第24話 お久しぶりです
恥ずかしい噂で、部屋から出られなくなった私。
そんな私に、先日の甘味の件の返事の手紙と、もう一通手紙をライトが持ってきてくれた。
まず最初は父の手紙から。
『この度の甘味の件は良いな。
従業員はこちらの国の方が
良いとは思うが、
商売に関して他者に知られたくない
心情は理解できる。
いいだろう。
此方に店を出すことは承認する。
王都と王宮の間に作れば、
貴族も利用しやすいだろう。
王妃も喜んでいたよ。
で、そろそろ帰ってくるのか?』
………うん、最後の一言、いらない……
毎回最後に付け足すのはやめて欲しいんだよね……
見られるとラファエルが怒るから。
一時帰国は良いけど……
それよりラファエルに言わなきゃね。
許可出たって。
………王宮と王都の間に店を出すって言うことは、思いっきり自分たちの都合だよね……
王妃のために買い付けるときに遠かったら行きにくいもの…
ラファエルにパティシエ選出してもらわなきゃ。
作ったことあるのラファエルだけだし、教育もしてもらって…
………そして忙しくなって、ベッドに潜り込んでくるのを阻止できれば一石二鳥。
別にラファエルが嫌いだからじゃなくて、恥ずかしいから止めて欲しいだけだからね!
………誰に言ってるんだろう……
なんだかむなしい……
っと、そうだ。
もう一通の手紙は……
………え……
『可愛いソフィアへ
元気にしている?
パーティの時はありがとう。
お礼を言うのが遅くなってごめんなさい。
ソフィアとの連絡の取り方が
分からなかったから。
最近になってから漸く
王家から発表されたの。
ソフィアが、ランドルフ国に
ラファエル王子の婚約者として、
花嫁修業も兼ねて
既にランドルフ国へ行ってると。
私、ソフィアから直接聞きたかったわ…
ラファエル王子との馴れ初め、
ソフィアから聞けることを
楽しみにしているわね。
そうそう。
レオナルド王子のことなのだけど、
王家から除名されることになったわ。
でね?
エイブラム男爵令嬢の所に婿養子で
入るのかと思えば、エイブラム男爵令嬢に
フラれたらしいわよ。
あの令嬢は、玉の輿狙いだったらしいわ。
天然を演出していたみたいで、
最近ちょっとやりたい放題していてね?
ちょっと懲らしめたいのだけれど…
ほら、私も王子の婚約者って立場が
なくなっちゃって、
すぐに社交界に出ることも出来ないし、
止める人間がいないらしいの……
もし、ソフィアが一時的にも
戻ってくる機会があれば、
その時、友人ということで、
私もパーティに一緒に出席できるから、
もし戻ってくるならその時に
私に顔を見せてね?
勿論、お手紙をくれたら嬉しいわ。
そしてソフィアの結婚式には、
お呼ばれしたいから、よろしくね?
ローズ・ギュンター』
ローズ!?
え、ホントに!?
署名は間違いなくローズの名前で…
うわぁ……
すっごく嬉しい!!
そして気づく。
………ローズも私の事を可愛いって言ってくれてる!? と。
ごめんなさいローズ。
ラファエルだけしか言ってくれないって思ってたし、言っちゃったよ……
よく学園で言ってくれてたのを思い出した。
二重にごめんなさい……
「ライト、ローズに会ったの?」
「いえ、姫様がランドルフ国にいると発表された後に、王に直に会いに来て手紙を送って欲しいと願ったらしいです。王家は公爵令嬢に頭が上がりませんからね。バカ王子のせいで」
………ライト、仮にも自国の王子をバカって……
「そっか。で、ライトに父から渡されたのね」
「はい」
「じゃあ、私も父経由で送った方が良いわね」
「はい」
私はご機嫌で便箋を取った。
その時に、音もなく背後に立っていたラファエルに気づいて、飛び上がったけれど。
「………ソフィア」
「は、はい…?」
「………なんでそんなにご機嫌なの」
「………へ?」
どうやらラファエルは今来たらしい。
ローズの手紙……つまり女性相手の手紙で嬉しくなったっていうことを知らない。
………ということで…
「………」
不機嫌です!!
「ろ、ローズから手紙が来て、嬉しかったから……」
「………ローズ……ああ、あのパーティの時の令嬢?」
「うん。私がここにいることを最近知ったから、王経由でライトが持ってきてくれたの」
「そう。それで返事を書くためにご機嫌で便箋持ってたんだ?」
「うん!」
満面の笑みで頷くと、更に不機嫌な顔に……
………なんで!?
「………ソフィアの一番は?」
「はい!?」
「………ソフィアの一番」
顔を近づけないで!!
顔が赤くなる!!
「そ、それは……ラファエル……だけど……?」
怖ず怖ずと言うと、ニッコリとラファエルが笑った。
え……
ローズにまでまさかの嫉妬!?
ど、どれだけ!?
「だよね。じゃあ、その俺以外の言葉に嬉しそうにするの、やめようか?」
「………す、すみません…」
思わず謝ってしまった。
そしてローズに書く手紙の内容までガン見されて……
どれだけラファエルを好きかも書かないのか、と言われ……
………あ、あの……惚気文を強要って、どうかと……
などとは言えずに、私は顔を真っ赤にしながらローズの手紙を書き上げた。
ライトに託した後に、私は重大なことに気づいた。
これって、これからの手紙にあれぐらい惚気文を書かないといけなくなったって事では!? と……
書かなければ、仲が悪くなったのかと思われ、心配される!
パッとラファエルを見ると、またニッコリと笑われた。
イタズラが成功したような……人の悪そうな笑顔だこと……
………ああ、確信犯ですね……
ガックリと私は項垂れた。
 




