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第269話 お出かけ! …いえ、視察です…⑧




食事を終え、ラファエルとお兄様はガルシア公爵と打ち合わせすると言った。


「ああ、そうだ。マーガレット嬢、スティーヴン殿、ソフィアを例の場所に連れてってくれる?」

「………例の場所?」


私は首を傾げるけれど、マーガレットとスティーヴンはラファエルの言葉に頷いた。


「ヒューバート達はちゃんとソフィアについててよ? 目を離すとすぐソフィアはいなくなっちゃうから」

「もうラファエル様! わたくしはいなくなったりしませんわ!」


ここはサンチェス国じゃないんだから!


「あはは」

「あはは、じゃありません!!」


ラファエルとお兄様が笑いながらガルシア公爵と出て行った。


「まったく…ラファエル様ったら…」

「ソフィア様」


促されて私は2人と共に部屋を後にした。

連れて行かれたところは、ガルシア公爵邸の裏庭。

そこには小さな、でも透き通って綺麗な池があった。

中には色とりどりの魚が泳いでいる。


「綺麗ね…」

「元々ここには何もいなかったのですが、試験的に魚を泳がせて欲しいとラファエル様から言われ、カイヨウ国から何種類かの魚を取り寄せました」

「ラファエル様が?」

「はい。この国で飼える生き物を模索しているようです」


………ちょっと待って。

水族館の件を言ったのはほんの数日前だよね?

なのにもう取り寄せたっていうの…?

………いや、多分違う。

もっと前だろう。

もしかして、ミルンクとコッコを見た時から決めてて、帰ってきてから即実行させてた…?

そして私の口から水族館の話を聞いて、ガルシア公爵領に私の好きそうなものがある、と言ったの…?

………まったくラファエルはどこまで…


「………ありがとう。見せてくれて」

「いえ。ソフィア様が喜んで下さるのなら、わたくし達は何でも致します」

「何でもは過剰表現じゃない?」


苦笑してマーガレットを見る。


「貴女……いえ、次期ガルシア公爵になるスティーヴン殿と、その伴侶になるマーガレット嬢がしなければならないことは、民のための思索よ。わたくしの為にと動かないで」

「ソフィア様…」

「………マーガレット嬢、貴女とスティーヴン殿の気持ちは嬉しいのです。わたくしの為に、ラファエル様の為に何かしたいと思い、行動をして頂けることは有り難いと思っています。けれど、どうか…学園以外の場所で考えて下さるなら、今は民に目を向けてあげて欲しいのです。民が潤い、誰も飢えることなく、笑顔で過ごせる国になるように」

「………はい」


少し寂しそうな顔をされる。

………ごめんなさい…


「マーガレット、ソフィア様のお言葉を良く聞け」

「え…」

「ソフィア様は“学園以外の場所で”と仰ったんだ。ということは、学園で会われたときは、ソフィア様の為に何かをしてもいいってことだ。ですよね? ソフィア様」


スティーヴンに言われ、私は苦笑する。

マーガレットがハッとして、私を凝視してくる。


「………学園ではわたくしとラファエル様は、いち生徒、ですからね」

「で、では! お2方が学園に来られたときには、以前のようにお話しても宜しいのですか!?」


マーガレットに詰め寄られ、私は苦笑しながらも頷いた。


「良かったですわ!」


本当に嬉しそうに笑うマーガレットに、私は疑問に思う。

どうしてそこまでして私と話したがるのかが分からないけれど、純粋に嬉しいことは確かだ。

だから、これ以上水を差さないことにする。


「その時を楽しみにお待ちしておりますわ!」

「………ええ」

「ソフィア様、宜しいでしょうか?」

「何?」


話が一段落したところで、スティーヴンに話しかけられる。


「ラファエル様がこちらの国で飼育できる魚を、とご注文された理由はお分かりになりますでしょうか?」


………そんな事聞いてないから分からない…

けど、もしかしたら…


「おそらくサンチェス国への新たな交渉の為ではないかしら? お魚はカイヨウ国でしか捕れませんから。ですから輸入額がランドルフ国よりサンチェス国の方が高いのです。商人が販売しに来ますしね」

「成る程。唯一海に面しているカイヨウ国から、距離が離れる程、鮮度も落ちますしね…」

「1種でも2種でもこの国で扱えるものが増えればいいですわね」


頷き、ふと思う。


「この池の水は海水ですか?」

「はい。海水も取り寄せました」


成る程…

暫く私は2人と一緒に池を眺めながら話をしていた。


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