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第243話 手がかりはまだありません③




ラファエルに褒美は何がいいかと聞かれ、私は悩みに悩んだ。

やっぱり私には物欲がないようで、なかなか思い浮かばなかった。

ゆっくりで良いと言われたけれど、時間をかければかけるほど、ラファエルが痺れを切らして豪華な物を用意するのが目に浮かぶ。

………時間?


「そうだ!」


ビクッと周りの人間が肩を揺らした。

考え込んでいた私から突然大声を出されては、驚きもするだろう。

………申し訳ない…


「お、思いついた?」


ラファエルが頬を若干引きつらせていた。

笑顔を作るのに失敗している。

………本当に申し訳ない。


「ラファエル、まだ時計の研究してるんでしょう?」

「………トケイ……ああ、あの時を刻むという物だったよね。もうちょっとなんだけど、正確な時を刻む調整が難しくてね」

「設計図渡したのは置き時計と掛け時計だったけれど、ラファエルと同じデザインの腕時計が欲しい」

「腕ドケイ?」

「そう。このぐらいの大きさで、ベルトを使って手首に巻いて時を確認する物なの」


私は親指と人差し指で500円玉程の円を作り、手首に当てる。

女性用は更に小さいけれど、そこまで精密なのは今は作れないだろう…


「へぇ。腕に付けるから腕ドケイなんだね」

「置き時計と掛け時計よりうんと小さくなるから、部品もその分小さくなってしまうのだけれど…」

「いいよ。時間がかかっても完成させるよ。滅多に出ないソフィアのおねだりだしね」


………あれ?

ラファエルからの褒美のはずが、私のおねだりに変わってしまっている…


「トケイが出来たらベルトのデザインとか教えてもらうね」

「う、うん…」


ラファエルの言葉に頷きながら、私は今更ながら後悔してきた。

物品を強請るのに、お揃いはともかくおねだりになってしまうとは…

これじゃぁますます…


「ラファエルはちゃんと休むのも仕事だからね!」


ガタンと椅子から立ち上がってラファエルを指差す。

(注:人を指差してはいけません。よい子は真似しないように)

………って、思わず頭の中に注意文を思い浮かべてしまった。

気を取り直して!!

ラファエルが仕事…研究に没頭してしまっては、折角想いを確認し合った私達の時間が削られる!!

私はラファエルと一緒に出かけられる事が1番楽しみなのに!

もうあんな寂しい思いは嫌だし、ちゃんと私の言葉を伝えるんだって決意したのに!


「そ、それに! 私からラファエル奪わないでよね!! い、一緒に出かける約束ちゃんと守ってよ!? 忘れたら許さないからね!!」

「「「「………」」」」


ぽかんとラファエルに見られ、周りからも何も聞こえず、私はえ…と周りを見渡す。

………全員が全員、私を唖然と見ていた。

な、なに……?


「………ソフィア様が…」

「あのラファエル様放置が当たり前のソフィア様から…」


ヒューバートは唖然とし、ルイスが書類を落とした。


「………姫様が言える立場ではないかと…」


ソフィーは口元を押さえ、小声で言う。

………うわーん!!

味方がいない!!

自業自得の自分が憎い!!

そしてルイス!!

ソレ重要書類じゃないの!?

そんなに驚愕することないでしょう!?


「ふふっ」


ラファエルはラファエルで、可笑しそうに笑うし!!


「大丈夫だよ。ちゃんと覚えてるし、ソフィアがそのままで良いって言ってくれたしね。ちゃんとソフィアを街に連れて行くし、嫌だって言われても一緒にいる時間を作るよ。勿論ソフィアがいなくなりそうだったら鎖用意してもいいし、一緒に眠るのは止めないよ」


だいぶ柔らかい声で言われたせいか、今までとそんなに変わらない言葉なのに、嫌な感じが全く感じられない。

むしろ……温かい……?

優しい笑顔を向けられたからかもしれない。

かぁっと頬が赤くなるのが分かった。

愛の言葉を囁かれたかのような錯覚を覚える。

どうしてだろう。

あの本音を言った時より、ラファエルに愛されている実感が強い気がした。


「でも、その為にはまず俺も仕事をしないといけないんだ」

「え……」

「毒を俺に盛った者は勿論、ソフィアの膳まで毒が混入された」

「ぁ……」

「捕まえるまで、俺はソフィアを外に出せないよ。分かって」

「………」


そうだった。

まだ毒の種類も、誰がラファエルを狙ったのかも、私を狙った相手が同一人物なのかも、何一つ分かっていない。

………本当に誰なのだろうか。


「ごほんっ。その事で、ラファエル様とソフィア様にご相談が」


ルイスが咳払いをし、私とラファエルの意識を向けさせた。


「どうした」

「私の力も使っていますが、なにぶん1人故に時間がかかります」

「………成る程な」

「………?」


ルイスの言葉にラファエルは頷くが、私は首を傾げる。


「俺は力を俺に使ってもらっているから難しいが、ソフィアは分散させても問題ないだろうな」

「はい。ですから許可とご協力をお願いしたく…」

「ソフィア、手伝ってくれる?」

「………さっきから何の話? 私が出来ることなら勿論協力するけど…」


首を傾げる私にラファエルは苦笑し、他の皆はなんだか呆れて……?


「精霊だよソフィア。守りに必要な必要最低限の精霊は残して、他は犯人を捜すのを手伝って欲しいと言ってるんだよ」

「………あ!!」


思いのほか大きい声を出してしまい、私は私の頭から精霊の事がすっぽり抜けていたことを、全員に否応なく知られることとなった。

さっきとは違う意味で顔を赤くしてしまう。


「精霊なら壁なんかもすり抜けられるし、今この国の者に彼らを見れる人はいない。精霊自身が究極精霊の命の元、姿を見られないようにしているから。それにソフィアが究極精霊に他の精霊の協力を仰げるように進言してくれれば、この国の精霊たちも協力してくれるかもしれない」

「………宜しいですか?」

「………はい」


ルイス、笑うならいっそ笑って……

笑いを堪えながら聞かないで…

私は身体を縮こませながら、頷いたのだった。


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