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第25話 里帰りです




ローズの手紙をきっかけに、私はラファエルにサンチェス国へ一時帰って良いかと聞いた。

最初は渋っていたラファエルだけれど、一緒に行くなら良い、となったらしく、早急に仕事を全て引き継いできてしまった……

まぁ、ついでにパティシエをサンチェス国へ連れていく口実が出来たけれども……

………そのまま私が戻ってこないって思うのかしら……

そんなわけないのに……

王には王子達を連れ帰ってこいとか言われたらしいけど、同盟が終わっても良いなら、と逆に脅してきたらしい。

………恐ろしい…

そんなこんなで私達を乗せた馬車はランドルフ国を出て、サンチェス国へ入った。

門番は私の顔を見ただけで、直立不動になり、荷の確認もせずにすんなり通した。

………大丈夫なの? サンチェス国…


「さて……ここからはラファエル様の好きなソフィアは一旦おしまいです。我慢して下さいね?」

「………………………………分かった」


うわぁ……不満そう……


「ら、ラファエル様も王子様にならなきゃだし、ね?」

「分かっていますよソフィア。私はソフィアみたいにミスは滅多にしませんし」

「ひどっ!」

「ほら、出てる」

「あ……」


ラファエルに言われて口に手を当てる。

いけないいけない。

暫く本当の私でいたせいで、王女仕様が下手になってる……

………ラファエルがいるせいでもあると思うけど……


「あ。すみません、止まって頂けますか?」

「はい」


御者に言い、馬車を止めてもらう。

街道に懐かしい人がいたから。

馬車の扉が開かれ、ラファエルにエスコートされながら馬車を降りた。

そして店先にいる人物に声をかけた。


「ローズ嬢!」

「………ぇ……ソフィア様!」


振り向いた令嬢。

まさにローズだった。

私がローズを見間違えるわけがない!

………本当はローズの傍にギュンター家の馬車が止まってたからなんだけどね。

でも……“様”?

………ああ、人目がある場所ではもうローズは私を呼び捨てには出来ないんだった……

寂しいな……

私もローズ嬢としか言えないんだし、我慢我慢…


「お久しぶりです。お元気でしたか?」

「はい。ソフィア様もお変わりない……あら? 前より可愛くなられましたか?」

「まぁ、そうですか……?」


そんなわけないし!

変わってないよ!

頬がヒクついたじゃない!

ソフィア、貴女は王女よ王女!


「失礼。ローズ嬢。改めましてラファエル・ランドルフと申します」

「ローズ・ギュンターと申します。お見知りおきを」

「ソフィアからお話を伺っておりました。お世話になっていたようで、改めてご挨拶をと」

「私がソフィア様に良くして頂いておりました。こちらこそお礼を」


………あのぉ……

ニコニコと穏やかに話をしているようですけど……

目がね、二人とも目が笑っていないんですが……

こ、怖い……

更にローズさん?

相手は一応王子様だから、対等の立場みたいな話言葉はどうかと思うんだけど……

目が怖くて言えないけど……


「ソフィアが可愛いのは私の愛でしょうから。前とは違うのは当然ですよ」

「まぁ、それでは前は可愛くなかったかのように聞こえてしまいますわ。ソフィア様は昔から可愛かったですわ」

「それはそうでしょう。ですが、今まで以上に可愛くなったのは、私が愛でているからであり、今後も私の愛で変わっていくはずですよ」

「まぁ、それは楽しみですわね」


バチバチと火花が散っているように見えるから!!

怖いから!!

やめてぇ!

誰か止めてぇ!!

ローズはこんな好戦的じゃなかったでしょ!!

ラファエルも誰彼構わず喧嘩する人じゃ……人でした。

ラファエルは何故か私が絡むと、相手を睨みつけるんです…


「あ、ラファエル様、兵士が来ておりますわ」


視界に入った鎧に視線を向けると、王宮の兵士が数名いた。

私の視線に気づくと、頭を下げる。

………王が迎えを寄越したようだ。


「………迎えですね。ではローズ嬢、我々は失礼しますよ」


………我々を強調しすぎです……


「ローズ嬢、後で改めて招待状をお送りさせて頂いても宜しくて?」

「お待ちしておりますわ」


ローズが見送りの姿勢に入り、私とラファエルは馬車に戻った。

馬車の周りを王宮兵士が囲み、王宮への道を行く。

………はぁ。

なんだか王に会う前から疲れた。

これからも疲れることが待っているだろう。

今度はラファエルVS王対決が……

まだまだ帰ってこいの言葉は手紙に書かれているし、ラファエルはそれに怒っている。

………ライトとカゲロウの報告では、私の知らないところで王に手紙を送っているらしい……

私の気持ちを誘導するな。

別れる予定は生涯ない。

王より断然自分は愛されている。

………などなど。

もう、何をしているのよ……

王が怒ったら甘味の店が出せなくなるし……

借金返済の道が遠のくから……

民のために我慢してよ…

と言っても効果ないんだけど。

あ、愛してくれるのは純粋に嬉しいんだけど……

思考していた為に俯けていた顔を上げると、窓に頬杖をついてこっちを見ているラファエルと目が合った。

………ぇ…

ずっと見てたの…?

目が合うと、ラファエルがニコッと笑った。

うっ……

その体勢、格好いいですから…

顔赤くなるから…


「ソフィアはずっと可愛いのにね?」


………まだその話、続いてたの……?


「ら、ラファエルの方が格好いいし!」

「………」


いい加減黙って欲しい。

そう願って、ラファエルが弱い台詞を上目遣いで言ってみる。

そうすると、手の甲を頬に当てていたのに、手の平に返して口元をそれで隠して窓の外を向くラファエル。

頬が赤く染まっている。

よし、成功!

………じゃないでしょ私…

争ってるんじゃないんだから…

ため息をついて、見えてきた王宮を窓から見上げた。

――ただいま。

心の中で思っている間に、馬車は王宮の門を潜った。


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