確かに、レオナルドの言葉は間違ってないな。

アマリリスを扱き使っていることは事実だ。

罪を犯した彼女を、私の侍女見習いにし、私の世話をさせていることには違いない。


「私は可哀想ではないわ! 今私は幸せだもの!」

「そう思わされているだけだ! サンチェス国へ戻ろう! 俺と幸せに暮らそう!」

「残念だけど渡さないよぉ? アマリリスは俺のつがいだから」

「アマリリス、さぁ帰ろう」

「ねぇ、聞いてるぅ??」


レオナルドは目の前のジェラルドを無視して、アマリリスだけを見つめている。

………これ、本当にストーカーっぽいよね。

とりあえず…ここは目立つし、王宮へ連れて行って……


「アマリリス~」

「え……」

「「「あ……」」」


突然ジェラルドがアマリリスの腰に腕を回して引き寄せ、その唇を奪っていた。

アマリリスとレオナルドは目を見開いて固まり、私達3人は唖然と見つめる。


「………う~ん……ジェラルドにああいう黙らせ方を教えたのは一体誰だろう…」

「ソフィア、そういう問題じゃないでしょう? アマリリスの脳がキャパオーバーになって、思考停止してますわよ。真っ赤になって」


思わず呟いた言葉に、ローズが突っ込んできた。

そうだった。

アマリリスが可哀想な状態になっていたんだ。

………絶対初めてだったよね?


「ぷはっ……これ息できないね? する前は息吸っとかなきゃ」

「………鼻で息するんだよ。息止めてする口づけは子供の口づけだよ」


あ、ラファエルが方法教えちゃってる。

止めたげて。

アマリリスの為に…


「そうなの? やってみる!」

「や、止めてくれる!? 許可なくキスなんてしないでよ!! んうっ!?」


ほら、ジェラルドが調子乗ってまたしちゃってるから。

アマリリスは今度は抵抗して、ジェラルドの腕の中で暴れてる。


「と、とにかく…アルバート!」

「ここに」


物陰からアルバートが出てくる。


「レオナルドを連れて行って。ヒューバートとオーフェスはその周り固めて。ないとは思うけど、レオナルドを奪いに来る者がいない可能性がないわけじゃないから」

「おう」

「「はい」」


ヒューバートとオーフェスも出てきて、共にレオナルドを回収していった。


「ジェラルド、アマリリスを離しなさい」

「え~…」


やっとアマリリスの唇を解放するも、ジェラルドはアマリリスを抱きしめたまま離さない。

………これはあれか?

ジェラルドはアマリリスが好きなのだろうか?

彼は気に入ったものに執着するから。

その分、飽きたら未練なくすぐさまポイだけれど。

物はいいけど、人間でそれは止めてよ?


「た、助けてください姫様ぁ!」


真っ赤になってさらに涙目になったアマリリスに願われる。

あ、ごめん。


「ここですることではないわ。王宮でやりなさい」

「分かったぁ」

「姫様!?」


アマリリスはジェラルドに脇に抱えられ、ジェラルドは小走りで王宮へと向かった。


「………ソフィア、あれは助けてないよ」

「だってジェラルドが離さないから仕方ないじゃない。ここで強制的に引き離すわけにはいかないし」


人目もあるから、力尽くで引き離せば白い目で見られちゃうし…


「でもあれじゃあアマリリスに別の意味で傷がついたことになるよ?」

「アマリリスは一生私に仕えるって言ったし、結婚にも興味なくなってた。ジェラルドのおかげで女としての幸せを思い出したなら、それもいいかもしれないと思って」

「………まぁ、アマリリスはソフィアの臣下だから、俺がどうこう言うことじゃないかもだけど…」


苦笑するラファエルに、私は笑う。


「最悪私の命令で籍入れさせてもいいわね…貴族だったのだから政略結婚はそれなりに覚悟してたでしょうし。それに曲がりなりにもジェラルドは公爵家の人間だし、侍女になる際は何処かの貴族階級に養女に入れなきゃならないしね。でも罪人を受け入れる家はないだろうから、手っ取り早くジェラルドと籍入れればいいわ」

「………それ、公爵家的にはいいの……?」

「ジェラルドには相続権ないし、兵士になった時点で好きにしろって言われているらしいから。あの性格だからあらゆる事を諦めたらしいわ」

「あ、そう……公爵家が何も言わないなら……いいのか?」


そんな事を話しながら、私達も王宮へと戻っていった。

さぁて……お兄様に連絡して引き取ってもらう手続きしなきゃな…


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