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第258話 人は変わることが出来ます




「よし」


ラファエルがそう言い、私は刺繍していた手を止めてラファエルを見た。

ラファエルはトランプが出来た後、すぐに遊び方を覚えて私の護衛達と一緒に遊んでいた。

簡単なババ抜きやら七並べから入ったトランプ遊びは、今や高度(?)な化かし合いが必要になるポーカーになってしまっている。

………男ってやっぱりそういう遊びが好きなのかな?

賭けはするなと念入りに言ったからこれからもないと思うけど…


「勝ったの?」

「負けた」


笑いながら言われ、私は苦笑する。


「う~ん…やっぱりオーフェスには敵わないか…」

「国政とかの駆け引きとかとは違うからね」

「頭は疲れるけど楽しいよ」

「………無理しないでよ? 一応休養なんだから」

「分かってるよ」


ラファエルが笑い、もう1戦と言って再開する。

まぁ、新しい遊びに夢中になって、ルイスがくれた期間だけでも仕事のことを忘れて、少年みたいに遊んでくれたらいいと思う。

これからも改国の事で忙しいのだから。


「姫様」

「どうしたの?」


フィーアが寝室に入ってきた。


「アマリリスが目を覚ましたと報告があったのですが」

「ホント!?」


私は椅子から立ち上がった。


「行ってきていいよソフィア。顔見たいだろ」

「え…でも…」

「大丈夫。大人しくしてるよ。部屋の扉には俺の騎士が見張ってるし、抜け出せないよ。ヒューバート、行け」

「はい」


ラファエルは私にヒューバートを付けて送り出す気だ。

それに甘えることにする。


「………じゃあ、ちょっとだけ行ってくる」

「うん。行ってらっしゃい」


ラファエルが笑顔で送り出してくれた。

私はヒューバートと共に部屋を出て、アマリリスがいる部屋まで向かった。

到着すると、アマリリスのベッドの近くに何人かの騎士がいた。

一応警戒してくれていたのだろう。

ナルサスの姿はない。

休憩かな?


「アマリリス」

「姫様! 申し訳ございません…ご迷惑をおかけしました」

「迷惑なんてかかってないよ。むしろ私を守ってくれたのだから。ありがとう」

「………私には勿体ないお言葉です…」


アマリリスはシュンとして、申し訳なさそうな顔をしている。


「アマリリスが守ってくれたおかげで、私は元気よ。貴女が責任を感じる事なんて1つもないわ。貴女のおかげで私は今もこうして動けているのだから」

「姫様…」

「むしろ貴女の方が心配よ。怪我の具合はどう? 痛む?」

「いえ、寝ていた間に癒えたようで。お医者様がおっしゃるには、矢の先だけが食い込んでいただけなので傷口はそんなに広くも深くもなかったそうです。意識が戻れば大丈夫だから仕事にもすぐに復帰出来るとのお言葉をもらっています」

「………本当に?」

「姫様に嘘は言えませんよ!」

「………それもそうか」


チップの内容に嘘をつかない、と組み込んでいたのを忘れていたわ…

アマリリスの顔を改めてみるけれど、顔色は悪くない。

いつものアマリリスだった。


「でも念の為に今日の仕事はしなくていいわ」

「………え!?」

「明日から復帰してくれる?」

「何故ですか!? お医者様は許可してるんですよ!? 私は姫様の侍女じゃないんです!」

「………ん?」

「まだ見習いなんですよ!? 私がちゃんと姫様の侍女になるためには、先輩侍女の倍は働かなければならないんです!!」


アマリリスの勢いに押され、私は上半身を少し後退させてしまう。

い、いつの間にこの子はこんなにやる気になっていたのだろう…


「………侍女の仕事、嫌じゃないの?」

「楽しいです。………今まで、私の周りにはアレしてはダメ、コレしてはダメ、コレはいい、コレやって、などの事を言ってくれる人はいなかったんです」

「………それは前? 今?」

「姫様に拾われる前まで全て、ですね」


ここには事情を知らない騎士達がいる。

私の暗にした言葉に、アマリリスは合わせてくれる。


「………私が言えることではないのですが…嬉しかったんです。姫様に拾ってもらって……本気で、叱って頂いて…本当に、嬉しかったんです」


泣きそうな顔で笑うアマリリス。

その顔に、私は軽く目を伏せる。


「まだまだ仕事は出来ないんですけど、叱ってくれる、注意し教えてくれるソフィーやフィーアにも、感謝してるんです。私、姫様の役に立ちたいんです」


真っ直ぐに見られ、私は思わず苦笑した。


「では命令です。アマリリス、今日は休みなさい」

「姫様!」

「そして、明日からは休んでいた分こき使うから、体力なくならないようにすること」

「………ぁ…」

「へばったら明後日からもベッドの中よ。嫌ならさっさと休むことね」


私の言葉を理解したアマリリスは、嬉しそうな顔をして私に頭を下げた。

彼女が変わったのなら喜ばしいことだ。

私は暫くアマリリスと話した後、部屋を出たのだった。


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