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第267話 お出かけ! …いえ、視察です…⑥




草原を離れ、私達は馬車で移動する。

来たときと同じように、私はラファエルとお兄様と一緒だ。

移動するときに民に見られないように、行く時とは違って馬車の窓にカーテンを引いている。

その隙間から覗き、ラファエルは道の状況を観察。

私もソッと見てみる。

主道を走り始めてから、整備されていない道を走っていたときより揺れが断然少なく、まるで日本のコンクリートの道を走っているようだった。

隙間なく詰め綺麗に並べられた石の道。

馬車が通ってもなお歩く人が慌てずに余裕で歩けるぐらいに広い。


「………綺麗」


思わず呟く。


「本当にガルシア公爵は優秀だね。これだけの整備をほんの短期間でやってしまっている。国が出るまでもなかったかな。逆に邪魔してしまうかもしれない」

「でも全て任せてしまったら、民はラファエルじゃなくてガルシア公爵を主にしてしまうわ。公爵の方が信頼できる、と」

「それはちょっと困るね」

「だから、ラファエルが引き継ぐ方が正解だったと私は思うわ」

「そうだね。ありがとうソフィア」


ラファエルに微笑まれ、私も笑い返す。


「街の中の整備も同時進行しているみたいだし、東の領地は大丈夫そうだな。温泉街が開放されれば、サンチェス国からはこちら側をメインに訪れるようにしようか」

「西の領地を見ていないから何とも言えないけど、こちら側はいい感じだね。貴族達も馬車で来ても通りやすい」


お兄様もラファエルの意見に同意する。

そのまま打ち合わせに入ってしまうものだから私は苦笑する。

盛り上がっている2人の声を聞きながら、私は窓の外を見続けた。

馬車の傍を歩いている民を見ていると、ふと思う。

いくら充分に歩く人のスペースが確保できているとはいえ、馬車がすれ違うとどうも心許ないのでは、と。

なかには心ない貴族もいる。

なら、邪魔だと言って民をひき殺してしまっても何も思わない者が通ってしまうと…


「………人が安全に歩けるスペースの確保が必要かもしれないわね…歩道と車道の間に縁石を設けるとか」

「はいソフィア。紙」

「え? 紙? なん……ぁ」


何故いきなり紙!?

と思って振り向けば、ニッコリ笑った王太子2人に囲まれていた。

………今まで2人で盛り上がってたのではないのですかね…

私の呟きを聞き取れるぐらいには、周りの状況を見ていたのね…

熱中しているのかと思ってた…

大人しく紙を受け取り、私は日本の道路をイメージして書いていった。

書き終わった私の絵を見て、また話し合う2人。

振動の中で書いた私の絵は、子供の絵より酷いのだけれど…

………いや、部屋で書いても下手なものは下手なのだけれど…

何とか文字で分かるのか、問題なさそうだ。

2人がその絵を真剣に覗き込んでいる様子は何とも言えない…

恥ずかしくてどうにかなりそう…


「よし、じゃあ縁石は国が全てやろう」

「………全てって…予算は大丈夫なの?」

「覚悟の上だよ。温泉街が開放されたら取り返せるよきっと」

「足りない分は俺が持つよ。俺個人の金でも充分足りるだろ」

「だがそれでは…」


お兄様の言葉にラファエルも私も唖然と見る。

そんな簡単に自分が手にしたお金を使えるものなの?

お兄様が貯めているお金はサンチェス国の為に使われる物で、ランドルフ国で使わせるのは違う。


「そうよお兄様。それならむしろ私のお金を…」

「ソフィアのお金は使わないで。それは王女として稼いだ金じゃないだろ」

「それは……そうだけど…」


でも、お兄様のお金も王太子として稼いだお金では無いはず…


「遠慮するな。俺の勘では温泉街は当たる。絶対に。先行投資だよ。ラファエル殿なら絶対にすぐに返してくれるしね」

「そんなに簡単に信用していいのお兄様…」

「実績があるからね。サンチェス国での甘味店で」

「ぁぁ…分かったよ。甘えさせてもらう」


ラファエルは最後には折れた。

そうなったら私も何も言えなくなる。

そっと身を引いた。


「何より民の安全のためだし、ケチってられないでしょ。温泉街を利用するのにうちの民も頻繁に行き来するんだ。安全確保するのに俺達サンチェス国王家の人間が無関係じゃいられないよ」


頻繁に行き来する…

それって、今のままの国境通過ルールでは、マズくない…?


「ねぇ、そうなったら今の国境の審査を簡易的に出来ないかな…?」

「簡易的?」

「人間性のチェックはどうしてもちょっとの審査で出来るとは思えないけど、国から許可が出ている人は、カード発行して専用入り口から入れるとか。毎回申請して許可が下りるまで時間がかかるでしょう? 民にも仕事があるし、この日に行きたいと予定してても審査が長引けばその日に行けずに、結局仕事に戻らないといけなくなるとか」

「確かになぁ…」


2人は頷いてくれる。


「それならカードと指紋認証でどうだ? カードだけなら盗まれたら犯罪者が行き来できる事になってしまうし」

「犯罪者も指紋採っておいて登録しておけば通れないとか」

「ゲートに1人分のスペース作ってその中でなら、開いた瞬間に複数人が通れることもなくなるね」

「じゃあ国境も改造だな。これは2国間の事だから親父にも金出させられるぜ」


ニヤリとお兄様が笑う。

………悪い顔になってるわよ…

というか、お父様に内緒で進めちゃって大丈夫…?

ちゃんと許可もらってよ…?


「まずカードを翳して扉を開く。そして中に入ると扉が閉まり…」

「その次にカードを差し込んで暗証番号入力して、次の扉が開く。そして扉が閉まってからの指紋認証がいいと思う」

「暗証番号?」

「カード発行時に自分の任意の番号を決めてもらうの。そしてそれを口外しない限り、悪用されることはないわ」

「それは民が……特に子供は覚えておけるかな…」

「文字列でもいいんじゃないかな? 良く口にする言葉とか。それには子供にも文字が読めるようにしてもらわなきゃだけど…」

「ああ、成る程ね。そうだなぁ…5歳未満の子供は、親が抱いて入ってもらうとかになるか」


お兄様とラファエルがメモを取っていく。

………なんだか近未来型のシステムになってるけどいいのかな…

そう思いながら、私達は意見を出していった。


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