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第28話 サンチェス国お転婆王女復活です




ドアをそぉっと開ける。

右見て、左見て……

よし!

誰もいない!!

レオポルドが待機してたり、ラファエルが待機してたり一切ない。

ここではラファエルは私の部屋に潜り込めないからなぁ…

ドアの前に兵士がいるし。

ライトもカゲロウも、ランドルフ国では自国じゃないからって、ラファエルをくせ者として捕らえないし。

………因みにレオポルドをくせ者として捕らえたことはある。

カサブランカと喧嘩して夜中に私の部屋に逃走してきた際に。

兵士がいるのに確認した時、誰もいないと言ったのは? とは突っ込まないでね。

確認したのはバルコニーの下だから。

………って一人で言っててもむなしいけど。


「よい…っしょ」


バルコニーの手すりからシーツを垂らして……


「………姫…」


はい、呆れた顔しないライト!


「いってきま~す」

「行ってきます、ではありません!! そんなところから何処行くんですか!!」

「え? 店」


普通に返すと、ライトが顔を手で覆って上に顔を向けた。


「姫様店行くの? 俺も行く~」

「うん、おいで」

「カゲロウ!! お前は止める立場だろう! 姫! お転婆も卒業して下さいと――って! 話の途中で行かないで下さい!!」


ライトの説教が長いので、シューッとシーツを掴んで庭園に降りたけど、ライトはバッと飛び降りて来て前を塞ぐ。

………影ずるい。

その身体能力を私にもちょうだい。

なんて無い物ねだりはしても無駄。

カゲロウが私の部屋のバルコニーの手すりに括り付けていたシーツを回収。

部屋に置いて、ガラスドアを閉めて降りてくる。


「さぁ、カゲロウもライトもレッツゴー!」

「おー!」

「………この二人は…」


呆れているけど結局ライトも城下町の住民と同じ素材の服を着て素顔を見せているから、何だかんだ言ってもついてくるんだから。

だったら最初から説教無しにして欲しいんだけどね~。

ライトの説教を、カゲロウに抱き上げられて高速移動しながら聞かされる。

BGMを聞いているみたいにいつも聞き流している。

いやぁ、自分の足で歩いたら城下に行くまでに太陽がてっぺんになるんだよ。

悲しいよね、王女の運動不足の足ってすぐ疲れるから。

移動は大抵馬車だし。

貴族のお嬢様とかも、きっと運動能力ないんだよね?

