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第260話 公爵の評価はどうでしょう




アダム・エイデンの検死結果が、アレから1時間ぐらいして届いた。

目を通したラファエルは、検死官に書類を返し、色々指示して下がらせた。

そして寝ようかと言って就寝したのだった。

翌日、いつもの日課の時間に目が覚めた私は、ラファエルを起こさないようにゆっくりと起き上がった。

すると背後からラファエルの腕が伸びてきて、私はベッドに逆戻りしてしまった。


「ちょっ…!?」

「………」

「………ぇ…」


私がラファエルを見ると、ラファエルから寝息が聞こえる…

どうやら無意識で引き戻されたようで…


「………おはようございます姫様…」


ソッとソフィーが近づいてきて、私の近くで囁くように声をかけてくる。


「おはようソフィー」

「起き抜けに失礼致します。ラファエル様と姫様宛に、ルイス様から伝言をお預かりしておりますが、ラファエル様が起床なさってからお伝えした方がよろしいでしょうか?」

「ルイスから? 今でいいよ。何?」

「アダム・エイデンの件で、エイデン公爵が本日中に面会したいと」


報告が昨夜のうちに行ったのだろうか?

エイデン公爵の心情は分からなくもない。

けれど、今ラファエルは療養中だ。

仕事の事は極力やって欲しくはない。

昨日の言い方からして、ラファエルはアダム・エイデンの件はもう終わったことのように思える。

生きているのなら、毒の件を償うまで意識を向けるだろうけれど、もうこの世にいない男に執着するようなラファエルではないのだろう。


「………どうせ詫びの言葉でしょ」


ゆっくりとラファエルが起き上がりながらそう言った。

………いつから起きてたのだろうか…

………いや、多分今起きたばっかりだ。

目付きが悪い。


「ルイスに伝えて。会う必要ない、と。公爵に息子の罪を背負うなら、悪いと思っているのなら、そんな事に時間を使わずさっさと仕事しろ。と返答を」

「畏まりました」


ラファエルの言葉にソフィーは頭を下げ、寝室から出て行った。


「………いいの?」

「ん~……まぁ、すぐに面会を求める申請をしてきたのは正解だと思うよ。でも、公爵の詫びを受け入れてしまったら、アダム・エイデンのしたことの罪を許すことに他ならないからね。それに謝る時間があるなら自分の領地の整備に時間をかけろ、と言いたいんだよね」


ラファエルがベッドから足を出し、ベッド脇に座って1つ欠伸をする。


「そんなに西の地は荒れてるの?」

「荒れてる……というよりかは、いつも雪が積もっていたから地面は土のまま。通る道は雪を踏み固めていたからね。今、雪は積もらないけど、雨とか雪とかで土の道が泥濘むのはどうしようもないんだよ」

「あ、そっか。せっかく観光しに来てくれる人が歩きにくいし、汚れるのか…」

「そう。温泉でリラックスしてくれても、帰る道中にもそんな調子だったら2度と来てくれないからね。ガルシア公爵は雪が積もらなくなってから、主道はある程度自己判断で整備してくれつつあったから、それを引き継いで俺が手配した者達に整備をするように伝えてた」


ラファエルの言葉を聞きながら、私は考える。

ということは、ガルシア公爵は今自領で何が最優先か考える事がデキる人、ということ。

ラファエルの中の印象は良いのだろう。

逆に他の公爵の事はあの会議の時まで、私の中であんまり重要人物になっていない。

ラファエルから話もなかったし。


「他の領地…まぁ、城下街はある程度整備されているからそれ程緊急性はなく、逆にサンチェス国との国境、テイラー国との国境がある東西と北の主道の整備が緊急だよ」

「東西と北……ガルシア公爵は既に取りかかってくれてるし、エイデン公爵には整備しろと言ったけれど、それじゃあ北の公爵には?」

「北のアシュトン公爵には、北に温泉街の中心を作ると報告した時に、向こうから主道整備をしたいと申し出てきたから、その時からお願いしてる」

「そうなんだ」


北の公爵はアシュトン家。

覚えとかなきゃ。

確かアシュトン家も中立派で、比較的ラファエルには協力的なのかな?


「アシュトン家は北の厳しい環境の中でも何とかやってくれてたし、温泉で観光地が出来て賑わう可能性があるのならと協力的だったよ」

「それは助かるね」

「うん。整備にはお金がかかるけど、応急処置で余っている木材で臨時の道を作ってくれてたんだ。ちょっと国庫に余裕が出来てきたから加工した石を取り寄せて、木を石に変えてもらってる。元々道の整備してたから石に変える作業はそれ程時間はかからないらしいよ」


少し微笑みながらラファエルが言い、私もラファエルに協力的な人がいると分かって安心する。


「道は国境から温泉街までの間を優先?」

「そうだね。後この王宮までの道もだね。来国者の中には当然王族もいるだろうし」


そっか。

まずは謁見の申請が来るだろうしね…


「王族専用の宿もあるけど、王宮の方を希望する方もいるかもしれないしね」


ラファエルの言葉に頷く。


「それが終わったら、領内、街から村へ続く道も整備しないとね。でも、ちゃんと平原は残したいし、ミルンクとコッコの飼育場所も徐々に増やしていきたい」

「そうだね。まだまだやることいっぱいだ」

「うん」


私に笑顔を向けてくるラファエルは楽しそうだ。

自国の活気ある光景でも想像したのかもしれない。


「テイラー国の引き抜きも上手くいってるみたいだし、それにソフィアの好きな店も出来そうだし、ソフィアとソフィーが出してくれた温泉街専用の洋服も出来上がってきてるし、新しい甘味のアイデアもサンチェス国店とランドルフ国店にも伝えたし、筆記具の詰め替えタイプも出来上がって店に在庫揃ってきたし」


………んん?


「後なんだっけ? ああ、お土産甘味限定に入れる装飾品も出揃ったし、店舗に入るサンチェス国から来てくれた従業員の教育も出来たし、温泉街に作った店は全て開店出来る状態になったし、温泉街が他国に宣伝できるまで、温泉街で働く予定の従業員は道の整備を手伝ってくれてるし、後は開発中のトケイが完成したら俺とソフィアの分、王宮と温泉街に設置したら一先ずは終了かな」


………ちょっと待った!!

ラファエルから次々と色んな言葉が出てくるんですけど!?

私何も聞いてないよ!?

殆ど私の知らない間に完成してるんですけど!?

どういうこと!?


「ああ、あのトランプとか大量生産しなきゃね! 子供から大人までの家遊び用品」


………ぁぁ…

また増えていく…


「………もうどうせなら子供の遊び用品増やしたら良いと思う…まだ温泉街に空き店舗あるんだし……おもちゃ屋さん的な…」


顔を覆った私の言葉に、ラファエルがピクリと反応したのに、私は気付かなかった。


「………ええっと……何があるかな……駒、凧、鞠、羽子板…ってこれ正月遊び道具じゃん……けん玉? 縄跳び――遊びだけじゃなくて知育系も売れるかしら? 学園の教科書は持って帰れないけど、文字の練習ドリルとか計算ドリルとかあったら学力上がるんじゃ…あ! 絵本とか作ったら面白そうかも! 温泉の休憩スペースの一角に子供の絵本とか置いて、卓球台とかビリヤードとか置いてたら楽しそ――」


独り言を呟いていた時、ハッと気付いた。

そぉっと顔を上げると、ニッコリと笑ったラファエルと目が合った。

そして無言で紙とペンを渡され、私は黙って受け取るしかなかった。


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