第281話 意外とお似合い?
「アマリリス~。お菓子ちょうだい」
「え!? さっき食べてたよね!?」
「あれだけじゃ足りない~」
私の部屋の隅で交わされる会話。
頬杖ついてジッと見つめる。
「………ねぇソフィー。あれ、どうなってるの?」
「さぁ…」
ソフィーと2人で首を傾げる。
「ちょうだいちょうだいちょうだい!」
「お腹壊すよ!」
ジェラルドがアマリリスの見習い服のスカートを引いている。
そして必死にアマリリスがスカートを押さえてる。
………うん、さすがにそれはやめたげてジェラルド…
「ケチ!!」
「ケチ!?」
「俺の番でしょ! 融通してくれてもいいでしょ!」
「恋人って言ってって言ってるでしょ!? ………ぁ」
ハッとアマリリスが私の方を見た。
………恋人?
ジェラルドとアマリリスが?
「………へぇ?」
ニヤッとしてしまい、何故かアマリリスか真っ青になっていた。
何故?
「あ、えっと、こ、これは違うんです!!」
「何が?」
「ぅっ……」
今度は真っ赤になってる。
何がどうなって恋人になったのかしら。
首を傾げると、スッと後ろに気配が…
ボソッと耳元でライトが事情を説明してくれる。
………ぁぁ、そう…
手を振ると、気配が消える。
アマリリスが狙われないようにナルサスを付けたはずが……
逆にナルサスがアマリリスをターゲットにするきっかけを作ってしまうとは…
………うん、ナルサスはクビ。
「ジェラルド、アマリリスの番になったんだ」
「うん!」
「姫様まで番って言わないで下さい!!」
正反対の反応。
面白い。
「じゃあジェラルドはアマリリスと出来るだけ一緒にいてね。私のこと以外にアマリリスの時間を使わせないように」
「分かった~!」
「姫様!?」
「アマリリスは私の侍女見習いでしょ。私の時間を無駄に消費しないように。お茶の時間とか遅れたら許さないから」
「ぁ……は、はい!!」
ハッとしたように、アマリリスは頭を下げた。
「じゃ、お茶よろしく」
「畏まりました」
「ジェラルドはお菓子食べすぎ。夕食の後まで我慢」
「えー!?」
アマリリスが隣室(侍女待機室)に駆け込んでいき、ジェラルドが頬を膨らませる。
「お菓子の摂取しすぎはダメ」
「ソフィア様のケチ!」
「はいはい。これ以上駄々こねるのなら今後一切鬼ごっこなし」
「我慢する!」
「ん。いいこ」
………本当にジェラルドは成人男性なんだろうか…
小学生並みだな…
「ソフィア様! 鬼ごっこいつする!?」
「明日の朝、日課の時間ならいいよ」
「わーい!」
飛び跳ねるジェラルドに苦笑しながら、私はアマリリスが煎れたお茶に口を付けた。
………それにしてもアマリリスとジェラルドか。
………意外といいカップルかも…?
それにしても…
アマリリスはジェラルドが公爵家の人間だと知ってるのかしら…?
知ってしまったら…自分が過去にしていた事で、ジェラルドを遠ざけたりしないかな?
侍女避けに最適だろうジェラルドを、遠ざけなきゃいいけど…
私の騎士で侍女避けに出来るのは、ジェラルドとアルバートだ。
ジェラルドは子供っぽくて、公爵家でも侍女たちに不人気。
アルバートは筋肉バカなので、これまた侍女たちに不人気なのだ。
オーフェスはダメだ。
顔が良いし、頭もいいし、何よりオーフェスも公爵家の人間で、優秀な彼は人気者だから。
あ、ジェラルドと兄弟ではないよ。
まぁ、ジェラルドが駄目だったら、今度はアルバートを付ければいいか。




