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第270話 お出かけ! …いえ、視察です…⑨




打ち合わせが終わったラファエルが裏庭に来たのは日が傾いたときだった。


「ソフィア、楽しんでる?」

「ラファエル様!」


ガルシア公爵はいない。

次の仕事に取りかかっているのかもしれない。

ラファエルの事だから、仕事を優先しろとでも言ったのだろう。


「ありがとう2人共。そろそろ帰らないといけないから、ソフィアを返してもらっていいかい?」

「わたくしは物ではありませんわラファエル様!」

「あはは」


私達のやり取りをお兄様は笑い、マーガレットとスティーヴンは苦笑する。

おいで、と手を差し出され、私はその手に素直に自分のを乗せた。


「ではね2人共。多分次会うときは学園だろう」

「はい、楽しみにしております」


2人が頭を下げ、私達はガルシア公爵邸を後にした。


「ガルシア公爵は了承してくれたの?」

「うん。大丈夫だった。民の安全のために変えることは良いことだからね」

「事故も最小限に出来るなら、それに越したことはないしね」


人目につかないところで、火精霊ホムラとレッドに乗って私達は王宮へと戻った。


「レオポルド殿、サンチェス国王に国境の件を伝えてくれるかい?」

「分かってるよ。機械はランドルフ国で作成してもらわないといけないから、通行料は少し上がるだろうし、技術料としてサンチェス国から支払いがあるだろう」

「宜しく。すぐに技術者に作成に取りかかるように言うよ」


王宮内を歩きながら2人が話す。


『主』


ふと私に精霊が話しかけてきた。

声からして水精霊イズミかな?


『国境の検査の時、水の精霊を使用するのはどうでしょうか?』

『………どういう事?』

『我らの力をもってすれば、人の記憶を読めます』


………ぁぁ、確かラファエルがユーグを使って私の記憶を読んでたっけ…


『過去に犯罪を犯した者や、良からぬ事を企んでいる者など、危険思想をもつ人間の選別が出来ます』

『そうなの!?』

『はい。我らは疲れ知らずで数も多い。1日交代でも充分にお役に立てます』


水精霊イズミの言葉に私は頷く。

精霊でより安全な入国になるのなら、それに越したことはない。

人の心など、私達人間には正しく理解できないのも事実。

私の部屋まで来て、中に入る。


「ラファエル、お兄様」


前を行く2人に声をかける。

すぐに気付いて振り返ってくれた。


水精霊イズミからの提案なんだけど、水の精霊達に国境審査に加わってもらったらどうか、って」

「精霊に?」

「水の精霊は人の心を読めるから、善人か悪人か判断できるって」


私の言葉に2人は顔を見合わせ、笑う。


「そんな方法もあったのか」

「じゃあ、カードとかいらないんじゃ…」

「でも、出入りする人を記録することも大事だと思うよ」

「どういう事?」


………2人同時に首を傾げられた。

………可愛いな、おい…


「もしも長期にわたって行方不明になったりとかして、捜索願出されたら国境を通っているかどうか分かるし。1日何人通過してるかとかも分かって、今後の対策にも使えるし。貴族が何人通過したとか、民が何人とか。男、女、子供、比率はどれぐらいか、とか」

「成る程ねぇ…」

「ほんと、ポンポンとアイデアだすよねソフィアは」

「それにサンチェス国側だけじゃなくて、テイラー国側も同時に行った方が良いよ。…ランドルフ国を守るためにも、ね」


ラファエルは私の言葉に頷いた。


「そうだ。カードを作るならついでに温泉街の入り口もカードを通さなければ、扉が開かないように出来るとか。ほら、平民も憧れて貴族とか王族専用の温泉を見たいとか言って入ってこられると困るし…貴族や王族はそういうの嫌うでしょ?」

「ああ、それはいいかも。それなら店も全部カードを通すことにしたらどうかな? それによって個人で何を買ったかとか分かるし、どんな物を好むかも分かるよね。購入数だけではより良い商品を開発できないし」


………あ、あれ?

ちょっと大がかりになっちゃいそうかも…

温泉街のことは口を出さない方がよかったかな…?


「ありがとうソフィア! これでますますいい感じになりそうだよ」


………ラファエルが笑顔だから、まぁいっか!


「じゃあ、まずは精霊の検査室、次にカード、次に暗証番号、最後に指紋でいいか」

「今の国境の厚さで作れるかな?」

「民は大体歩きだから縦抜けでいいかな。貴族と王族は馬車だから、縦抜けではなく横抜けにしたら問題ないでしょ」


ラファエルが何処からか地図を取り出して机に広げ、お兄様と覗き込むようにしてああでもない、こうでもないと話していた。

………うらやま――って、お兄様に嫉妬してどうするの。

私はぷるぷると首を振って、ソフィー達にお茶の準備をお願いした。


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