第272話 お出かけ!①
「じゃ、行ってくるよ」
そう軽くラファエルが言い、私の腰に手を当てて2人揃って王宮から出た。
今日の私の服は、ラファエルが手配してくれた服。
お忍びのはずなんですがね…
爽やかさをアピールするかのように水色の布(勿論冬用の厚い生地)で作られているワンピース。
靴は歩きやすいように、同色のヒールが低いもの。
裾にはレースが付けられており、他の装飾はない。
首元にはラファエルの目の色の、赤いルビーがペンダントトップになっているネックレス。
紺色の上着を羽織って腕を隠す。
………これだけならまぁ貴族のお忍び失敗服みたいなんだけどね…
生地が良すぎるのよ!!
これ結構お金持ちの家の人…
ラファエルはうって変わって良く平民が着ているTシャツのようなもので、下も質素なパンツだ。
………この差!!
そしてさり気なく距離を取ってソフィーとヒューバートが私達の後ろを歩いている。
2人もちゃんと平民に見える格好だ。
何故に私だけ!!
………まぁ、もう気にしても仕方がない。
デートに集中しよう…
「今日はどこに行く?」
「え? 決めてないの?」
「うん。ソフィアの行きたいところに行こうかと思って」
「えー!? じゃあ先に言っておいて欲しかったよ!」
「ごめん」
素直に謝られ、私はそれ以上言えなかった。
「じゃあ、今日はガルシア公爵領の街を見てみたい。この間は馬車で道を確認しただけだもの。街でどんな店があるのか見てみたい」
「そうだね。じゃあ行こうか」
用意されていた馬車に乗り込み、馬車が走り出す。
馬車も平民が使う乗合馬車のように、外見は貧相に見えるようにされていた。
けれど中は王族の使用する馬車と変わりない。
「ガルシア公爵領の街では何が売ってるの?」
「メインは城下街と変わらず食物だよ。後は薬草とか衣類。そしてソフィアの好きな物」
「私の好きな…?」
首を傾げると、ラファエルは笑みを浮かべる。
「それは行ってのお楽しみ」
「………最近ラファエルその台詞にこだわってない?」
「ソフィアの喜ぶ顔が見たいから」
ぷぅっと頬を膨らませると、ラファエルは笑みを浮かべたまま私のほっぺをつつく。
それだけならまだしも、頬に口づけてきたりするから恥ずかしい。
「………そういえばユイカ」
ドキッとした。
久しく忘れていた呼び名を不意に呼ばれ、私はビクッと身体を震わせてしまう。
い、いくら2人きりだからって!!
「ユイカの世界って、どんなだったの?」
「………どんな?」
「ここに、似ている物ってある?」
「あるよ。機械とか本とか。食べ物も名前は違うけど似たようなものは結構あるし」
そんなに変わらない。
………急にどうしたんだろう?
「じゃあ、ない物は?」
「ない物………物ではないけど、まず精霊は見たことなかったし、魔法も当然ないよ」
「他にない物は? 物品とか移動手段とか」
「いっぱいあるけど……移動に使う乗り物とか、この間言った娯楽施設とか…防犯面とか…連絡手段とか」
「連絡手段?」
首を傾げるラファエル。
私は紙に固定電話と携帯電話の事を書き出す。
「へぇ。遠くにいてもすぐに連絡がつくのか」
「この世界には電波……見えない電気…雷…通信ってどう言えば分かるかな…」
「まぁ、声を届けられる物なんて開発できたら凄いよね」
「うん」
ラファエルは色々紙に書いて懐にしまった。
「急にどうしたの?」
「ん? この国がもっと便利になればいいなと思って」
「そうね…」
でも、充分今の改国状況はすごいと思う。
「ユイカの男の好みは?」
「私の好みか。そうね………………………………って、なんで!?」
「………ちっ」
………何故舌打ちをする……
知ってどうするつもりなの…
………でも、今の私はそんな事考える必要ないからな…
前はオタクだったから、それなりにこだわりはあったんだよね。
このゲームで言えばまさしく(完璧王子の)ラファエルだったのだけど。
他のゲームキャラの好きだった特徴を考えてみた。
………
………………
………………………
あ、マズい思考になってしまった。
やめよう…
「ユイカ何考えているの?」
「いや、前の私って結構イケメン…顔が格好いい人とか俺様系に弱かった………って…ぁ!!」
バッと自分の口を押さえたけれど、もう遅い。
「………へぇ?」
何やらニヤついたラファエルに見られていました。
あ、私ヤバいかも…
そっと身体を引いたけれど、腰を抱かれているから逃げられなかった。
………早く着いて!!
と願いながら、何とかラファエルから逃れようと必死だった。




