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第242話 手がかりはまだありません②




「どうだった」


ラファエルがベッドに座り、上体をクッションに預けたままの状態で、報告しに来たルイスに聞く。

それにルイスが首を横に振った。


「ダメですね。口を割りません」


騎士に扮したおそらく影だろう男から情報を聞くことが出来ない。

手がかりは得られそうになかった。


「チップを埋め込んでも聞き出せないものね…」

「ああ。偽りを言ったら命を落とすとしても、口を割らないか、偽りを言って命を自ら捨てるだろうね」


影を捕まえたところで情報を得られないのは分かっていたけど…

偽物だと気付いて捕らえても、何の意味もない。


「ごめん」

「どうしてソフィアが謝るの。相手の駒を1つ減らせただけでも上出来だよ。よく見抜けたよね」

『カゲロウが言ってたでしょう。姫は影かそうでないかを見破るのが上手い、と』


天井からライトの声が…

せめて姿を現してから割って入って…


「ああ、そうだったね。ソフィアが騎士と影の所作の見分けがつくなんて思ってもみなかったよ」

「影は自然と同じ様な動きになるし、騎士も訓練で同じ様な動きになるしね。毒もあったし、注意して見てたから気付いたよ」

「凄いね」


ラファエルに頭を撫でられた…!?

かぁっと顔が赤くなってしまう。

久々すぎて恥ずかしい!!


「なんかご褒美あげたいよ」

「そ、そんな大袈裟だよ!! たまたまだし!!」


ぶんぶんと首を横に振る。


「大袈裟じゃないよ。だって、多分俺とルイスだったら見逃していたと思うよ」

「そんな事ないでしょ…?」

「騎士の顔を把握しているけど、見覚えないってだけじゃ確信が持てないから、見逃してしまう可能性はあるよ」


真面目な顔をしてそう言われてしまえば、私はそれ以上言えなかった。


「あ、そういえばアマリリスは…」


ハッとしてルイスの方を見る。


「医者から騎士伝いで、意識はないけれど処置は無事に終わりましたから、数日中には目を覚ますだろうと。ただ熱が出ているので、目を覚ましても動けるようになるまでは少し時間がかかるだろうと」

「そう…命に別状がないなら良かった…」


動けないのは彼女にとっては不満だろうけれど、命を落とさずに済めばそれでいい。

侍女には急いでならなくていい。

1からのスタートの彼女には焦りもあるだろうけれど、きちんと一つ一つこなしていけばいい。


「彼女にも礼を言わなきゃな。俺の騎士を守ってくれたんだから」


あ、ラファエルがアマリリスを“アレ”でもなく“ソレ”でもなく“彼女”と称した。

アマリリスが自分の力でラファエルに少し認めさせた。

アマリリスの成長が嬉しいな。

手助けはもうしないと決めていたから、アマリリスが自分の行動で他人の評価を少しでも変えた事が、助けた側としてはホッとする。


「彼女には何の褒美がいいかな?」

「………」


褒美、ねぇ…


「ラファエルの言葉だけでいいんじゃない?」

「言葉だけじゃ…」

「確かにナルサスを庇ったことは評価の対象だけれど、アマリリスは他人を操りサンチェス国で罪人となり、脱獄してランドルフ国に密入国し、ラファエルに近づき、送り返されても問題を起こし、私を殺そうとした。その事実がある以上、簡単に褒美をあげちゃダメだよ」

「………」

「その罪が償われてから、それからプラスの評価点になっていくでしょう? 物品を与えるならそれから。今はマイナスの評価だから、よくやった、この調子で精進しろ、でいいと思うよ」


人差し指を立てて、ラファエルに言った。

ラファエルは微妙な顔をしていた。

………何故に…


「………ソフィア」

「ん?」

「彼女を助けたソフィア自身から、辛辣な言葉が出たことにビックリしたよ…」

「あれ? 言わなかったっけ? 私が手助けするのはアレが最初で最後。後はアマリリス自身の努力次第。当然また罪を犯せば私は罰するし、逆に彼女が頑張って侍女の水準に達すれば専属侍女にする。私が彼女を助けたのは自分の罪と向き合わせるため。罪を償うのに命を落として終わらせるなんて許さないわよ。侯爵達みたいな改心しないだろうと思った人物は処分するのに躊躇はしないけれど」


アマリリスは自分の罪を自覚し、命を落とすことを最後には覚悟していた。

同郷の情けもあったのは事実だけれど。

私の味方は少ない。

だから鍛えれば出来るなら、私の味方に引き込む。


「………ソフィアは冷たいのか優しいのか分からないな…」

「冷たいんだと思うよ」


ラファエルの言葉に私は笑って答えた。

だって、本当に優しい人は他人を許容し、罰など与えない。

アマリリスにとっては、彼女の受け止め方次第だけれど、屈辱以外の何物でもなかったはずだ。

見下していたモブ王女の下で働くことは。

けれど彼女はちゃんと見習いとして働いてくれているし、態度から嫌悪の感情は感じられない。

元は純粋な女の子だったのだろう。

ただ、他人との距離の取り方、関わり合い方が分からなくて引きこもっていたんだと思う。

こっちで生きるようになってからは特別な力があって、自分の思い通りになっていたから、我が儘になっていたのだ。

………まぁ、私にしたことはその言葉で片付けられないんだろうけれど。

教えたら出来るのだから、教えてくれる人がいなかったのかもしれない。

でも、今の彼女にはこれらは関係ないだろう。

これからの彼女の行動を私は見ていれば良いのだ。


「じゃあ、言葉だけにするよ。ソフィアは何がいい?」

「え…」

「ソフィアには物品をあげるよ。これ、決定事項だから」

「決定なの!?」

「決定なの」


ラファエルがニコニコ笑っている。

あ、これ拒否できないやつ…

私は苦笑し、なるべくお金がかからないような物を考え始めた。


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