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第280話 番契約? ―A side―




「持とうかぁ?」


いきなり後ろから声をかけられ、ビクッと肩が震えた。

前しか見てなかったし、人がいるなんて思ってもいなかった。

ハッとして後ろを振り向く。

そこには後頭部で両手を組み、キョトンとしている……誰だったっけ…


「それともタオル持ってくる? せっかく綺麗に拭いてたけど、君の服から雫落ちてるよ」

「………ぁ…」


水をかけられて、全身濡れ鼠。

そのまま歩けば当然、服が吸いきれていない水が落ちる。


「でもここで待たせたらさっきの侍女達戻ってくるかもだし…ん~」


………さっきの、見られてたんだ…


「こ、この事は!」

「え? 聞かれたら答えるけど?」

「っ……」


当然だ。

主の問いには答えなければならない。

それが従者。


「取りあえず移動しようか。ちゃんとバケツ持っててよ~?」

「………へ!?」


私は一瞬にして背と膝裏を掬い取られた。


「レッツゴー!」

「ちょ、まっ、きゃぁあ!?」


私は男に抱えられ、王宮の通路を体験したことのない早さで移動したのだった。

そして辿り着いた先は……

カポンッ


「………何でだろう」


私は強制的に連れられ、今、温泉に入っている。

何故か男が私を連れてきたのは温泉街。

今誰も温泉街に来ることがないからと言って、何故私は貴族専用の温泉に入っているのだろうか…

しかも…


「いいお湯だねぇ」


………ここは混浴じゃないんだけどな!?

必死にタオルで身体を隠す。


「どうしたの?」


キョトンとした顔で見ないで!!

この人、女と男の区別ついてるの!?

純粋な目で見ないで欲しい!!

何故私が必死に身体を隠すかの意味も分かっていないようだった。


「………ぁ、そっか。君、女の子?」

「………へ!?」


指を差し、今気付いたという風に問いかけてくる。

………っていうか、侍女服スカートだし!

気付けよ!!


「ごめん、女の子って男に肌を見せられないんだよね? 見せるのはつがいだけだっけ」

「伴侶と言って!?」


つがいって、動物じゃないんだから!!


「えっと……見ちゃったから、俺、君とつがいにならないといけないの?」

「そんな事ないから!!」

「そうなの?」


首を傾げて不思議そうにしないで!!


「でも、君はナルサスと侍女の間に無理矢理立たされているって状態だよね?」

「………ぇ…」


今まで誰にも気付いてもらえなかったのに…

何で…


「あれ、違う? 無理矢理じゃないなら…」

「無理矢理です!! 公害に無理矢理女除けに使われてるし! 理不尽に侍女達から嫌がらせ受けてるし! 姫様のお世話の邪魔なんです!!」

「邪魔なの? 全員消していい?」

「け……!?」


け、消す!?

ちょっと、何なのこの人!?

そんな簡単に人を…!


「だって、最終的にはソフィア様の邪魔って事でしょ? そんな事になったらソフィア様に遊んでもらえなくなるじゃないか。だから消した方が良いよ」

「け、消しちゃダメ!!」

「ダメなの?」

「ダメ!」

「ん~……じゃあ、虫除けしたらいいんだ」

「虫……」


さっきから微妙に会話がかみ合っていないような気がするのは気のせいだろうか…


「そう。君が俺を使って、群がる虫追い払ったらいいよ」

「え……」

「俺、ソフィア様の騎士として結構侍女に顔覚えられてるし。俺が暇なとき一緒にいてあげるよ。そうすればソフィア様のお世話に支障でないんでしょ?」

「でも…」


姫様の騎士なのは知っているけれど、他の人を私の問題に巻き込むなんて…


「あれ? 嫌? あ、王宮外そとつがいいるの? じゃあ俺が一緒だとダメだね」

「い、いえ…そんな人いませんが…」

「じゃあ落ち着くまで俺とつがいって事にすればいいよ」

「………せ、せめて恋人って言って下さい…」


私は断る言葉も理由も浮かばず、結局甘えることにする。

私が大事なのは姫様であって、公害や侍女に邪魔されるのは非情に不愉快なのだ。

あの人達が絡んだら絡んだだけ、私の仕事が止まり、姫様のお世話が出来なくなる。

公害や侍女に、姫様のお世話を邪魔する権利があるはずもない。


「じゃあ宜しく。アマリリス」

「はい……えっと…」

「ジェラルドだよ。ジェラルド・ギャレット」


ニコッと笑って名乗られた。

………って!?


「………ギャレット!? サンチェス国公爵家の方ですか!?」


こ、これ、絶対に姫様の逆鱗に触れちゃうんじゃ…

私、あれだけ貴族の男に対して好き勝手してたし…

でも…OKしちゃったし…

今更断ったら、侍女全て消されちゃうかもしれない…

よし…姫様には知られない方向で!!

………無理かなぁ…


「そうだけど、俺ギャレット家の第五子だから相続権はないし~。勉強嫌いだし~。ソフィア様と遊んでいる方が楽しいし~」

「………は、はぁ……」

「でも、ランドルフ国の人間にはギャレットって名前だけででも、結構牽制出来ると思うよ~」


………男と女のことには疎くても、そういう所は分かってるのね…


つがいなら揃いなのいるんでしょ? ソフィア様とラファエル様が付けてるユビワとかいる?」

「い、いりません!!」

「そう?」

「ご、豪華な物を持ってこられても、それも嫉妬の対象になるんです!」

「そっかぁ。面倒くさいね女の子って」


軽く言われる…

………まぁ、いいか。

恋人がいるって分かれば、公害のちょっかいはなくなるだろう。

そして侍女の幼稚なイジメもなくなるはず。

私の選択は間違っていない、はず。

そっと私は息を吐いた。


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