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第279話 私を巻き込まないで ―A side―




王宮内を歩いているときだった。


「あ、あの!」

「な、ナルサス殿、今度一緒に出かけてくれませんか?」

「あ、ズルい! 私もお願いします!」


………嫌な場面に遭遇してしまった。

歩く公害が王宮侍女に囲まれていた。

しかも通路を塞いでしまっている。

………はぁ。

………王宮侍女がそれでいいのだろうか。

全員が休憩中――なわけないわよね。

これで私よりいい給金貰っているなんて、理不尽だと思う。

けれど私はまだ見習いであり、姫様に認めてもらえていない女だ。

だから、他人を羨んでいる暇はない。

遠回りだけれど、迂回するしかないかな。

あそこを突っ切ろうとして、アレに巻き込まれたら嫌だし。

そう思って引き返そうとしたときだった。


「あ、アマリリス!」

「げっ」


運悪く歩く公害に見つかってしまった。

さらに笑顔で寄ってくるものだから、侍女全員に睨まれるはめになった。

こっち来るなー!!


「皆悪いね。俺、アマリリスと約束があるから」


そう言って歩く公害に無理矢理腰を抱かれてその場を後にさせられた。

角を曲がって侍女達が見えなくなって、歩く公害が息を吐いた。


「はぁ……助かった」

「なんで私が公害あんたの女除けにされなきゃならないのよ!!」

「なんで怒ってるんだよ」

「侍女に睨まれるのは私なのよ!?」

「そんな事ないだろ」


モテ男のくせして、女心に鈍感か!!


「助かった。サンキュ」


そう言って去って行った。

………はぁ!?

勝手に巻き込んでおいて、そのままフォローもなし!?

あんな事されたら、裏で私が何かされるとか考えられないわけ!?

しかも私の名前呼びやがって!!

何故か公害あいつは私の名前しか呼ばない。

その他の侍女の名前など、覚えていないのだろう。

そのまま私も、その他大勢の侍女の中に入れておいて欲しいのだけれどね!!

取りあえずここから離れた方がよさそう――

そう思った瞬間だった。

後ろから冷たいものがぶつかってきたのは。

一瞬にして私は全身濡れ鼠になってしまった。

ポタポタと髪から落ちる水に気づいたのは、きっちり10秒後だった。

しかも生臭い。

………これはあれかな?

掃除用の水かな…

汚れた水。


「調子に乗ってんじゃねぇよ」

「何様のつもりだよ」

「見習い風情が」


………ほらみろ!!

とばっちり受けてるじゃないか!!

なんで平民のあんな男がモテるのよ!!

顔なの!?

やっぱり男は顔なの!?


「っくしゅ!」

「うわ、汚っ」

「不細工」


くすくす笑いながら侍女達が去って行った。

………あんたらのせいだろうが!!

っと、あんな低レベルを相手にしてられない!

雑巾……は、持っててもびしょ濡れだ。

制服で拭くのも水を広げるだけよね…

………あ、バケツも雑巾も置き去りだ。

私は雑巾とバケツを拾って、雑巾を絞ってバケツに水を入れるを繰り返す。

………姫様、遅いって心配しないかな。

どうして姫様って、遅くなっても何かあったかって心配しかしないのかな。

普通は遅れてきたことを怒ると思うんだけど。

本当に普通の王女と違うよね…

転生者だから仕方がないのかな…?

と、とにかく早く片付けなきゃ!

これ放置したらさっきの侍女達に私のせいだって言われるだろうし、もし姫様やラファエル様が足を滑らせたら大変だし!

もうホント、歩く公害は私に害しか与えないわ!

もう関わりたくない!!

怒りのおかげか、すぐに通路は綺麗になった。


「よし!」


バケツの中に雑巾を放り込み、急ぎ足でその場を後にした。

早く姫様のお茶の準備しなきゃ!


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