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第254話 拒否権? ありませんとも




つ、つかれたぁぁぁあ!!

と、思いっきり叫んでベッドにダイブしたい!!

けれども今私は会議室からラファエルにエスコートされて出てきたばっかりだ。

しかも王族専用扉(ラファエルの座っていた椅子の真後ろにある)は開け放たれており、ガルシア公爵とエイデン公爵が見送っているから人目がある。

しっかりと背筋を伸ばして歩く以外の選択肢なし。

無心で歩くように自分に命令しながら、ラファエルが歩調を合わせてくれるのに感謝し、通路を進んでいく。

私の部屋についた途端に、ラファエルがソッと手を放す。

………え?

反射的にラファエルを見ると、少し顔色が悪く、息が少し荒い…?

ハッと私は原因に思い当たり、すぐに自室の扉を開いてソフィーを探す。

既にソフィーは寝室の扉を開けて待機していた。

………優秀な侍女でホント助かるよ…

私がラファエルの腕を掴もうとして、するりとさり気なく避けられた。


「………ラファエル?」

「ごめんね。この後も後始末が――」


申し訳なさそうに言うが、最後まで言い終わらないうちにヒョイッとラファエルの身体が浮いた。

………浮いた!?


「失礼しますソフィア様」

「え、あ…?」

「この仕事奴隷を5日程見張っておいてください」

「………5日!?」

「はい。ここ2日も、ソフィア様に隠れて仕事してましたし、そろそろ本気で私の堪忍袋に穴が開いてしまいますからね。良く保ったものと自分を褒めてあげたいですよ。まだ堪忍袋に5つ程しか穴は開いておりませんから」


………いや、それもう堪忍袋ズタズタに穴開いてるよね?

そもそも堪忍袋は何カ所も開くものなの?

怒りのパラメーターとして限界が段階的にあるのだろうか…

その細腕にどれほど力があるのか疑問だ…

暴れているラファエルをものともせず、片手で首根っこひっつかんだまま、私の寝室にポインとラファエルが放り込まれた。

………正確にはベッドにだけど…


「では宜しくお願い致します」


ラファエルを放り込んだ男――ルイスはそれはそれは輝かしい笑顔で出て行った。

………相当腹に据えかねたのだろう…

………ルイスを怒らせるようなことはしないように気をつけよう…


「くそ! ルイスの野郎…」


放られて暫く放心していたラファエルが唸るように言い、起き上がろうとしていた。


「ねぇ、ラファエル」

「え? な……に……」


私に話しかけられ、反射的に私の方を向いたラファエルが固まった。

そして何故か顔色が更に悪くなった……?

心なし固まっている?

まぁ、失礼な…

私はちゃんと笑顔で話しかけたのに。


「私に隠れて仕事ってどういう事?」

「え……い、や…」

「仕事しないって約束だったよね?」

「そ、それは…3日前の1日だ……け………だっ、た……と……」


徐々にラファエルの声が小さくなっていく。

何でだろう。


「へぇ……そんなにラファエルは私を未亡人にしたいわけ?」

「え!? お、俺は死んだりしないよ!!」

「そんな顔色で何言ってるの?」


会議中、いつも通りに見えたラファエル。

どうやらやせ我慢だったようだ。

そして多分、薬の効果が切れたから顔色にも出てきたんだ。

悔しい。

ラファエルの体調に気づけなかった自分が。

まだラファエルの身体に毒が残っていると分からなかった自分が。

仮眠室のベッドで大人しくしていた姿を見て、安心しきっていた自分が。


「ヒューバート、オーフェス、アルバート、ジェラルド」


私が呼ぶと隣の部屋に待機していた私の騎士が寝室に入ってくる。


「ヒューバートはラファエルの部屋に行って部屋着持ってきて。オーフェスはラファエルの侍女に言って、ここと行き来できるラファエルの部屋の鍵をもらってきて。更に鍵が開けられないようにしてきて。毒が抜けきるまでここから出さないように」

「ちょ、ソフィア!?」

「はい」

「畏まりました」


ヒューバートとオーフェスはラファエルの部屋へと続く扉から出て行った。

………あ、そういえば私、ラファエルの部屋見たことなかったわね…

元気になったら一度見せてもらおう。


「アルバートはラファエルの騎士も全員呼び寄せて。ラファエルが出て行かないように交代で見張らせる」

「ま、待って! ホント待ってソフィア!!」

「ジェラルドはこの事お兄様達にも知らせてきて。当分謁見は控えてって」

「おう」

「は~い」


アルバートとジェラルドも出て行った。

全員、ラファエルの言葉には反応しない。


「ソフィー、湯浴みの準備は?」

「出来ております」

「それじゃ……」


私はう~んと考える。


火精霊ホムラ土精霊ジン闇精霊ダークネス


私が呼ぶと人型で3人出てきてくれる。


「ラファエルを湯船に浸からせて。溺れないようにそれは“厳重に”見張っていてね?」

「1人で入れる!! 入れるし、流石にソフィア専用の湯船に俺が入るのは……!!」


問答無用で3人の精霊に連行されていったラファエル。

………1度無断で浴室に堂々と入ってきたラファエルから、そんな言葉を聞くとは…

浴室に入るのと、湯船に浸かるのはまた別問題なのかしら?

私は苦笑し、ベッドに座ってソフィーに頭の装飾品を取ってもらい、身軽な服に着替えてラファエルや騎士達が戻ってくるのを待っていた。


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