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第241話 手がかりはまだありません




「早く医者を呼んできて! 彼女の身体は出来るだけ動かさないで!!」


アマリリスが負傷した。

膳に毒が盛られ、アマリリスがそれを口にされないように膳をひっくり返した。

私はそう報告を受け、ラファエルの許可をもらってヒューバートと共に、アマリリスの元へ来た。

報告してきたのはラファエルの騎士の1人で、ナルサスの指示で報告してきた。

部屋につけばナルサスがアマリリスを抱き、背に刺さっている矢はそのまま動かないように固定している。

傷口を確認して、肌に変色などは見られず、一先ず毒の心配はしなくていいだろう。

矢を抜いていないから血もそんなに出ていない。


「ナルサス、説明を」

「………はい。部屋の外が少しざわめいたような気がして、俺――私は扉の外の様子を伺っておりました。外に気を取られ、その他には意識を向けられず…アマリリスが気づき、私を押し倒して庇ってくれた時、初めて私は上から狙われていることに気付きました」

「アマリリスが貴方を庇い、矢に貫かれたのね」

「………恐らく賊は私を傷つけるためで命までは奪わないような角度でした。倒れたせいでアマリリスに深く刺さったのだと…」

「そう」


アマリリスが、ナルサスを庇った、か。

………本当に彼女は変わってきているらしい。


「その後アマリリスは、ソフィア様の膳に毒が混入されたのを見たのだと思います。クロスを引いて膳をひっくり返した後に、意識を失いました」

「………」


私は意識を失っているアマリリスの頬を少し撫でる。

………貴女は本当に私のために働いてくれている。

あのアマリリスが。


「ソフィア様!」


部屋に飛び込んできた医者にアマリリスを託し、ナルサスもアマリリスについているように頼んだ。

………さて…

私はひっくり返っている膳の元に行き、それらを見るために膝をつく。


「………ヒューバート、どう見る?」

「やはり毒は液体状ですね。固形物ではないでしょう」

「うん」

「となるとやはり持ち運びできる入れ物に入れていると思われます」


………物的証拠が残るものを所持しているはず、か…


「ライト、上は?」


私は天井に顔を向ける。


「毒の容器らしき物はありませんね。持ち帰ったと思われます。少し先まで何かの液体を零したような跡があります」


スッと天井板が外され、ライトが顔を出す。


「追跡は?」

「カゲロウとダークが」

「そう」


2人なら何かを見つけてきてくれるかもしれない。

今は待とう…


「ソフィア様」

「何?」

「ここに留まっているのはお身体に障るかもしれません。毒は気化性かもしれませんから」


………気化…

空気に漂うかもしれないって事か…


「ヒューバート、詳しいのね…」

「一応貴族の出ですから…」

「そういう事も学ぶの?」

「はい」

「教えてくれる?」

「………ソフィア様の方が詳しいと思いますが…」


………まぁ、貴族より私の方が毒を飲んでるしね…

って、そうじゃない。


「私は飲んだことがあるだけであって、知識はそんなにないよ」

「そうなんですか?」

「今日はこれだって渡されて飲むのよ? どんな毒で身体にどんな影響があるか、なんて説明受ける間もなく半強制的に飲まされて、数日魘される日々よ」

「………」


ヒクッとヒューバートが頬を引きつらせた。

………うん、気持ちは分かるよ。

でも、それが私の毒の慣らし方法だったもの……

お兄様なら最初に説明があって、飲んで魘されて、だったかもだけど。

本当に王子と王女の教育の差が激しいわ…


「と、とにかく…ソフィア様。ラファエル様の元へ戻られた方が…」

「そうね。毒の膳の保管は誰かにお願いできる?」

「では私が」


1人の騎士が名乗り出た。

………ん?

私は内心首を傾げた。

………見覚えがないんですけど。

膳に近づき手を伸ばす騎士を観察し、私は手を上げライトに合図した。

その瞬間、騎士の男がロープで拘束された。


「うわっ!?」


身動きが出来ず、男が床に倒れた。


「ソフィア様!?」


ヒューバートが驚き私を見る。


「騎士に扮するならもうちょっと騎士らしい動きをするのね」

「ぐっ…」

「どういう事ですか?」

「影特有の足音を消す癖。騎士ならば剣を下げている方に自然に重心が下がるのにそれがない。だから剣の鞘と剣の長さが比例してないのだと思う。大股になり気味な騎士の歩き方じゃない。鎧を着け慣れた動きじゃない。諸々合わせて、この男は騎士じゃない」


私の言葉に部屋を捜索していた騎士達が、瞬時に集まってきて床に倒れている男に剣を向けた。


「何より貴方の顔に見覚えがない。誤魔化せると思っていたのなら甘かったわね。女だからだと侮った? 最初から…騎士見習いの時から混ざっておくべきだったわね」


騎士が増える事になって、私は1から全部の騎士を覚え直した。

サンチェス国の兵士とランドルフ国の騎士の顔を覚えていなければ、混乱の中味方かどうか判断する材料もないことになるから。


「連れて行きなさい。後のことはラファエルとルイスに」

「はっ!」


騎士達がくせ者を連行して行った。


「………ソフィア様」

「後は任せます」


残っていた騎士達に願い、私はヒューバートと共にラファエルの元へ戻った。


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