表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
253/740

第253話 処分の行方




「さて。まずは処分についてだ」


会議室に名指しされた者しか居ない状態になり、そのままラファエルが話し始めた。


「王太子と王女の命を狙ったのです。私のことは気にせず、罰を与えてください」


エイデン公爵がラファエルに言う。

そんなエイデン公爵を無表情で見るラファエル。


「もとよりそのつもりだ。王族の命を狙った者に容赦はしないさ」


ゴクリとアダム・エイデンは喉を鳴らした。

顔色は青を通り越して白だ。


「処分の候補は3つある」

「………3つ、でございますか?」


ラファエルが指を3本立て、2人の公爵とアダム・エイデンに見せる。

そしてそれを1本にし、真顔で口を開く。


「1.極刑。2.幽閉。3.無期限の従僕」


………無期限の従僕?

私は思わず首を傾げた。


「従僕、でございますか…」


ガルシア公爵がここで初めて表情を崩した。


「それは、どのような…」

「服従チップを埋め込む。登録した内容に違反すれば即死に至る。無期限で私の手足となり、嫌っている者のために身を粉にして働くんだよ。それはつまり貴族としてやっていたことが出来なくなり、こき使っていた使用人以下の扱いを受けるということだ」


侮辱されたと思ったのだろう。

かぁっと今度は顔を真っ赤にするアダム・エイデン。

剣を使えるわけもない文系お坊ちゃま。

そりゃ使いっ走り扱いになるよね。

ナルサスとは違う。


「それでお願いできますでしょうか」


エイデン公爵は即決した。

………自分の息子なのに良いのだろうか。


「恐れながら、私はコレの教育にあまりたずさわっておりませんでした。全て教育係や家庭教師に任せきりで」

「………それが言い訳にならないことぐらい分かっているだろう。幼子おさなごでも知っている事を、その年になっても知らないのだからな」

「仰るとおりです。ですがコレでも我が息子に変わりありません。公爵家に生まれた者です。罪を償うにあたり、命を即奪う、幽閉しそこで一生暮らすなど、自分自身で償わぬまま死なせるわけには参りません」

「………我が子の命を長引かせるための理由にも聞こえるが、まぁいい。連れていけ。暫くは牢に入ってもらう」


騎士達がアダム・エイデンを連れて出て行った。


「寛大な処置、ありがとうございます」


エイデン公爵が直角にまた頭を下げた。


「さて、エイデン公爵にもこれから身を粉にして働いてもらうぞ」

「何なりと」


やけに素直…

って、そうか。

エイデン公爵家はともかく、エイデン公爵自身は新国派だったはずだ。


「自領の土地の整備を早急に行え。あそこは温泉街から近い領だ。他の国の者が観光に来る際、立ち寄る機会が多くなるはずだ。整備を行い、立地によっては第2の新事業の土地に指定してもいい」

「畏まりました!」

「仕上がりによっては国からかかった費用を支払おう。が、自領の土地の整備も滞るようであれば、自己負担は覚悟するんだな。それをお前の罰とする」


自領の、って…

西の方角全てってことよね…

サンチェス国との国境は南に近い東西方角2か所にある。

温泉街は王宮から近い所に作られている。

城下町が南にあり、そこは賑わっているから除外。

主に北方向が寒さも当然厳しく、温まる温泉街は北方向に決まったが、他の領地の公爵が良い顔をしないだろうという事で、東西へも伸ばし、東・北・西の3家の公爵の領地を跨ぐ感じに作られていた。

………だから店の数も温泉の数もかなり増やす必要性があったのだけれど…

ただし、あくまで温泉街の管理者は王家だ。

三分割するとどうしても利益争い必須だし、南の公爵も良い顔をしないだろうと。

温泉街の利益は、新事業の予算に回される。

で、その温泉街への観光客が多いと予測されるのは当然、サンチェス国と繋がっているこの2つの国境。

自領全ての整備が自己負担になってしまえば、相当な負債を抱えることになるのではないか…

………多少の罰って言えないんじゃ…

出来が良ければ後払いで支払われるけれど…

ちなみにテイラー国の国境は北東方角にある。


「謹んでお受け致します」


エイデン公爵は動揺もなく、受け入れた。

………いいのだろうか…


「次はガルシア公爵だな。東の整備は国がする。ガルシア公爵は新事業に専念して欲しい。契約が増えた品物のリストを確認してくれ」

「はい」


ガルシア公爵にルイスが書類を渡し、ガルシア公爵が目を通していく。


「この品物は受け取った後、そのままガルシア公爵家に送るようになる。領地に到着後の検品もそちらに任す。こちらでも検品するが、途中で何かあったらいけないしな」

「分かりました」

「設置費用はこちらが持つ。場所は平原で草が多いところが良い。天気の良い日は放牧出来るようにある程度は広さがいる。ただ、天気が良くても気温が低ければ放牧はしないでくれ」

「気温、でございますか?」

「そうだ。ミルンクとコッコは温暖地が良いらしい。建物の中は暖かく温度を保てるようにするが、あまり長期間閉じ込めておくとストレスが溜まって良い品が出来ないそうだ。だから適度に放牧の必要がある。長期間低い気温が続くようなら、精霊に言って一時的に暖かくは出来るから、報告も兼ねて1日最低1回は報告書を送ってくるように」

「畏まりました」


その後、私は蚊帳の外でお父様とお兄様を交えて話し合っていた。

エイデン公爵も第2新事業を受け持ったときのためか、一緒に混じっていた。

………もう退出したいんだけど…

密かに鳴るお腹の音と戦いながら、私はニコニコと笑みを作りながら眺めていたのだった。

内容はちゃんと把握しながら…


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