第239話 試されるのは仕方がない
「首尾は?」
「難航してますね。侍女に接触した者達から調べておりますが…誰が侍女に渡したかまだ判明しておりません」
「………」
私は考え込む。
現在はラファエルがまた眠りについて、私は休憩がてら執務室に場所を移動し、お兄様とルイス、そしてライトとお兄様の影と話し合っていた。
ラファエルの傍にはヒューバートとソフィーについてもらっている。
アマリリスとナルサスは一旦返して、夕食の準備をしてもらうように伝えた。
食事にも毒を入れられたら堪ったものではない。
「まず毒の種類が判明しないとダメか…」
「分析に回していますが、特定するのに時間がかかります」
「どれぐらい?」
「………2・3日は頂きたく…」
「そう……毒の分析用の機械とかあったら良いんだけど…」
何気ない一言だった。
素早くルイスが手に紙とペンを持つまでは気がつかなかった。
自分が何を言ったかを。
………またやったらしい。
っていうか、分析機械なかったのか…
「毒の種類が分かればどうにかなるの?」
「何処で作られているかで経由先が分かるし、どんな形をしていて、侍女の手に渡ったのか分かれば、自ずと搾られると思うよ」
「成る程…」
「侍女は本気で知らないと訴えていますし、彼女自身は中立派です。ラファエル様を殺す動機も見当たらないですから、調査から外しても構わないかと」
「甘いな」
「甘いねルイス」
ルイスの言葉にお兄様と私の言葉が被ってしまった…
お兄様と顔を見合わせ、苦笑する。
「な、何故です…」
「犯人を見つけるまでは完全に疑いを晴らすな。彼女自身が毒を手に入れていないという証拠が何処にもないだろう」
「何かがきっかけでラファエルを恨むことになっていたら、彼女自身にも動機があることになるしね。ラファエルとルイスが知らないところで恨みを買っていたのなら、2人が知るはずもないし」
「………レオポルド様はともかく、ソフィア様も、ですか…」
「“も”って何!? お兄様ならともかくって何!?」
私だって考えるぐらいの頭はあるもん!!
「女関係なら私の方が詳しいわよ! たぶん…」
「最後のいらないよね。っていうか、俺はそっち系もソフィアにも負けないよ」
「それは、お義姉様と喧嘩しないようになってから言ってくれる?」
「俺とカサブランカは仲良しじゃないか」
「………お義姉様はいつもお兄様に怒ってると思うのですが?」
「可愛いだろう?」
………お兄様の目は曇っていると思う…
ちょっとは優しくしてあげないと、いつかお義姉様の血管が切れると思う…
無事に子供は生まれるのだろうか…
「とにかく侍女からは目を離さない方が良いよ。もしかしたら接触してくる人物がいるかもしれないし」
「………分かりました」
ルイスはやや納得しかねるような顔をしていたけれど、頷いた。
「ライトも引き続きお願い」
「畏まりました」
「お前もな」
「はい」
私がライトに願い、お兄様も自分の影に命じた。
「それとソフィア様」
「何」
「面会の希望が出ていますが」
「断るわ」
ルイスの言葉にキッパリ言った。
私に面会を申し出てくる人物は限られている。
「ラファエルが許可した人間だけに私は会う。今後もそれは変わらないわ」
「………畏まりました」
「それにこんな状況で外部の人間を受け入れるのはよっぽどな人物に限定なさい。それぐらいラファエルに聞かずルイスの判断で可能でしょう。何故一々許可するか否か聞く」
「………申し訳ございません」
「そんなのソフィアを試すために決まってるでしょ」
「………は!?」
頭を下げたルイスを見ていると、お兄様が割り込み驚く。
呆れたような顔をお兄様に向けられていた。
私を、試す?
「ラファエル殿に聞かずともソフィアが判断できるか見ているんでしょ」
「いえ、そんなわけでは……」
………言われてみればそうですよね!!
私の今までの行動が、こうして試される結果となったのだろう。
ラファエルが自由にさせてくれるからといっても、自分で王女らしくしろって事ですよね!
ルイスの信頼度が揺らいでいる証拠だ…
自業自得とはまさにこの事…
「………すいませんでした」
思わず私は謝ってしまった。
本当に、気をつけよう。




