第247話 牧場経営?
「ねぇソフィア」
「………」
「………何でそんな嫌そうな顔するの」
ラファエルの執務室の仮眠室へノックもなしに入ってくるお兄様。
お兄様は部屋に入るときノックをするということの教育を受けた方がいいと思う。
「なに?」
「ミルンクとコッコ、ランドルフ国で育てる気ない?」
お兄様の言葉に、思わず半目になってしまった。
「なんで私に聞くの? ラファエルに聞きなさいよ」
「聞いて了承得てる」
「じゃあ尚更何で私に聞くの!?」
「いやぁ、だってあの2種は暖かいところで育てる必要あるみたいでさ」
「だったらサンチェス国の方が良いんじゃないの? そしたら牛乳も卵もランドルフ国に輸出してサンチェス国も利益出るでしょ」
私の正面に腰を下ろしながら、お兄様は首を振った。
「サンチェス国は主に食物扱ってるから、余っている広い草原とか空き地ないし、あの2種がもし畑を食い荒らしたらマズいでしょ」
「………ぁぁ……」
「だからソフィアが前に言ってたビニールハウスっていうのを応用して、ランドルフ国で小屋を作って温度一定に保てないかと思って」
お兄様の言葉に私は考える。
酪農家みたいなイメージかな…
草原、といえばランドルフ国は適任だろう。
特に農作物を作ってるわけでもなし。
各地で何か作っているわけでもない。
無駄に雄大な土地があるだけだものね。
建物にしたって、温泉街が作れるのだからお手のものだろう。
ランドルフ国の住民は器用な人間が多いから。
技術者に設計してもらって…
もしかしたら自動餌やり機とかも作れちゃう?
で、自動搾乳機とか。
コッコは卵産んだら自動的に一カ所に集まるようにして…
等間隔で柵作って何カ所かに分けて設置して…
それこそ各村付近に1小屋ずつ一定数放って飼育して貰えれば…
後は餌よね。
餌って分かったのだろうか…
「おーい」
お兄様に目の前で手を振られる。
あ、いたんだった。
「いいんじゃない?」
私は今考えていたことをお兄様とラファエルに伝える。
ああ、ラファエルは相変わらずベッドにいますよ。
「餌も分かってるよ。その餌をさ、サンチェス国からランドルフ国へ輸出する。その料金を今までの輸出分に上乗せしたらこっちも利益出るし」
「なるほど。いいんじゃない? ただ、最初は民達に説明が必要だし、必要頭数いないとねぇ…まず実験的に王宮の近くでやれないかな?」
私は静かに会話を聞いていたラファエルに話を振ってみる。
「ガルシア公爵に交渉してみるつもりなんだ。侯爵家の使用人あっちに行かせて、教育を一通り教え直したって報告受けてるから。その者達にやらせられないかなって思ってる。公爵家の使用人数がかなり多くなってるから」
「なるほど」
色々考えるものだ…
ただでさえ仕事量多いのに…
これは早急に使える臣下を探した方が良いだろうね…
「………アマリリスに聞いたら、より良い餌とか分かるかもしれない。起きたら聞いてみようっと」
「あ、やっぱり餌で味が変わるのか?」
「質がいいとか悪いとかはそうなるね。こだわらなければ今のままでいいけど、やっぱり人の口の中に入るものだから、美味しくて安全なのは必要でしょ」
「そうだね」
………あ、そうだ。
「温泉街にも牛乳置きたいなぁ……普通のとフルーツ牛乳。あ、コーヒーあればコーヒー牛乳も作れるのに…」
「コーヒー?」
「うん。黒くて苦みがある飲み物なんだけど、牛乳と混じれば子供でも飲める甘い飲み物になるよ」
「………黒いし苦いのか? マズそうだな…」
お兄様が嫌そうな顔をする。
それを見て苦笑し、私はお茶に口を付けた。
「お風呂上がりの牛乳っていいの?」
「より美味しく感じるかな? 温泉に入ったら体温が上がって冷たいものが欲しくなるし…ホットでもいいけど」
「ホット…温めるって事?」
「うん。温かいものを飲むと身体が温まるから、寝る前とかに飲むと効果的だよ。牛乳温めて少し糖を入れて。冷え性とかの人も割と早く眠れるんじゃないかな?」
雑談みたいに話していたのだけれど…
後方からカリカリという音が聞こえる…
チラ見すると、いつの間にかルイスがいて、凄い早さでメモっていた。
………うん、実現は早そうだね。
私は苦笑しながら更に雑談していた。




