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第264話 お出かけ! …いえ、視察です…③




ガラガラと車輪の音がする。

ガルシア公爵家の馬車は乗り心地がいい。

さすが公爵家と言いたい。

広々としていて、足を伸ばせる。

木の色そのままで、匂いもまるで新築の家の匂いに似ている。

この匂い好き。

そして、ふかふかの椅子と、程よい振動で眠気を誘う。

この馬車には私と王太子2人のみ。

公爵達はこの馬車の前を走るもう1台の馬車に乗っている。

王族と一緒には乗れないよね。

移動時間の間にもしかしたら会話できるかなと少しだけ思ってたけど。


「本当に街とは違う方向だね」


ラファエルが馬車の窓から外を見る。

一面草原で、青々と草が生い茂っている。

万年雪野原だった国が、草の生える過ごしやすい土地になって良かったと思う。


「ミルンクとコッコ、のびのび過ごせるかな?」


草原を見ながら私はポツリと呟く。

生き物の飼育をする。

それは命を預かるということに他ならない。

今更ながら心配になってくる。


「大丈夫だと思うけど、ここの気温でちゃんと生きられるかが問題だね」

「気温だけはどうにもならないからね。そこはラファエル殿達ランドルフ国の腕の見せ所だね」

「うわ…レオポルド殿、プレッシャーかけないでくれる?」

「あはは」


お兄様が笑い、同じく窓の外を見る。


「まぁ、大丈夫でしょう。飼育とは違うけど、何度かランドルフ国近くまで荷を運ばせたこともあるらしいから。サンチェス国は暖かいとは言っても、ランドルフ国との国境近くは気温が低いから大差ないだろうし。それにソフィアのアイデアのおかげでこの国は過ごしやすくなった。気温も上昇しているし、期待は出来るよ」


言い終わったところで、馬車が止まった。

目的地に着いたのだろう。

待っていると馬車の扉が開く。


「ラファエル様、ソフィア様、レオポルド様、到着したようです」


扉を開いたのはオーフェスだった。


「じゃ、降りようか」


お兄様が軽々と出て行き、次にラファエルも出る。

そして外からラファエルが手を貸してくれ、私も降りた。

サクッと草の音がする。

見渡す限りの平原は変わりなく、遠くにガルシア公爵家が見え、その向こうにガルシア公爵領が。

どうやらここは、ガルシア公爵家の裏手にある高原らしい。

裏手と言ってもだいぶ距離はあるのだけれど。


「ラファエル様」

「ああ、ガルシア公爵」

「こちらでいかがでしょうか」


ガルシア公爵も馬車を降りて私達の方へ歩いてきていた。


「いいんじゃないか? 広いし、ここならガルシア公爵も目を光らせられるだろう」

「はい。小屋を建てるならこの辺りが宜しいかと思います。そして放牧スペースの柵なども」

「うん。万が一逃げ出さないように少し高めにしよう。万が一人を襲ってもいけないし、金になると思って盗まれても困るしね。入り口には指紋認証にしよう」

「はい」


嬉しそうに話すラファエルに、ガルシア公爵も微笑んでいる。

風が吹き、草原の草が揺れていた。

ああ、癒される…


「………ここで読書や、ゆっくりお昼寝できたらいいのに…」


ポツリと呟く。

ラファエルは仕事できてるから、私も王女モードにしてなきゃだから、本当に小声で呟いた。


「ソフィア様」

「何?」


背後からヒューバートの声で呼びかけられ、私は振り向いた。


「こちらへどうぞ」


………あれ~…?

何故か机と椅子が設置されて、机の上には甘味がたくさん乗ってるんですけど…

さっきまでなかったよね?

私の席だろう椅子の背もたれをソフィーが手を当て、待機している。


「ソフィア」

「あ、え…?」

「俺はまだ打ち合わせあるから、お茶でも飲んで待ってて」

「分かりました」


笑ってラファエルに言われ、私は笑って頷いた。

ラファエルとお兄様、そしてガルシア公爵と各護衛達が移動して行った。

………ちょっと待って?

ハッと気付いたときには、話し声が聞こえない距離まで去って行った後で…

………どうしよう。

私が悩むのには訳があった。

例の2人も私と共に残されていた。

妙な空気感が漂っている。

マーガレットとスティーヴンと何を話すのか、まだ決めてなかった!!

いきなりこんな状況で置いていかないでー!!

私は王女の表情で微笑んだまま、少しの間、固まってしまったのだった。


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