騎士のお姉さんとかの体力分けて欲しい。

そうこうしていると、城下町の入り口に到着。

さすがにここからは自分の足だ。

カゲロウに下ろしてもらうと、ライトの説教も終わる。


「さて、と」

「何をするのですか。店と言っても色々ありますよ」

「ランドルフ国で出来る物のヒントをね」

「物、ですか…象徴的過ぎます……」

「………多分、ラファエルって、かなりいろんな事考えてるでしょ。ランドルフ国技術で出来ること」


ライトをチラ見するとスッと視線を反らされる。

彼には常にラファエルの動きを探ってもらってるからね。

色々知ってるでしょ。

別にラファエルが怪しい動きをするからって事じゃない。

私に彼は仕事内容を教えてくれないんだもの。

そりゃ、私に苦労をかけたくないって事なんだろうけど。

彼は多分、物凄く私に罪悪感を持っている。

ランドルフ国の現状で、私を迎え入れることなど本当に嫌だったはずだ。

でも、それでも私を好きだからと、苦労かけると分かっていても手を伸ばしてくれた。

そして私は実際に民の為に食を用意し、ラファエルの手助けをした。

それにより、更に彼の罪悪感を大きくしてしまったのだろう。

苦労をかけている、と。

私を手放すまいと必死に仕事を、考え得る出来るだけのことをラファエルはしている。

それは、彼の顔を見れば分かる。

綺麗な顔にクマが出来ていて、それが消えることがなくなった。

………私にいなくなられるのが怖いのだろう。

だから私を囲い込む。

………でもねぇ……


「………私を深窓の令嬢にするなっつの…」

「………姫、言葉遣い」

「あら、ごめんなさい」


私は元々日本人だ。

貴族令嬢みたいに部屋でのんびりなんてこと、性に合わない。

むしろ、民のために動くことが、疲労はあるけど充実していると感じる。

民のために、なによりラファエルの為に、私は動きたい。

やれることがあるならやる。

それが私だ。

彼が私を見つけてくれたのだから、彼のために出来ることをする。

そんなの、苦労でも何でもない。

だから心配しなくても私から離れることなどないから、考えなくて良いのに…


「………嫉妬する必要なんてないのに……」


他者を牽制するのは、私が他に気を移さないか心配だから。

私に自分を見続けさせようとするのは、繋ぎ止められる程の物を自分が持っていないと思っているから。

多分……ラファエルは自信がないのだろう。

私は純粋な王家血筋で。

彼は王家と平民の血筋で。

頑張ってもそこはどうしようもないと。

………サンチェス国王もその辺は気にしないはず。

王が気にするのは、優秀か、そうでないか。

優秀な者なら何が何でも自分の方に取り入れようとする人。

だから、王はラファエルを試している。

………影に調べさせたのなら当然、ラファエルがあの国で一番優秀で民のための王族と認識している。

けれど、王が懸念しているのは……

ラファエルの若さ、だと思う。

ラファエルはまだ18だ。

一国を背負うのは早すぎる。

通常は王太子が20後半から30前半での世代交代のベスト年齢。

王からの政務の教育が丁度終了する時期。

でもランドルフ国の王があれだし、国法も大分変更しないと……ランドルフ国自体がなくなるかもしれない。

ランドルフ国の機械技術は優れている。

それを無くされると困る。

今サンチェス国で使用している機械も、ランドルフ国の技術士がいないと修理も出来ない。

永久に動き続ける機械など、あり得ない。

だからなんとかして、ラファエルの力に少しでもなれれば。


「………はぁ。婚約者様は、テイラー国交渉用に新しい機械を開発中です」

「………凄いわねライト。私の思考お見通し?」

「………さっきから全部口に出てますからね……姫……」

「………いやん…」


どうやら全て脳内と思っていた思考が口からダダ漏れだったらしい。

………こういうの恥ずかしいよね……


「………因みに何処から?」

「サンチェス国王もその辺は気にしないはず、からです」

「………そう」


良かった。

日本人云々は口に出してなかったようだ。

………危ない。


「その途中に姫から甘味の提案を受け、開発と同時に貴族用平民用の甘味の材料費を極力抑えつつ、利益重視の計算を昨日の夜も遅くまでしていました。その為、今日は爆睡しています。ランドルフ国から離れたせいもあるでしょうけど」

「そっか……貴族用は出来るだけ高額にしたいわよね……あまり安いと逆に買わないから……」

「………それは婚約者様と相談して下さい」

「あ、ごめん」


………ということは、だ。


「………テイラー国との交渉に、うちの店の物も入れてもらおうかしら…」

「姫の店、ということは――」

「リメイク品をアレンジするのなんか、サンチェス国の者より、テイラー国の者でしょ。最先端ファッション国がリメイク品に手を出せば……貴族も買うでしょ」


使い古しならまだしも、一度だけ使った物なら傷や色あせなんてあるはずがない。

デザインが似ていても、ついている宝石や装飾品が別の物から入れ替えられたら、別の物に見える。

サンチェス国の人間がそれをするよりテイラー国の人間がすれば……


「………安物の装飾品でもあの国の人間なら豪華に見せられる」

「………姫」


完全に詐欺師の台詞だったわ……

反省……

でも、これはいける。

候補としてライトにメモをとってもらう。


「さて、アイデア探しにレッツゴー!」

「おー!」

「………はぁ」


カゲロウは難しい話にあさっての方向を見てたが、私が動き出すとノリノリでついてくる。

それに対してライトがため息をつきながらついてくる。

諦めなさいライト。

だってこれが私なんだもん。

私は笑って城下町に足を踏み入れた。


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